[寸評]
当代の推理作家が執筆し、子供の心を持ち続ける大人と少年少女を対象にした「ミステリーランド」の1冊。
大きな活字で漢字にはふりがな、洒落た装丁にレトロな絵のページを挟む。
夢見がちな小学生コンビが別荘地で殺人事件に巻き込まれるなど、いかにもな設定だが、それなりに面白く読める。
ただし肝心の謎解きはもう少し派手にして欲しかった。
本全体の雰囲気はいいが、子供にも読んで欲しければこの値段はないでしょう。
[寸評]
弁護士としてのキャリアを活かしたリーガル・サスペンスで定評のある作者が、少年の目を通して郷愁を込めて描いた50年前のアメリカ南部農業地帯の人々とその生活。
途中、怖ろしい事件も出てくるものの、2か月間の出来事が淡々と綴られていく。
それでも時に明るく時に悲惨にという絶妙な展開で、退屈さを感じるようなことはない。
素直で好奇心に満ちた少年の成長を通して、作者の人間を視る目の偏りのない鋭さが感じられる。
[寸評]
家人の寝ている家に侵入するのが専門という特殊な窃盗犯を主人公にした短編7編。
真壁が頭切れ過ぎ、度胸あり過ぎ、なのにケチなこそ泥というのは気になるが、泥棒業界が興味深く描かれ、どれも面白くサスペンス十分。
しかし、とてもリアルな物語の中にあって、15年前に死んだ弟が真壁の頭の中に棲み付いて日常的に真壁と会話し、しかも物語の進行に一定の役割を演じているのがどうにもルール違反と感じて、この採点。
[寸評]
傑作「死の泉」に続く作者の第2次大戦期ドイツもの。
ヒトラーに心酔し祖国のためエリート軍人養成校に入校した少年の敗戦後までを描く人間ドラマ。
歴史において常に貶められてきたドイツ軍人の誇りが語られる珍しい作品だが、他とは正反対に連合国側の残虐性などが特に物語の後半、延々と綴られる。
壮大な物語だが、カールの心情などが状況に頼って語られるは少々不満だし、戦争への視点が一方からのみなのも疑問。
[寸評]
地方検事補だったという作者のデビュー作。
意外と法廷場面は少なく、犯罪捜査にはほとんど素人の田舎警官の都会での懸命な捜査を主に、退職警官による手ほどきや女性検事とのロマンス、父子の交流等内容は豊富。
しかし登場人物は誰もがいまいち魅力に欠け作中に浸るところまでいかない。
物語は途中で大きく方向転換し、終盤にも大きな仕掛けがある。
これらは確かに驚きではあるが、驚いた後に首を傾げてしまいました。
[あらすじ]
小6の上月秀介は推理作家志望。
同級生の少女、二宮優希は母親が推理作家だが刑事志望だ。
秀介は、夏休みに、通称虹果て村と呼ばれる地区にある二宮家の別荘に招待される。
村には今、高速道路建設計画があり、賛成派と反対派が対立している。
雨上がりの夜、反対派の男が自宅で殺されているのが発見される。
しかも密室状態の中で。
[採点] ☆☆☆
[あらすじ]
1952年9月。
7才のルークはアメリカ南部の綿農家の長男。
学校が休みの2か月間、ルークは大人に交じって、見渡す限りの綿花畑で夜明け前から日暮れ時まで綿摘み作業をしなければならない。
今年は山地から出稼ぎに来たスプリュールさん一家7人とメキシコ人も10人雇った。
やがてスプリュール家の乱暴者の息子ハンクが町で喧嘩騒ぎを起こす。
[採点] ☆☆☆☆
[あらすじ]
真壁修一は2年の刑期を終えた。
彼は深夜に家人が寝静まったところを侵入して盗みを働く「ノビ」と呼ばれる忍び込み窃盗のプロ。
出所してすぐ図書館でここ2年の記事を調べ、警察署へ。
2年目、捕まったときに侵入した家の女は夫を殺そうとしていたのではないか。
真壁はそれを確信していた。
しかし夫はその後も殺されることなく、結局離婚していた。
[採点] ☆☆☆★
[あらすじ]
1934年、第一次大戦の敗戦国ドイツ共和国は、ヒトラー総統の下、再び国威発揚、軍事力増強の道を進んでいた。
13才のカールはナポラ(国家の最高エリートを養成する学校)への受験に挑み、友人のエルヴィンらと共に合格。
SS(親衛隊)幹部となるべく厳しい訓練に耐えていく。
やがてドイツはヴェルサイユ条約を破棄、義務兵役制を復活させる。
[採点] ☆☆☆★
[あらすじ]
ベン・トルーマンは田舎町の若き警察署長。
事件などろくにない町だったが、湖畔の釣り用ロッジを巡回していて郡地方検事補の右目を撃ち抜かれた死体を発見する。
駆けつけたボストン市警の刑事はブラクストンというコカイン売買のボスの仕業と断定する。
ベンは湖に沈められた検事補の車を発見し、車内から事件のヒントを得てボストンへ乗り込む。
[採点] ☆☆☆★
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