[寸評]
どの短編も時代小説やミステリーの傑作をもじった題名にしてあるが、中身は特にそれぞれのパロディというわけではない。
7作は連作となっており、デブというか相撲取り、力士を主題にミステリー仕立て(?)で関連付けられている。
最初の「四十七人の力士」は傑作というかあまりのナンセンスぶりに衝撃を受けてしまったが、あとはまぁさほどでもない。
中身は登場人物達の掛け合い漫才がほとんどみたいな印象で、難しいことは言わずに気楽に楽しみましょう。
[寸評]
警察による捜索の外の場面と、ある場所に監禁された2人の少女が懸命に脱出のチャンスをうかがう内の場面が交互に描かれ、緊迫感を盛り上げる。
ただ少し長すぎる印象で、登場人物が多くて読み手の頭が混乱する感じ。
捜査過程、解決に至る過程ももうひとつすっきりしない。
しかしラストが素晴らしい。
そこまでも上々のサスペンスではあったが、作品の印象を一変させ、それまでの多少のあらも吹き飛ばす、まさに感動の結末でした。
[寸評]
登場人物はこの館に集った5人のみ。
場面は館の中がほとんど。
時間は皆が集まりだした水曜日の昼前から、皆が館をあとにした金曜日の午後まで。
限られた設定の中で、舞台劇のように5人のやりとりが緊張感を持って描かれていく。
短い物語だが、その中で何度も話が転回し飽きさせない。
そしてたどりつく真相は「驚愕の」とはいかないが、それなりにひねられ、それなりに楽しめました。
[寸評]
冷戦下のスパイ戦をリアルに描いてきた作者も、冷戦終結後の前作「われらのゲーム」にはあまり感心しなかったが、今回は設定が良い。
単なる洋服の仕立屋が世界の要衝たるパナマ運河の運命を左右するような立場に立ってしまうというのも面白く、彼の脚色が加わったようなある種不正確な情報に踊らされる情報戦そのものへの皮肉・風刺もきつい。
ただ通好みの文章はやや難解で、一筋縄ではいかない表現手法が私にはきつかった。
《未読だった過去の傑作》
[寸評]
作者の古き良きアメリカへの郷愁を強く感じさせる作品。
タイムトラベルといってもSFではなくファンタジーの性格が強い。
時間旅行のやり方もあまりにも非科学的だが、作品全体を覆っているムードにより違和感無く受け入れられる。
惜しいというか読んでいて残念なのは、克明に描写されるニューヨークの情景が当然ながら私にはぴんとこないこと。
地元の人が読めば興趣は何倍にもなるだろう。
すべての難問をクリアするラストも実に見事。
[あらすじ]
しんしんと雪が降る深夜の江戸の町に地響きが。
雨戸の隙間から覗くとなんと47人の力士と1人の行司が整然と行進している。
彼らは一路本所松坂町の吉良邸へと向かっていた。
新京極夏彦作の「四十七人の力士」のほか南極夏彦作の「パラサイト・デブ」、京塚昌彦作の「土俵(リング)・でぶせん」、両国踏四股作の「ウロボロスの基礎代謝」など全7作。
[採点] ☆☆☆★
[作品紹介]
クリスマスも近いある日、ニューヨーク州の田舎町で10才の少女2人が消える。
州副知事の娘グウェンとホラー映画好きの問題児サディーの親友同士。
捜査に加わった警官ルージュには一卵性双生児の妹がいたが、15年前のやはり10才の時に誘拐され、クリスマスの朝死体で発見された。
当時犯人として神父が逮捕され事件は終わったはずだった。
[採点] ☆☆☆☆
[あらすじ]
今年も5人の女性が「うぐいす館」と呼ばれる洋館に集った。
ここは人気作家重松時子の家で、彼女は4年前毒を飲んで自殺した。
集った5人は時子の担当編集者だったえい子、時子の異母姉妹の静子や姪の尚美など血縁関係にある女たち。
毎年この時期に集まり2晩を過ごす。
そこに見知らぬ者から「皆様の罪を忘れないように」と記したカードを添えた花が送られてくる。
時子は本当に自殺だったのか。
[採点] ☆☆☆
[作品紹介]
ハリー・ペンデルはパナマにある仕立屋の主人。
仕事がら大統領からアメリカ駐留軍の司令官まで、政治・経済界や軍部のお偉方の顧客も多い。
実は彼は少年院あがりで、イギリスで放火犯として服役中に仕立屋の仕事を学んだが、妻にも経歴を偽り続けてきた。
その真実を知る男がある日突然接触してくる。
その男は情報部から派遣されたイギリス大使館員だった。
[採点] ☆☆☆★
[作品紹介]
サイミン・モーリーはニューヨークにある広告会社のイラストレイター。
ある日男が訪ねてきて、国家的プロジェクトの候補者に選ばれたと告げる。
そしてタイムトラベラーとしてテストを受けながら1882年を目指す。
時間旅行ものの傑作と評される1970年作品。
作者は犯罪小説やSFも書いているがもっとも成功したのがこの作品。
95年「時の旅人」完成後に亡くなった。
[採点] ☆☆☆☆
ホームページへ 私の本棚(書名索引)へ 私の本棚(作者名索引)へ