作家の周旋は新しい小説のインスピレーションを得るため上海の街を歩き回り、一台のバスに乗った。
空席の隣に座っていた女は、白い衣服のあちこちが暗い血の色に染まっていた。
心配して彼女を家まで送り届けた三日後、ずっと落ち着かない気分でいた周旋はその女に会いに行くことにした。
女は田園という名で女優をしていると言う。
そして一見骨箱のように見える黒い木匣(きばこ)を持ってきて、一か月ほど預かってほしいと頼む。
[寸評]
現代中国を代表するサスペンス作家によるホラー小説。
浙江省の海岸端に建つ「幽霊客桟」という名のホテルを舞台に、限られた登場人物の中で謎は深まり、やがて狂気と惨劇に彩られていく。
不穏な雰囲気の中、読者を物語に没入させる力があると感じた。
物語中、森村誠一『野生の証明』やスティーヴン・キング『シャイニング』への言及もあり、面白い。
ホラーとしての怖さはもちろんだが、サスペンスミステリーとしても最後は上手い具合に着地させていて感心した。
[導入部]
[採点] ☆☆☆☆
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