東京の亀戸の路上で男が通行人を刃物で切りつけ、三名が死亡、四名が負傷した。
現行犯逮捕されたのは深瀬礼司容疑者、三十五歳。
警察によれば、動機は不明だが、容疑者は「死刑になりたい」などと供述しているという。
フリー事件記者の安田賢太郎は、四年前に離婚して、妻に引き取られた息子の海斗と久しぶりに会っていた。
食事中、安田のスマホに<週刊実相>のデスクから取材依頼メールが来た。
安田は海斗を車に乗せ亀戸の現場に急ぐ。
[寸評]
「死刑になりたい」という身勝手な願望から三人が殺害された事件を、フリーの記者が容疑者周辺から本人まで取材して回る様子を描く。
取材プロセスがたいへん丹念に綴られ、主人公の記者の家族の問題も語られて面白く読めるし、フリー記者の実態を通してのネット社会におけるジャーナリズムの世界が興味深い。
タイトルどおり、善と悪のあわいを描く物語は“正義”について考えさせられる。
全体としては重苦しい空気に覆われた印象の作品で、広がりもあまりないものではあった。
1944年2月。
ロンドンに空襲警報のサイレンが甲高く鳴り響いていた。
13歳のバーティは民間防衛隊の伝令係として任務のため街へ飛び出した。
自転車のかごには救助犬のリトル・ルー。
道を曲がるとその先の通りの真ん中に女の子が立っていた。
ぶつかってしまい、二人とも転んでしまう。
幸い怪我はなく、言い合いの末、女の子は立ち去っていった。
話し方のアクセントからアメリカ人だと分かった。
そのとき犬が赤いノートを口にくわえた。
[寸評]
私も楽しめた「ロンドン・アイの謎」の翻訳成功がきっかけで紹介されることになったというYAものミステリー。
戦時の重苦しい状況の中での少年少女の冒険が描かれる。
前半は少々スローモーだが、暗号解読が進むと一挙にサスペンス度が増す。
ところがいよいよこれからが見せ場だというところでそこは端折られて時間が進んでしまい、残念でした。
いくつか出てくる暗号解読のテクニックはYAものとしては面白い。
一方犬のリトル・ルーの可愛さがいまいち伝わらなかった。
かおりは夫と晴子伯母さんの葬儀の夜の精進落としの場にいた。
ふるまいの席は晴子伯母さんが長年暮らした広い庭の一軒家でもたれた。
参列者全員にわたしのおめでたが知れ渡り、夫もわたしも親戚からしきりに祝福の言葉を浴びせられた。
夫の歌を皮切りに無法地帯と化した酒盛りは続き、夫は泥酔状態。
かおりが車を運転して帰ることにする。
雨脚はいちだんと激しくなってきた。
速度計を確認し前を向くと道の前方に人影を見て悲鳴をあげた。
[寸評]
交通死亡事故を起こし服役中に息子を出産した女が、こどもに会うことも叶わずひとりで生きていく十七年の物語。
まるでロードノベルのように西へ西へと転々と職場を変えて流れていく、過去を背負った苦難の人生が描かれる。
淡々とした文章運びだが、物語の中身はたいへんにドラマチック。
彼女を見守る人、騙す人、いろいろな人が登場し、人間関係の描写が巧み。
次はどうなるのか、この物語はどう終わるのか、終盤の展開には感極まるという感じで、終始息を詰めて読んだ。
[導入部]
[採点] ☆☆☆★
[導入部]
[採点] ☆☆☆
[導入部]
[採点] ☆☆☆☆★
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