第8回駿河梅花文学賞
梅花文学大賞
齋藤恵美子『最後の椅子』(詩集) 思潮社
個室で 立たせて、オムツをはずしたとたん 待ちきれない重さが落ちて あ、てのひらで、受けてしまう 証拠のようなあたたかさだ こんなこと、あなたにさせて、すまない、ほんとうに情けない 親御さんに申しわけない なんども、詫びを言うひとがいる ありがとう、大変ねえ ねぎらいながら、両手を合わせ 仏さんを拝むみたいに、深いお辞儀を 繰り返すひともいる あんた、こんな仕事してて、いったい何が、面白いの? 哀れむような視線を向け あきれかえるひとも、いた 面白い朝、もあるし、そう思えない夜、もある 他人のお尻に、自分のお尻の、ゆくえを眺めた午後、もあった わたしはけれども、どんな思いも、ここでは 声には吐かせずに ささえたものを便器へ流し 静かに、うんちを、ふいてゆく |
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