第8回駿河梅花文学賞
◆ 授賞式
装画 畠中光享
2006年2月11日
◆ 応募総数
1,501通
◆ 選考委員
現代詩: 那珂 太郎
現代詩: 高橋 順子
短歌: 笠原  淳
短歌: 高野 公彦
俳句: 眞鍋 呉夫
俳句: 正木ゆう子
HAIKU: 加島 祥造
◆ 後援
沼津市教育員会、産經新聞社、静岡新聞社・静岡放送、(株)リコー
◆ 協賛
花のハナモリ、匠処藤、お茶の山二園、わさび漬の敷島食品、勝沼醸造、ギャラリータケイ、綾市商店、ホテルセタスロイヤル、井出摩訶園、(株)ウテナ
梅花文学大賞
 齋藤恵美子『最後の椅子』(詩集)  思潮社

個室で

立たせて、オムツをはずしたとたん
待ちきれない重さが落ちて
あ、てのひらで、受けてしまう
証拠のようなあたたかさだ

こんなこと、あなたにさせて、すまない、ほんとうに情けない
親御さんに申しわけない
なんども、詫びを言うひとがいる

ありがとう、大変ねえ
ねぎらいながら、両手を合わせ
仏さんを拝むみたいに、深いお辞儀を
繰り返すひともいる

あんた、こんな仕事してて、いったい何が、面白いの?
哀れむような視線を向け
あきれかえるひとも、いた

面白い朝、もあるし、そう思えない夜、もある
他人のお尻に、自分のお尻の、ゆくえを眺めた午後、もあった

わたしはけれども、どんな思いも、ここでは
声には吐かせずに
ささえたものを便器へ流し
静かに、うんちを、ふいてゆく
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