数年前からスローフードという言葉をよく耳にするようになりました。今全盛のファーストフードに対して、たまにはゆっくりと吟味した食材で料理を作り味わう。時間をかける事は悪いことではないという価値観の転換であり、現代人の求める癒しの手段の一つだったのではないでしょうか。
家具作りについても、私はかねてからこれと同じような考えを持って望んできました。使用材を厳選し、手間のかかる作業を忌避せず、一つ一つ積み重ねていく。ただやみくもに製作日数を増やすということではありません。むしろ作業時間は短くスピーディーに、工程から工程までの養生時間をたっぷり取りたいということなのです。
それでは私の考えるスロースタイルとはどういう事なのか、具体的に説明したいと思います。
ツヴァイの家具は北米や北海道の厳しい自然で育った落葉広葉樹から作られます。山桜、ウダイ樺、アサダ、春楡などの北海道材、ブラックウォールナット、ブラックチェリーなどの北米材を主に使っています。丸太を板挽きし、乾燥は基本的に1年半から2年かけて天乾(天日干し)しています。急を要する時以外、人乾(乾燥庫による強制乾燥)は極力避けています。材の目減りやねじれ、小口割れなどが増すからです。これは材料の無駄使いにつながります。
ツヴァイの家具は塗装をしません。仕上げは有機溶剤を含まず、体にもやさしく無公害な植物オイルを使います。粘土が低く乾くまでに半日以上かかるため、量産には不向きですが、材に深く浸透するため堅牢さが増します。
着色料を使わないクリアーオイルですから素材の良し悪しを直接引き出します。素材の持つ表情を何よりも大切にしたいと考えるからです。
使用材に合板は使いません。全て無垢材が使われています。限られた森林資源を有効利用したいと思うからです。一見合板は無垢材より材を有効利用しているように見えます。つき板(大根の桂剥きのように丸太を薄く剥き、合板の上に貼り付けるための表面材)にすれば大量生産でき、丸太を無駄なく使い切ることも出来ます。しかし心材となると話は別です。心材にはラワンなどの南洋材が使われます。1本の丸太から取れるつき板にはその数百倍もの南洋材が必要になります。