オーディオについて、日ごろ考えている雑多なことを、徒然なるままに 掲載してみました。 |
■驚きの新発見(笑) アナログが再生できる環境が整って約半年が経過しました。私の住む地域も梅雨に入 り、鬱陶しい雨の降る晩にレコードを聴いていて、ある発見をしました。 通常、アナログを再生するシステムの場合、レコードプレーヤー〜フォノEQアンプ 〜コントロールアンプ〜メインアンプ〜スピーカーと接続して、メインアンプの音量調 整用のVRは最大にして(或いはバイパスして)、コントロールアンプのVRで音量を 調節しますが、私のシステムの場合、コントロールアンプのVRを最大にして、メイン アンプのVRで音量を調整した方が、中低音域のエネルギー感が増すことを発見したの です。 私のコントロールアンプに使用している音量調整用のVRは、音質の劣化を最小限に 抑えるべく、VRではなくT型のアッテネータ(ロータリーSWと固定抵抗を組合わせ たもの)を使用しています。常に2本の固定抵抗の組合わせで信号を減衰させることが 出来るので、通常のVRに比べて音質への影響は小さくなっています。 一方、メインアンプに使用しているVRは、アルプス電気のデテントVRです。デテ ントVRも音質への影響の少ないVRとして有名ですが、T型アッテネータに比べたら その性能は劣ります。つまり、今回の発見で、私のアナログ・システムでは、レコード プレーヤーのMCカートリッジから出力された信号は、フォノEQアンプで増幅された 後、『T型アッテネータで減衰されることなく、』コントロールアンプで更に増幅され、 メインアンプの入力部で初めてVRにより減衰することになります。 ノイズレベルも、コントロールアンプのアッテネータを調節してメインアンプのVR を最大にした時よりも、コントロールアンプのアッテネータを最大にしてメインアンプ のVRを調節した時の方が少ないです。(メインアンプのノイズレベルの方が、コント ロールアンプのノイズレベルよりも高いということになります。) この状態でも、コントロールアンプの出力部で信号がサチることなく、メインアンプ のVRで必要な音量に調節された信号が正常に増幅されてスピーカーを駆動し、尚且つ 中低音域のエネルギー感が増したように感じられるのです。 とりあえず、4時間ほどこの状態で聴いてみましたが、コントロールアンプの発熱な ど、特に問題は無さそうでした。ということで、暫くはこのままで様子を見ようと思い ます^^v。 |
■次なるアンプ(その2) アナログプレーヤーの購入をきっかけに、フォノEQアンプを製作する事にしました。 自宅近くのリサイクルショップで、DENONのDP−37Fというプレーヤーを偶然 みつけて、中古品ゆえの値段の安さに釣られて(笑)購入しました。木製キャビネット にクォーツ制御のDDターンテーブル、電子サーボ制御のアームを搭載したフルオート のレコードプレーヤーです。つい最近生産中止となった機種で、まだメーカーにも在庫 があるのか、メーカーのHPにも載っていました。 さて、製作するフォノEQアンプですが、前回「次なるアンプ」(下段参照)に書い た通り、MJ無線と実験2000年3月号に掲載されていた安井章氏設計のフォノEQ アンプについて、今でもプリント基板の購入が可能か否か、安井氏にTELで確認して みたところ、「前回発表のものに改良を加えた基板を今でも配布しています。」という、 大変嬉しいご返事を頂き、早速、アンプ部と電源部、それにACラインフィルタの基板 を注文しました。 早速送られてきたプリント基板を見たら、電源基板がLC2段のフィルタ型電源では なく定電圧電源になっています。注文先に問い合わせたところ、LC2段のフィルタ型 電源基板はもうないとのこと(涙)。定電圧電源よりもLC2段フィルタの方が低イン ピーダンスで音質も良好と言う事だったので、この部分はユニバーサル基板で製作する 事にしました。 また、MJ無線と実験2000年3月号の製作記事では、完全無調整のアンプとなる ように、対称型アンプのバイアス部分は使用するFETのドレン電流を計測して、その FETに見合った固定抵抗を挿入するようになっているのですが、プリント基板のパタ ーンを良く見てみると、バイアス調整用に半固定VRが取り付けられることを発見しま した。NECのネオポットあたりが取り付けられそうな穴が、ちょうど3個所空いてい ます。ここを固定抵抗から半固定VRに換えれば、調整箇所は出来ますが、FETの選 別とバイアス抵抗の決定は不要になりそうです。 また、製作記事ではタカチのケースに収める際、アルミのサブフレームにスペーサー を取り付けてからプリント基板を乗せているのですが、これはノイズなど音質に対する 配慮からではなく、プリント基板裏面を見易くする、という製作上のメンテナンス性を 考慮したためだと思われます。私が製作するときにはどうするかは思案中です。 何はともあれ(?)、これで前回製作したコントロールアンプと対になるフォノEQ アンプを製作する事が出来そうです^^v。 |
■次なるアンプ 真空管アンプも作りたいんだけれど、球アンプの製作は1回お休み(笑)して、今度 はTr式のイコライザアンプを作りたいなぁ、などと考えています。 それというのも、2000年の暮れにTr式のコントロールアンプを製作したのです が、これに組み合わせるイコライザアンプを製作すれば、アナログプレーヤーが聴ける ようになるんですね。もちろんアナログプレーヤーを購入する必要はありますが^^; それで、せっかくだからMC/MM対応のイコライザアンプを作ろうかなと。前述の コントロールアンプは、安井章氏がMJ無線と実験‘99年12月号に発表されたもの のコピーなのですが、実はこのコントロールアンプにはペアとなるイコライザアンプも 発表されていて、それと組み合わせるのがベストなんですね。 ところが問題が二つあって、一つは、このイコライザアンプで使用している電源トラ ンスは、タンゴトランスのCW−252なんですが、このトランスはもう製造されてい ないんです。雑誌の売買欄やヤフーオークションとかで、ときどきチェックしているの ですが全然出てきません^^;みなさん大切に仕舞い込んであるのでしょうか^^;? 近い仕様のトランスでは、ノグチトランス販売さんのPMC−2404Wがあるので すが、このトランス、ケースに入っていなくてむき出しの状態(?)なので、イコライ ザアンプに使用するのにはちょっと、いや、かなり抵抗があります。それとも、ノグチ トランスさんのことだから、頼めばケースに入れてくれるのかな?。確認してみる価値 はありそうですね。これは^^v もう一つの問題というのは、安井章氏のイコライザアンプがMJ無線と実験に掲載さ れたのは‘00年03月号で、そのときにはプリント基板の有料配布があったのですが、 果たして今ごろになって問い合わせて、配布してもらえるのでしょうか?。というもの です。 まあ、これは問い合わせてみないことにはどうにもならないのですが^^;。この件 を問い合わせて今でもプリント基板が購入できるのであれば、ついでに(?)電源トラ ンスの代替え案についても相談してみようかな? 私の場合、基本的にアンプの製作は、冬の間のインドアな趣味として行うことが多い ので、これから少しずつ準備して、実際の製作開始は次の冬が来てから、ということに なりそうです。何にしても私の製作ペースというのは、一事が万事こんな調子です^^; |
■音キチのジレンマ ヘッドホンアンプを製作しました。ハムノイズの点でまだ納得の行く結果は出てい ませんが、とりあえず完成しました。流石はヘッドホンです。能率の高さと耳に密着 していることから、真空管式のヘッドホンアンプでハムノイズを「完全に」取るのは 至難の業です。先に製作した半導体式のコントロールアンプのヘッドホン出力などは、 ハムノイズどころか、ノイズ皆無なのですが・・・。 それで、ヘッドホンとそれに対応したヘッドホンアンプがあると、次はどうしても ヘッドホン専用のCDプレーヤーが欲しくなってしまいます。とは言え、あくまでヘ ッドホンで使用するCDプレーヤーですから、それほど高級なものである必要はなく、 また、製作したヘッドホンアンプとのデザイン上のバランスを考えると、ミニコンポ サイズのCDプレーヤーが良いなぁ、などと思っているのですが、いざ購入となると いろいろ考えてしまいます。 安価なCDプレーヤーで良いとは言え、ダイナミックレンジはそれなりに欲しいし、 S/Nもヘッドホンで使用するという性格上、良いに越したことはありません。出力 端子もせめて金メッキぐらいはしてあって欲しいし、オプティカル出力も欲しいとこ ろです。D/Aコンバータも左右独立が望ましいですが、これは無理と言うものなの で、ディファレンシャルタイプで良しとしましょう。電源のレギュレーションについ てもヘッドホンで使用するDCプレーヤーという性格上、良いに越したことはありま せんし、出来れば磁気シールド付きのしっかりしたものが良いです。あと、どうして も譲れないのがアナログ出力電圧の2Vrms。パイオニアやソニーなどの機種には 2V無いものもあったように記憶しているのですが、ミニコンポのCDプレーヤーの 場合、出力電圧がカタログに明記していないものもあり要注意です。クロックアップ などと大それたことは言いませんが、アナログ回路の電解コンデンサの変更による低 インピーダンス化や、電源の整流用Diをファーストリカバリタイプに変更するなど の改良も考慮して、内部に手が入れやすいことというのも条件のひとつになります。 自宅近くの家電量販店に行き、ミニコンポ売り場の前でそんなことをぼんやり考え ていると、店員さんがやってきて「何かお探しでしょうか?」なんて聞いてきました。 ミニコンポの前をうろうろしながら、時おり腕を組んで何か思案しているオジサンの 姿は、お店の人にも奇妙に映ったことでしょう(笑) とりあえず、「いえ、見ていただけです・・・」と、頭を下げてその場を立ち去り ながら、それでも、まあいいや、ヘッドホン専用CDプレーヤーなんてことを考える 前にヘッドホンアンプのハムノイズ対策を完璧にしなきゃな。とりあえずは、初段の デカップリングCの手前に挿入した1kオームの抵抗を39kオームぐらいの大き目 のものに換えて、それに伴って初段プレートの負荷抵抗を240kオームから200 オームに変更してみようか・・・などと考えている今日このごろです。^^; |
■あるメーカーと販売店の廃業について 「タンゴトランス」の愛称で親しまれ、オーディオ用の各種トランスを製造・販売 していた平田電機製作所が、2000年10月21日をもって営業を打ち切り、事実 上廃業しました。従業員の高齢化と需要の伸び悩みが廃業の原因だそうです。良心的 なメーカーであっただけにとても残念です。トランスはOTLやOPLといった特殊 な回路構成のアンプを別にすれば、真空管アンプの製作にとって必要不可欠なパーツ の一つです。また、オーディオの「音」を決める重要なパーツであり、良質な製品を 作ることの難しいパーツでもあります。 タンゴトランスがオーディオの世界に齎した功績は多大です。送信管のVT62や UV211、ロシア製の6C33といった球がオーディオの世界で認められ、それら の球から出てくる音楽を楽しめるようになったのは、全面的にタンゴトランスの功績 によるところですし、デバイス固有の特性を考慮した特注品の分野でも、タンゴトラ ンスの功績は計り知れません。事実、私はつい先日、今後製作予定のコントロールア ンプのために、No11839という特注トランス(CW−252改 18V-0-18V)を 購入したばかりです。 各種アンプキット販売のパイオニア的存在だった三栄無線も2000年8月28日 をもってオーディオ関連の営業を終了し、オーディオ愛好家にはお馴染みのラジオ会 館4階のあの店舗も無くなってしまいました。こちらも需要の伸び悩みが廃業の原因 だということです。 私の初めての電子工作は今から25年近く前のことで、カーボンマイクとトランジ スタ(2SC372)を使ったワイヤレスマイクを作ったのが始まりです。当時、中 学生だった私は、山梨の田舎から東京の秋葉原へと少ない小遣いを貯めては、パーツ や工具を買いに行っていたのですが、三栄無線さんは、その頃からラジオ会館の4階 で営業していたと記憶しています。私がオーディオを始めた当初から、パーツの購入 では、大変お世話になったお店です。 時代の趨勢とは言え、少年時代から親しんできた良心的なメーカーや販売店が廃業 するというのは、とても寂しいことです。長い間、ほんとうに有り難うございました。 いつかまた、営業を再開出来る日が来ることを、心より願って止みません。 |
■真空管のインピーダンスと音色について 真空管の出力インピーダンスは、トランジスタやFETのそれと比較して、かなり 高いわけですが、真空管によってもその値は様々です。例えば、2A3や6CA7の 最適負荷抵抗は2.5kΩ前後ですが、6V6の最適負荷抵抗は8kΩですし、送信 管の801Aなどは14kΩ近い負荷抵抗を必要とします。 再生される音質の面から同じ多極管である6CA7と6V6を比較した場合、6C A7の音は6V6の音に比べて、シャープな印象を受けます。乾いた音、または張り のある音と表現しても良いでしょう。それと比較して6V6の音は、厚みのある音と いった感じです。温もりのある音、潤いのある音と表現しても良いと思います。 このような音色の違いは、一般的には出力トランスの過渡特性の違いによって説明 されます。出力インピーダンスの高い出力管に使用する出力トランスは、高域特性の 保証が難しく、十分な過渡特性が得られないため、出力の立ち上がりが鈍くなり急峻 な入力側の信号変化に出力側の信号変化が追いつかず、結果的にダルな音色になると いうものです。 6V6のアンプで、ハードロックなどの8ビートや16ビートといったハイテンポ な曲を聴くと、6CA7のアンプの時と比べて、曲全体のテンポが遅くなったような、 そんな印象を受けることが時々あります。出てくる音まで大人しく聴こえるのですが、 どちらもそれぞれに、音楽の核心を成す部分は、十分に伝わってきます。これもまた オーディオの楽しみの一つです。 枯れた音色を楽しむのなら6CA7、温もりのある音色を楽しむのなら6V6、と いった具合に使い分けるのが良さそうです。 |
■RCAの赤ベース 私の6V6Gプッシュプル・アンプは、初段をSRPPとしドライバー段をムラード タイプとして6V6Gをスイングしています。製作当初、初段とドライバー段には6S N7を使用していましたが、韓国に約3ヶ月の長期出張に出かけたとき、仕事が休みの 日に出かけたソウルのヨンサン電気商街(日本の秋葉原のようなところ)で偶然見つけ たオーディオ・ショップに、RCAの5692が有り、1本約3000円!という破格 の値段で買って来て以来、6V6Gの初段には、この5692を使用しています。 5692は米国RCAが出した6SN7の高信頼管であり、ベースの部分が赤いこと から「RCAの赤ベース」と呼ばれています。本来の目的は通信用海底ケーブルの中継 アンプに使用するために作られた真空管です。海底ケーブルは、一度敷設してしまうと、 引き上げるのがとても困難であり、更に雑音のない正確な通信を実現するため、中継ア ンプ(及びそこで使用される真空管)に求められる性能は、必然的に高寿命、低雑音と いうことになります。 この要求を満足するため、5692は、通常の6SN7に比べ、高い真空度と、機械 的強度の強化、徹底したS/Nの向上が図られています。それまで使用していたSYL VANIAの6SN7W(これもメタルベースでJAN規格品の立派なものでした)を 5692に替えてみて驚いたのは雑音の少なさです。入力をオープンにしてVRを最大 にし、能率96dB/wmのスピーカーに耳をつけても、ほとんど雑音が聞えません。 5692は日本で買えば1本1万円ぐらいはします。韓国のオーディオ・ショップの 主人が言っていましたが、真空管の最大のマーケットは日本であり、その日本の価格が 市場全体の価格を決定付けているそうです。韓国では1本3千円程度で売れる真空管で あっても「市場の原理」によって、より高く売れる日本へと流れて行ってしまい、結果 的に1万円といった法外(!?)な価格が付いてしまっているようです。 |
RCA 5692 | SYLVANIA 6SN7W |
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■スピーカー・システムの難しさ あらゆるオーディオ機器の中で、最も難しく、最も重要であり、最もシステム全体に 与える影響の大きな装置は、「スピーカー・システム」だと思います。電気信号を機械 的な振動に換え空気を振るわせて音を出すこの装置は、あらゆるオーディオ・システム の中で最も古典的な装置です。 私が最初に製作した本格的なスピーカー・システムは、フォステクスのFE203Σ を使用したバックロード・ホーン・システムでした。ホーン特有のダイナミックな音は、 バスレフや密閉箱では決して得ることのできないものでしたが、同時に、バッフル面と ホーン開口部から放出される音の位相差や、中低域付近に発生する大きなディップなど、 難しい問題も多く含んだシステムでした。 こういった問題を解決するには、マルチウェイ方式のスピーカーシステムとするのが 一般的な方法ですが、この場合、クロスオーバー周波数付近の音の繋がりや音場の定位 といった新たな問題が発生します。また、ネットワークなどによる時定数の増加も考慮 する必要があります。 さて、真空管アンプを使用したオーディオシステムに使用するスピーカーには、半導 体アンプを使用したシステムの場合とは、明らかに異なる特性が必要となります。その 特性とは、スピーカー自体の持つ「能率」です。真空管アンプの出力は3極管シングル アンプで数W程度、5極ビーム管を使用したプッシュプルアンプでも、音質を考慮して NFBを掛けた場合には十数W〜数十W程度ということになります。また、半導体アン プのような高いダンピング・ファクタも期待できません。このため真空管アンプと組み 合わせて使用するスピーカーには高い能率が必要となります。経験的に言うと95dB /Wm以上のスピーカーでないと、まともに鳴ってくれないようです。 現在、私が使用しているスピーカー・システムは20cmフルレンジユニット+バス レフ箱といったものです。いろいろ試した結果、結局このシステムに落ち着きました。 とは言っても問題が全くないわけではありません。真空管アンプのような出力の小さい アンプを十分に鳴らすためには、前出のように、出来得る限り能率の高いスピーカーを 使用することが必要であり、更にバスレフの効果を十分に発揮するためには軽いコーン と強力なエッジが必要となります。 現在使用しているユニットも、もうだいぶ傷んで来ており新しいスピーカーユニット を捜しているのですが、なかなか思うようなユニットが見つかりません。 |
■300B ウェスタン・エレクトリック(WE)というアメリカのメーカーが開発した真空管に 300Bという真空管があります。元々は、WEが製造するトーキー・アンプ(映画館 で使用するアンプ)用に開発された球であり、業務用のごく限られたアンプに使用され る球であったため、一般の市場には出回ることのほとんどない球でした。この300B という真空管は、3極管でありながら当時としては破格の性能を持った球であり、シン グルで10W以上の出力を取出すことができ、直線性にも優れ、出力インピーダンスも 比較的低く音も良いといった、まさにオーディオ用真空管としては、当時、最高の性能 を持った真空管でした。 300Bは、他の多くの真空管と同様、半導体アンプの出現と共に生産を終了したの ですが、最近ではWEがその生産を再開したり(但しペアで10万円以上!!)ライセ ンスを受けた中国などのメーカーが生産を開始したため、再び脚光を浴び始め、今では 300Bを使ったアンプの製作記事やマニア向けの高級機の広告などがオーディオ雑誌 を賑わしています。大型のST管で見た目も美しく、オリジナルの300Bは、業務用 ということで生産された量も少なかったことがプレミアムとなり、今では世界中のオー ディオ・ファンを魅了しています。 さて、この300Bですが、いくら優秀な真空管であるとは言え、この真空管でアン プを製作する場合、注意することが全くないわけではありません。というより、この真 空管の性能を十分に発揮するアンプを作ることは、そう簡単なことではないような気が、 私はします。 300Bのアンプを設計する場合の最大の問題点は−70V前後の電圧を必要とする 深いグリッドバイアスでしょう。300Bのグリッドを十分にスイングするドライバ段 を設計することは、そう簡単なことではありません。コンデンサ結合で十分なドライブ 電圧を得るためには、前段はパワードライブとしたほうが良いと思います。6CA7や 6F6などの比較的出力インピーダンスの低い5極出力管を使用するか、6BM8など を使用するのがよさそうです。また、300Bシングルアンプを製作する際に「お手本」 とするアンプにWE91Aがありますが、このアンプもWE310Aという優秀な5極 管があればこそのアンプだと思います。また、WE91Aの初段部分は更に310Aを 用いてフォト・セルの入力対応となっていることなどから、ドライバの310A自体に 十分な入力があり、このことが300Bを310A一本でドライブすることを可能にし ているようです。 最近、よく見掛けるオーディオ雑誌の記事の中には、300Bを6SL7のSRPP や6SL7+6SN7パラ接続などの回路構成によるコンデンサ結合でドライブしてい るものが数多くありますが、この構成で果たして300Bの性能を十分に発揮させるこ とができるのかどうか、私には甚だ疑問です。 私は3極管のシングルアンプは、あまり好きではないので、入力感度の高い5極管を 3極管接続したシングルアンプか、3極管でやるのならプッシュプルアンプということ になるのですが、300Bのプッシュプルアンプとなると、何よりお金の面で、とって も勇気が要ります(笑) |