TITLE

 オーディオについて、日ごろ考えている雑多なことを、徒然なるままに
掲載してみました。



驚きの新発見(笑)

 アナログが再生できる環境が整って約半年が経過しました。私の住む地域も梅雨に入
り、鬱陶しい雨の降る晩にレコードを聴いていて、ある発見をしました。

 通常、アナログを再生するシステムの場合、レコードプレーヤー〜フォノEQアンプ
〜コントロールアンプ〜メインアンプ〜スピーカーと接続して、メインアンプの音量調
整用のVRは最大にして(或いはバイパスして)、コントロールアンプのVRで音量を
調節しますが、私のシステムの場合、コントロールアンプのVRを最大にして、メイン
アンプのVRで音量を調整した方が、中低音域のエネルギー感が増すことを発見したの
です。

 私のコントロールアンプに使用している音量調整用のVRは、音質の劣化を最小限に
抑えるべく、VRではなくT型のアッテネータ(ロータリーSWと固定抵抗を組合わせ
たもの)を使用しています。常に2本の固定抵抗の組合わせで信号を減衰させることが
出来るので、通常のVRに比べて音質への影響は小さくなっています。

 一方、メインアンプに使用しているVRは、アルプス電気のデテントVRです。デテ
ントVRも音質への影響の少ないVRとして有名ですが、T型アッテネータに比べたら
その性能は劣ります。つまり、今回の発見で、私のアナログ・システムでは、レコード
プレーヤーのMCカートリッジから出力された信号は、フォノEQアンプで増幅された
後、『T型アッテネータで減衰されることなく、』コントロールアンプで更に増幅され、
メインアンプの入力部で初めてVRにより減衰することになります。

 ノイズレベルも、コントロールアンプのアッテネータを調節してメインアンプのVR
を最大にした時よりも、コントロールアンプのアッテネータを最大にしてメインアンプ
のVRを調節した時の方が少ないです。(メインアンプのノイズレベルの方が、コント
ロールアンプのノイズレベルよりも高いということになります。)

 この状態でも、コントロールアンプの出力部で信号がサチることなく、メインアンプ
のVRで必要な音量に調節された信号が正常に増幅されてスピーカーを駆動し、尚且つ
中低音域のエネルギー感が増したように感じられるのです。

 とりあえず、4時間ほどこの状態で聴いてみましたが、コントロールアンプの発熱な
ど、特に問題は無さそうでした。ということで、暫くはこのままで様子を見ようと思い
ます^^v。




次なるアンプ(その2)

 アナログプレーヤーの購入をきっかけに、フォノEQアンプを製作する事にしました。
自宅近くのリサイクルショップで、DENONのDP−37Fというプレーヤーを偶然
みつけて、中古品ゆえの値段の安さに釣られて(笑)購入しました。木製キャビネット
にクォーツ制御のDDターンテーブル、電子サーボ制御のアームを搭載したフルオート
のレコードプレーヤーです。つい最近生産中止となった機種で、まだメーカーにも在庫
があるのか、メーカーのHPにも載っていました。

 さて、製作するフォノEQアンプですが、前回「次なるアンプ」(下段参照)に書い
た通り、MJ無線と実験2000年3月号に掲載されていた安井章氏設計のフォノEQ
アンプについて、今でもプリント基板の購入が可能か否か、安井氏にTELで確認して
みたところ、「前回発表のものに改良を加えた基板を今でも配布しています。」という、
大変嬉しいご返事を頂き、早速、アンプ部と電源部、それにACラインフィルタの基板
を注文しました。

 早速送られてきたプリント基板を見たら、電源基板がLC2段のフィルタ型電源では
なく定電圧電源になっています。注文先に問い合わせたところ、LC2段のフィルタ型
電源基板はもうないとのこと(涙)。定電圧電源よりもLC2段フィルタの方が低イン
ピーダンスで音質も良好と言う事だったので、この部分はユニバーサル基板で製作する
事にしました。

 また、MJ無線と実験2000年3月号の製作記事では、完全無調整のアンプとなる
ように、対称型アンプのバイアス部分は使用するFETのドレン電流を計測して、その
FETに見合った固定抵抗を挿入するようになっているのですが、プリント基板のパタ
ーンを良く見てみると、バイアス調整用に半固定VRが取り付けられることを発見しま
した。NECのネオポットあたりが取り付けられそうな穴が、ちょうど3個所空いてい
ます。ここを固定抵抗から半固定VRに換えれば、調整箇所は出来ますが、FETの選
別とバイアス抵抗の決定は不要になりそうです。

 また、製作記事ではタカチのケースに収める際、アルミのサブフレームにスペーサー
を取り付けてからプリント基板を乗せているのですが、これはノイズなど音質に対する
配慮からではなく、プリント基板裏面を見易くする、という製作上のメンテナンス性を
考慮したためだと思われます。私が製作するときにはどうするかは思案中です。

 何はともあれ(?)、これで前回製作したコントロールアンプと対になるフォノEQ
アンプを製作する事が出来そうです^^v。




次なるアンプ

 真空管アンプも作りたいんだけれど、球アンプの製作は1回お休み(笑)して、今度
はTr式のイコライザアンプを作りたいなぁ、などと考えています。

 それというのも、2000年の暮れにTr式のコントロールアンプを製作したのです
が、これに組み合わせるイコライザアンプを製作すれば、アナログプレーヤーが聴ける
ようになるんですね。もちろんアナログプレーヤーを購入する必要はありますが^^;

 それで、せっかくだからMC/MM対応のイコライザアンプを作ろうかなと。前述の
コントロールアンプは、安井章氏がMJ無線と実験‘99年12月号に発表されたもの
のコピーなのですが、実はこのコントロールアンプにはペアとなるイコライザアンプも
発表されていて、それと組み合わせるのがベストなんですね。

 ところが問題が二つあって、一つは、このイコライザアンプで使用している電源トラ
ンスは、タンゴトランスのCW−252なんですが、このトランスはもう製造されてい
ないんです。雑誌の売買欄やヤフーオークションとかで、ときどきチェックしているの
ですが全然出てきません^^;みなさん大切に仕舞い込んであるのでしょうか^^;?

 近い仕様のトランスでは、ノグチトランス販売さんのPMC−2404Wがあるので
すが、このトランス、ケースに入っていなくてむき出しの状態(?)なので、イコライ
ザアンプに使用するのにはちょっと、いや、かなり抵抗があります。それとも、ノグチ
トランスさんのことだから、頼めばケースに入れてくれるのかな?。確認してみる価値
はありそうですね。これは^^v

 もう一つの問題というのは、安井章氏のイコライザアンプがMJ無線と実験に掲載さ
れたのは‘00年03月号で、そのときにはプリント基板の有料配布があったのですが、
果たして今ごろになって問い合わせて、配布してもらえるのでしょうか?。というもの
です。

 まあ、これは問い合わせてみないことにはどうにもならないのですが^^;。この件
を問い合わせて今でもプリント基板が購入できるのであれば、ついでに(?)電源トラ
ンスの代替え案についても相談してみようかな?

 私の場合、基本的にアンプの製作は、冬の間のインドアな趣味として行うことが多い
ので、これから少しずつ準備して、実際の製作開始は次の冬が来てから、ということに
なりそうです。何にしても私の製作ペースというのは、一事が万事こんな調子です^^;




音キチのジレンマ

 ヘッドホンアンプを製作しました。ハムノイズの点でまだ納得の行く結果は出てい
ませんが、とりあえず完成しました。流石はヘッドホンです。能率の高さと耳に密着
していることから、真空管式のヘッドホンアンプでハムノイズを「完全に」取るのは
至難の業です。先に製作した半導体式のコントロールアンプのヘッドホン出力などは、
ハムノイズどころか、ノイズ皆無なのですが・・・。

 それで、ヘッドホンとそれに対応したヘッドホンアンプがあると、次はどうしても
ヘッドホン専用のCDプレーヤーが欲しくなってしまいます。とは言え、あくまでヘ
ッドホンで使用するCDプレーヤーですから、それほど高級なものである必要はなく、
また、製作したヘッドホンアンプとのデザイン上のバランスを考えると、ミニコンポ
サイズのCDプレーヤーが良いなぁ、などと思っているのですが、いざ購入となると
いろいろ考えてしまいます。

 安価なCDプレーヤーで良いとは言え、ダイナミックレンジはそれなりに欲しいし、
S/Nもヘッドホンで使用するという性格上、良いに越したことはありません。出力
端子もせめて金メッキぐらいはしてあって欲しいし、オプティカル出力も欲しいとこ
ろです。D/Aコンバータも左右独立が望ましいですが、これは無理と言うものなの
で、ディファレンシャルタイプで良しとしましょう。電源のレギュレーションについ
てもヘッドホンで使用するDCプレーヤーという性格上、良いに越したことはありま
せんし、出来れば磁気シールド付きのしっかりしたものが良いです。あと、どうして
も譲れないのがアナログ出力電圧の2Vrms。パイオニアやソニーなどの機種には
2V無いものもあったように記憶しているのですが、ミニコンポのCDプレーヤーの
場合、出力電圧がカタログに明記していないものもあり要注意です。クロックアップ
などと大それたことは言いませんが、アナログ回路の電解コンデンサの変更による低
インピーダンス化や、電源の整流用Diをファーストリカバリタイプに変更するなど
の改良も考慮して、内部に手が入れやすいことというのも条件のひとつになります。

 自宅近くの家電量販店に行き、ミニコンポ売り場の前でそんなことをぼんやり考え
ていると、店員さんがやってきて「何かお探しでしょうか?」なんて聞いてきました。
ミニコンポの前をうろうろしながら、時おり腕を組んで何か思案しているオジサンの
姿は、お店の人にも奇妙に映ったことでしょう(笑)

 とりあえず、「いえ、見ていただけです・・・」と、頭を下げてその場を立ち去り
ながら、それでも、まあいいや、ヘッドホン専用CDプレーヤーなんてことを考える
前にヘッドホンアンプのハムノイズ対策を完璧にしなきゃな。とりあえずは、初段の
デカップリングCの手前に挿入した1kオームの抵抗を39kオームぐらいの大き目
のものに換えて、それに伴って初段プレートの負荷抵抗を240kオームから200
オームに変更してみようか・・・などと考えている今日このごろです。^^;




あるメーカーと販売店の廃業について

 「タンゴトランス」の愛称で親しまれ、オーディオ用の各種トランスを製造・販売
していた平田電機製作所が、2000年10月21日をもって営業を打ち切り、事実
上廃業しました。従業員の高齢化と需要の伸び悩みが廃業の原因だそうです。良心的
なメーカーであっただけにとても残念です。トランスはOTLやOPLといった特殊
な回路構成のアンプを別にすれば、真空管アンプの製作にとって必要不可欠なパーツ
の一つです。また、オーディオの「音」を決める重要なパーツであり、良質な製品を
作ることの難しいパーツでもあります。

 タンゴトランスがオーディオの世界に齎した功績は多大です。送信管のVT62や
UV211、ロシア製の6C33といった球がオーディオの世界で認められ、それら
の球から出てくる音楽を楽しめるようになったのは、全面的にタンゴトランスの功績
によるところですし、デバイス固有の特性を考慮した特注品の分野でも、タンゴトラ
ンスの功績は計り知れません。事実、私はつい先日、今後製作予定のコントロールア
ンプのために、No11839という特注トランス(CW−252改 18V-0-18V)を
購入したばかりです。

 各種アンプキット販売のパイオニア的存在だった三栄無線も2000年8月28日
をもってオーディオ関連の営業を終了し、オーディオ愛好家にはお馴染みのラジオ会
館4階のあの店舗も無くなってしまいました。こちらも需要の伸び悩みが廃業の原因
だということです。

 私の初めての電子工作は今から25年近く前のことで、カーボンマイクとトランジ
スタ(2SC372)を使ったワイヤレスマイクを作ったのが始まりです。当時、中
学生だった私は、山梨の田舎から東京の秋葉原へと少ない小遣いを貯めては、パーツ
や工具を買いに行っていたのですが、三栄無線さんは、その頃からラジオ会館の4階
で営業していたと記憶しています。私がオーディオを始めた当初から、パーツの購入
では、大変お世話になったお店です。

 時代の趨勢とは言え、少年時代から親しんできた良心的なメーカーや販売店が廃業
するというのは、とても寂しいことです。長い間、ほんとうに有り難うございました。
いつかまた、営業を再開出来る日が来ることを、心より願って止みません。




真空管のインピーダンスと音色について

 真空管の出力インピーダンスは、トランジスタやFETのそれと比較して、かなり
高いわけですが、真空管によってもその値は様々です。例えば、2A3や6CA7の
最適負荷抵抗は2.5kΩ前後ですが、6V6の最適負荷抵抗は8kΩですし、送信
管の801Aなどは14kΩ近い負荷抵抗を必要とします。

 再生される音質の面から同じ多極管である6CA7と6V6を比較した場合、6C
A7の音は6V6の音に比べて、シャープな印象を受けます。乾いた音、または張り
のある音と表現しても良いでしょう。それと比較して6V6の音は、厚みのある音と
いった感じです。温もりのある音、潤いのある音と表現しても良いと思います。

 このような音色の違いは、一般的には出力トランスの過渡特性の違いによって説明
されます。出力インピーダンスの高い出力管に使用する出力トランスは、高域特性の
保証が難しく、十分な過渡特性が得られないため、出力の立ち上がりが鈍くなり急峻
な入力側の信号変化に出力側の信号変化が追いつかず、結果的にダルな音色になると
いうものです。

 6V6のアンプで、ハードロックなどの8ビートや16ビートといったハイテンポ
な曲を聴くと、6CA7のアンプの時と比べて、曲全体のテンポが遅くなったような、
そんな印象を受けることが時々あります。出てくる音まで大人しく聴こえるのですが、
どちらもそれぞれに、音楽の核心を成す部分は、十分に伝わってきます。これもまた
オーディオの楽しみの一つです。

 枯れた音色を楽しむのなら6CA7、温もりのある音色を楽しむのなら6V6、と
いった具合に使い分けるのが良さそうです。




RCAの赤ベース

 私の6V6Gプッシュプル・アンプは、初段をSRPPとしドライバー段をムラード
タイプとして6V6Gをスイングしています。製作当初、初段とドライバー段には6S
N7を使用していましたが、韓国に約3ヶ月の長期出張に出かけたとき、仕事が休みの
日に出かけたソウルのヨンサン電気商街(日本の秋葉原のようなところ)で偶然見つけ
たオーディオ・ショップに、RCAの5692が有り、1本約3000円!という破格
の値段で買って来て以来、6V6Gの初段には、この5692を使用しています。

 5692は米国RCAが出した6SN7の高信頼管であり、ベースの部分が赤いこと
から「RCAの赤ベース」と呼ばれています。本来の目的は通信用海底ケーブルの中継
アンプに使用するために作られた真空管です。海底ケーブルは、一度敷設してしまうと、
引き上げるのがとても困難であり、更に雑音のない正確な通信を実現するため、中継ア
ンプ(及びそこで使用される真空管)に求められる性能は、必然的に高寿命、低雑音と
いうことになります。

 この要求を満足するため、5692は、通常の6SN7に比べ、高い真空度と、機械
的強度の強化、徹底したS/Nの向上が図られています。それまで使用していたSYL
VANIAの6SN7W(これもメタルベースでJAN規格品の立派なものでした)を
5692に替えてみて驚いたのは雑音の少なさです。入力をオープンにしてVRを最大
にし、能率96dB/wmのスピーカーに耳をつけても、ほとんど雑音が聞えません。

 5692は日本で買えば1本1万円ぐらいはします。韓国のオーディオ・ショップの
主人が言っていましたが、真空管の最大のマーケットは日本であり、その日本の価格が
市場全体の価格を決定付けているそうです。韓国では1本3千円程度で売れる真空管で
あっても「市場の原理」によって、より高く売れる日本へと流れて行ってしまい、結果
的に1万円といった法外(!?)な価格が付いてしまっているようです。


5692 6SN7W
RCA 5692 SYLVANIA 6SN7W



スピーカー・システムの難しさ

 あらゆるオーディオ機器の中で、最も難しく、最も重要であり、最もシステム全体に
与える影響の大きな装置は、「スピーカー・システム」だと思います。電気信号を機械
的な振動に換え空気を振るわせて音を出すこの装置は、あらゆるオーディオ・システム
の中で最も古典的な装置です。

 私が最初に製作した本格的なスピーカー・システムは、フォステクスのFE203Σ
を使用したバックロード・ホーン・システムでした。ホーン特有のダイナミックな音は、
バスレフや密閉箱では決して得ることのできないものでしたが、同時に、バッフル面と
ホーン開口部から放出される音の位相差や、中低域付近に発生する大きなディップなど、
難しい問題も多く含んだシステムでした。

 こういった問題を解決するには、マルチウェイ方式のスピーカーシステムとするのが
一般的な方法ですが、この場合、クロスオーバー周波数付近の音の繋がりや音場の定位
といった新たな問題が発生します。また、ネットワークなどによる時定数の増加も考慮
する必要があります。

 さて、真空管アンプを使用したオーディオシステムに使用するスピーカーには、半導
体アンプを使用したシステムの場合とは、明らかに異なる特性が必要となります。その
特性とは、スピーカー自体の持つ「能率」です。真空管アンプの出力は3極管シングル
アンプで数W程度、5極ビーム管を使用したプッシュプルアンプでも、音質を考慮して
NFBを掛けた場合には十数W〜数十W程度ということになります。また、半導体アン
プのような高いダンピング・ファクタも期待できません。このため真空管アンプと組み
合わせて使用するスピーカーには高い能率が必要となります。経験的に言うと95dB
/Wm以上のスピーカーでないと、まともに鳴ってくれないようです。

 現在、私が使用しているスピーカー・システムは20cmフルレンジユニット+バス
レフ箱といったものです。いろいろ試した結果、結局このシステムに落ち着きました。
とは言っても問題が全くないわけではありません。真空管アンプのような出力の小さい
アンプを十分に鳴らすためには、前出のように、出来得る限り能率の高いスピーカーを
使用することが必要であり、更にバスレフの効果を十分に発揮するためには軽いコーン
と強力なエッジが必要となります。

 現在使用しているユニットも、もうだいぶ傷んで来ており新しいスピーカーユニット
を捜しているのですが、なかなか思うようなユニットが見つかりません。




300B

 ウェスタン・エレクトリック(WE)というアメリカのメーカーが開発した真空管に
300Bという真空管があります。元々は、WEが製造するトーキー・アンプ(映画館
で使用するアンプ)用に開発された球であり、業務用のごく限られたアンプに使用され
る球であったため、一般の市場には出回ることのほとんどない球でした。この300B
という真空管は、3極管でありながら当時としては破格の性能を持った球であり、シン
グルで10W以上の出力を取出すことができ、直線性にも優れ、出力インピーダンスも
比較的低く音も良いといった、まさにオーディオ用真空管としては、当時、最高の性能
を持った真空管でした。

 300Bは、他の多くの真空管と同様、半導体アンプの出現と共に生産を終了したの
ですが、最近ではWEがその生産を再開したり(但しペアで10万円以上!!)ライセ
ンスを受けた中国などのメーカーが生産を開始したため、再び脚光を浴び始め、今では
300Bを使ったアンプの製作記事やマニア向けの高級機の広告などがオーディオ雑誌
を賑わしています。大型のST管で見た目も美しく、オリジナルの300Bは、業務用
ということで生産された量も少なかったことがプレミアムとなり、今では世界中のオー
ディオ・ファンを魅了しています。

 さて、この300Bですが、いくら優秀な真空管であるとは言え、この真空管でアン
プを製作する場合、注意することが全くないわけではありません。というより、この真
空管の性能を十分に発揮するアンプを作ることは、そう簡単なことではないような気が、
私はします。

 300Bのアンプを設計する場合の最大の問題点は−70V前後の電圧を必要とする
深いグリッドバイアスでしょう。300Bのグリッドを十分にスイングするドライバ段
を設計することは、そう簡単なことではありません。コンデンサ結合で十分なドライブ
電圧を得るためには、前段はパワードライブとしたほうが良いと思います。6CA7や
6F6などの比較的出力インピーダンスの低い5極出力管を使用するか、6BM8など
を使用するのがよさそうです。また、300Bシングルアンプを製作する際に「お手本」
とするアンプにWE91Aがありますが、このアンプもWE310Aという優秀な5極
管があればこそのアンプだと思います。また、WE91Aの初段部分は更に310Aを
用いてフォト・セルの入力対応となっていることなどから、ドライバの310A自体に
十分な入力があり、このことが300Bを310A一本でドライブすることを可能にし
ているようです。

 最近、よく見掛けるオーディオ雑誌の記事の中には、300Bを6SL7のSRPP
や6SL7+6SN7パラ接続などの回路構成によるコンデンサ結合でドライブしてい
るものが数多くありますが、この構成で果たして300Bの性能を十分に発揮させるこ
とができるのかどうか、私には甚だ疑問です。

 私は3極管のシングルアンプは、あまり好きではないので、入力感度の高い5極管を
3極管接続したシングルアンプか、3極管でやるのならプッシュプルアンプということ
になるのですが、300Bのプッシュプルアンプとなると、何よりお金の面で、とって
も勇気が要ります(笑)