●祖神と「ドンド焼き」
大平を一巡すると、所々の道端に道祖神の石像が数多く祀られているのが見られます。特に、昔の村境、大平内での部落境、山道への登り口などに立てられており、付近の人々に親しまれている。道祖神は道陸神(ドウロクジン)とも呼ばれています。
昔から「シャーノカミサン」(さえの神)と、呼ばれており、ものを塞(サ)えぎる神ということで、外部より入ってくる悪霊や疫病神等を、中に入れないように、村境や部落境で防いで下さる神様であると共に、生者と死者、人間界と幽冥界の境の神、行路の神、旅の神として信仰されてきました。また、人の前をやたらに通るものではないという、日本人社会の礼儀を悪霊や疫病神にも流用されて考えたとも言われています。大平に祀られている道祖神は、単体像であるが他地区に行くと、男女が語りあったり、手をつないでいる像を見かけます。これは愛情の神、縁結びの神、性の神として祀られているが大平では、ほとんど同型の道祖神が各所に祀られています。この道祖神は、また子どもの守り神ともされ、子供の安全を願って信仰されてきました。
正月十四日には、「サイト焼き」あるいは「ドンド焼き」などと言って、道祖神を中心に祭りを行ってきました。お正月に使った門松、しめ飾り等を各家から集めて組み合わせ、藁などを使って祭屋という円錐形の小屋を作った。そして心木(御神木)として大きな竹を立て、その先に達磨等をつけたものです。これらは昔より神事として伝えられてきたものである。それがやがて、子供たちの行事のようになり、最近まで行われてきました。この小屋の中にござなどを敷いて、みんなで入り遊んだり餅や食べ物などを持ち寄り、交換して食べ、楽しい一夜を過ごした。これを「オコモリ」と言った。翌朝早くまたは翌日の夕方火をつけて焼いたものです。この時に書初めを焼いて、その灰が高く舞い上がると習字が上達するとか、その火で団子を焼いて食べると、一年中風邪をひかないとか、病気にならないと言い伝えられています。これは、お正月のめでたい行事として用いられた、門松やしめ縄に感謝し汚れのないように、焼き払うのと道祖神が一年間みんなの願い事を叶えたり、災害からみんなを守ってくださったのでそれらをみんな焼き捨てて、新しい願い事を受け入れたり、みんなを災害から守る用意をされるものと考えられている神事(神への供養)の名残と言われています。
道祖神の側で、「ドンド焼き」をしていたが、今では火災予防のため人家のない場所で焼くようになってきました。道祖神祭りは夕方暗くなる頃近所のご婦人方が集り、ゴザを敷いて安全祈願をしている姿が見られます。大平の道祖神は、古くより祀られており、かなり破損し、胴体のみの姿のものもあり、中には自然石と区別がつかないほど、破損しているものもあります。
※写真画像をクリックすると詳しい説明が表示されます。
|