■会社の「お葬式」
人にも寿命があるように、長短の差こそあれ、会社にも寿命があると思います。
好景気の波に乗り、業容を順調に拡大してきた会社も、経営を多角化しているうちに会社全体が赤字体質(内臓脂肪の蓄積による肥満)になったり、不渡手形(血栓)をつかまされてキャッシュフロー(血流)がとまったりということもあります。「失われた20年」ともいわれる長引く不況の影響で体力を消耗し続けた結果、あるいは技術革新や時代の変化のスピードについて行けずに、売り上げや利益の減少に歯止めがかからないということもあるでしょう。
長年にわたって会社を繁栄させ続けることは、経営者の手腕に負うところが大きく、法律のプロであっても経営のプロではないわれわれ弁護士には、顧問契約などを通じた日頃のご相談の中で、ちょっとした助力(予防接種や対症療法)をさせて頂くのが精一杯のことかも知れません。
そして、不幸にも寿命の終わりが近づいた場合には、やはり人間と同じく、どのように最期を迎えるかが会社にとっても重要なことです。
当事務所は、多数の事件を扱ってきた豊富な経験を生かして、会社の「お葬式」が、出来る限り滞りなく、スムーズに行えるようなお手伝いをさせて頂きます。
■事業廃止の方法
事業廃止の方法には、大きく分けて@清算とA破産の2つがあります。
@清算・・・ |
取締役が清算人となり、現務の結了、債権の取立て、債務の弁済などを行い、最終的に残った財産を株主に分配する手続です。債務超過ではないことが前提となります。
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A破産・・・ |
債務超過であるために、全ての債権者に対して債務の全額を弁済することができない場合に、裁判所(が選任する破産管財人)が会社の財産を管理・換価して、総債権者に公平に配分することを目的として行われる手続です。
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■事業を廃止するときのポイント
@決断を先送りしない・・・ 経営者の方は、もはや会社が立ち行かないだろうと悟っていても、最期の最期まで無理をしてしまいがちです。その心情はよく理解できますが、決断を遅らせた結果、かえって取引先や従業員に大きな迷惑をかけてしまうことが多々あります。依頼を受ける弁護士にとっても、清算や破産の準備には、それなりの時間的余裕が必要です。「明日、手形が不渡りになります!」といった緊急の相談を受けることもございますが、十分な準備の時間がないために、どうしても混乱が生じることは避けられません。
「駄目かも知れない。」とお感じになったら、出来るだけお早めに、相談にお越し頂きたいと思います。
A事業廃止にもお金が必要・・・人の葬儀に費用がかかるように、会社のお葬式にもそれなりの費用がかかります。会社の規模(債権者の数、負債の総額、資産規模)にもよりますが、裁判所に納める「予納金」だけでも100万円〜300万円程度は必要になります。それに加えて、従業員を解雇する場合の賃金や解雇予告手当、弁護士費用なども必要になりますから、お金を使い果たされた状態で相談を頂いても、処理に窮することになりかねません。
その意味でも、@に書きましたように、出来る限りお早めに相談して頂くことが大切です。
B債権者を公平に扱う・・・債務超過で事業を廃止するような場合には、全ての債権者を平等に扱うことが重要です。手形の不渡、売掛金の焦げ付きなど、多かれ少なかれ、債権者の方々には迷惑をかけることになりますが、十分な情報開示(手続の透明性)と平等な取扱いを徹底することで、無用な混乱や、疑惑が疑惑を招くという負の連鎖を避けることが可能です。
強引な取立をしてくる取引先への買掛金、親族からの借金などをついつい優先して支払ってしまう方がいらっしゃいますが、このような不平等・不公平なことをすると、会社のお葬式をスムーズに行うことはできなくなります。
全ての債権者にとって公平であることが、清算手続きを円滑に進める要となります。厳しい言い方ですが、情に流された軽率な行動は厳に慎まなければなりません
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■破産手続きの流れ
破産手続きの大まかな流れは、以下のとおりです。
@ 破産の申立
A 裁判官による審査・審問(面接)
B 破産決定・破産管財人の選任
C 破産管財人による財産の換価
(売掛金の回収、在庫商品・自動車・不動産等の売却、保険の解約etc)
D 裁判所における債権者集会の開催(2〜3ヶ月に1回)
E 債権者から届けられた債権の調査
F 債権者への配当(配当ができない場合もあります。)
G 破産手続終結・会社の消滅
■ご相談時にご持参頂きたい資料
以下のような資料をご持参頂くと、打ち合わせがスムーズにできます。
@ 決算書(過去3期分)
A 債務一覧表(銀行、買掛金、リース、賃料など)
B 手形の振り出し状況(支払期日、支払金額)
C 将来3ヶ月間の資金繰り予測
D 賃金台帳、就業規則、退職金規程
【文責 弁護士増田和裕】
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