労働契約法とは、平成20年3月1日から施行された、新しい法律です。
この法律の目的は、労働契約に関する基本的な事項を定めることにより、合理的な労働条件の決定または変更が円滑に行われるようにすることを通じて、労働者の保護を図りつつ、個別の労働関係の安定に資することとされています。
企業と労働者との契約関係は「雇用契約」になりますが、民法には雇用契約に関する規定がわずか9か条しかありません。労働契約法は、民法の特別法として、民法の不備を補う役割を担っています。
労働関係を規律する法律としては、労働基準法、労働安全衛生法、最低賃金法、男女雇用機会均等法、職業安定法、労働者派遣法、高年齢者雇用安定法など、さまざまな特別法が存在します。これらの法律は、罰則や行政機関(労働基準監督署など)による行政指導などにより労働契約関係を規律し、労働者を保護しようとするものです。
これに対して、労働契約法は、このような罰則や行政機関による強制によらずに、企業と労働者との間の紛争解決手続(労働審判や訴訟)における規範として機能することになります。
労働契約法は、その制定過程において労働者側と使用者側の意見が先鋭的に対立した多くの事項について立法化が見送られ、全部で19条に過ぎない「小ぶり」な法律にとどまりました。また、基本的に、これまでの裁判の蓄積の中で形成されてきた判例法理を条文化したものが多く、特に使用者の義務を強化したものではありません。
【文責 弁護士増田和裕】