藍家当主と王様と











突然押しかけて来た藍家当主達に劉輝は嫌な顔一つせず、席と茶を勧める。なんとも腰の低い国王である。

「初めましてなのだ、藍家当主方。…それにしても揃子とは本当にそっくりなのだな。誰が長兄の雪那殿なのだ?」
感心しきりといった様子で、劉輝が尋ねる。
「私です、主上」
「おい、何言ってるんだい?私が兄じゃないか」
「お前こそ止めなさい。私が雪那です」
「お前達、主上をからかうのは止めないか」
「そう言う君がややこしくしているんだよ」
「誰がどう見ても、私が兄だろう」
「「「主上は私達三人の誰の言うことを信じますか!?」」」
三人が其々喋る度そちらに顔を向けて話を聞いていた劉輝だったが、行き成り矛先が自分に向いて慌てた。
「えーと、…そうだ!こういう時は我が子の腕を其々引っ張って手を放した方が本物だと霄太師が!」
「成る程」
「我が子は…いないので楸瑛でいい」
「では、早速」
「私は右腕を」
「では私は左腕を」
「ではでは私は髪を」
「…兄上達、いい加減にして下さい。主上が混乱なさっています。主上、気にしないで下さい。どれでも同じようなものですから」
茶を淹れていた楸瑛が、口を挟んだ。兄達に腕を引っ張られるなんて冗談じゃない。髪なんて真っ平御免だ。
「楸瑛、いくらなんでもどれでも同じという言い方は失礼だろう」
そこに茶菓子を手にした絳攸が現れた。
「やぁ、絳攸殿久しぶりだね」
「元気にしていたかね?」
「愚弟が迷惑をかけているのではないかな?」
「お久しぶりで御座います」
綺麗に微笑んだ絳攸を見て、劉輝は驚いて楸瑛に耳打ちする。
「楸瑛、そなたの兄君達と絳攸は仲が良いのだな」
「…そう、でしょうか…」
楸瑛は複雑な表情を浮かべた。
「邵可様にもご当主様方の御訪問をお伝えしておきました。喜んでおいででしたよ」
「なんと!」
「流石、絳攸殿!我らのことをよくわかっている」
「その優しさ、機転のよさ、素晴らしい」
楸瑛と劉輝には、茶菓子を取りに行く過程で府庫に迷い込んだ絳攸の姿がありありと浮かんだが賢明にも口にしなかった。
しかし、三兄達の話はとんでもない方向に転がりだした。
「この様な側近が欲しかったのだよ」
「給料は今の5倍を約束しよう」
「どうせなら藍州でその才を生かしてみないかい?」
「え?」
「っ兄上達!」
「ちょ、余の前で堂々と引き抜くのは止めてくれなのだ!」


その後、府庫で邵可のお茶を嬉しそうに啜る三兄達を見て、貴陽訪問の本来の目的はこれなのでは、と楸瑛は思った。












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「遥かなる道」でのその後の三兄。三兄が絳攸に会うのは「さらば、貴陽!」と合わせて二回目ってことで。
嫌味を言う筈が変な方向に話は転がる。
この後きっと府庫で黎深様と三兄のバトル勃発です。
07/7/2収納

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