華嵐











桜の花弁がはらはらと、音を立てて散る。
後から後から、止む事無く花弁が降り注ぐ。


楸瑛は、その荘厳な景色に足を止める。
見上げれば、空を覆い隠す様な薄紅色。
しかし、どんなに美しい景色にでも見惚れてばかりはいられない。
自分には探しものがあるのだから。
その為に随分と遠くまで来てしまった。
けれど、間違ってはいない。
自分の第六感が告げる。
彼の人を見つけることは、まるで宝探しの様。

どんな場所でも器用に迷ってしまう彼の人を見つける為に
勘とか情報とか経験とか、持てるもの全てを活用する。
一度だって「探してくれ」なんて言われたことはない。
それどころか礼だって言われない。
自分でも大した物好きだと、思うけれど。
初めて手を引いたその時から、目が離せなくて。
気付けば、いつも探していた。


「…見つけた」
大樹に寄りかかって座る影が目に入る。
目当ての人物は歩き疲れて、休んでいる内に眠ってしまったようだ。
声を掛けようと近づく。
その時、
咲いた桜を一遍に散らして仕舞う様な、強い風が吹いた。
薄紅の花弁が舞い踊る。
壮絶なまでに美しい景色。
その只中に、君が居る。


―――嗚呼、私がずっと探していた宝物は君だったんだね


無防備に眠っていた君が、そっと微笑む。

「遅い」なんて言われる前に、
その可愛い唇ごと塞いでしまおう。
舞い散る桜の下、
無邪気に何度も口付けよう。
飽きることなく愛を囁こう。


桜の花弁がはらはらと、音を立てて散る。
まるで世界の祝福を受けているかの様に―――












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悲しみの新刊の反動で、私にしては甘い話になったのではないかと…。
季節物(?)なので慌てて書きました。
双花!あくまで双花!!譲れません!!!祝福してくれるのは世界ではなく、双花菖腐好きの皆さんですね(笑)
07/5/7 収納

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