Hand ミーア

 

 

 

どうして、あの手をとらなかったのだろう。

あの人の手。

あたしに向かってまっすぐに差し出された手。

「ミーアっ!」

あたしの名を呼ぶ声が今もまだ耳に残る。

雨と涙が頬を伝わった、あの日。

もうあの日の雨はあがってしまったね。

 

あたしはラクスになりたかった。

強くて、綺麗で、優しいラクス・クラインに。

ミーア・キャンベルとしてのあたしに何の意味があるというの?

この声はラクスになるためにあったの。

顔だって変えたし、過去だって捨てた。

だってラクスとしてなら、みんなに必要とされた。

アスランの傍にいれた。

役割なんて本当はどうでもよかったの。

ただ…誰かに、必要とされたかっただけなの。

アスラン

あたしはあの時、あなたの手をとっていればよかったの?

そしたら、あなたがあたしを必要としてくれた?

 

わかっていたよ。

本当は。

どんなにがんばったって、あたしはラクスにはなれない。

わからないふりをしていたの。

わからないふりをしている間は、ラクスでいれたから。

わかっていたからこそ、必死でしがみついたの。

 

初めはだたうれしかっただけなの。

憧れのラクスになれることが。

スッポットライトも声援も温かくて。

でも、

恐くなった。

あたしはラクスになって色んなものを手にしたから。

失うことが恐くてたまらなかった。

もう以前の姿に…ミーアに戻りたくなかった。

馬鹿だよね。

偽りの自分を守るために、あなたの手を離したの。

あなたはミーア・キャンベルに手を差し出してくれたのに。

ねぇ、アスラン

もう一度あの時に戻れたらいいのに。

そしたら、

あたしは迷わずあなたの手をとるの。













Hand メイリン

 

 

 

どうして、あの手をとったのだろう。

あの人の手。

わたしに向かって躊躇いがちに差し出された手。

 

初めはだた、おねぇちゃんに対する対抗心だったのかもしれない。

伝説のエースパイロットに対するミーハーな憧れ。

大人びた物腰、憂いを帯びた瞳も素敵だった。

彼はフェイスだし、わたしはいち管制員。

話す機会は少なかったし、ラクス様とのことも知ってた。

でも

彼の孤独や悩み、葛藤を目にするたび新しい感情が育っていった。

だから

殺されて欲しくなかった。

例え、もう二度と会うことができなくても生きていて欲しかった。

だから

彼の脱走に力を貸した。

 

シン、レイ、艦長やクルーのみんな

おねぇちゃん

ごめんなさい。

でも

わたしはあの時に戻れたとしても

もう一度、迷わずアスランさんの手をとるの。

 






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