誰も知らない









何日かぶりに見た君は

やっぱり、そこにいて

精一杯役割を演じていた。

彼女の顔には

雨の非常階段で見せた

弱さや、儚さはなく

ただ厳しい瞳に強い決意を宿していた。

 

それが仮面であることにも気付かない様子で。

 

 

でも

その仮面は脆くも崩れ去る。

 

本物の歌姫の登場により。

 

君はただの少女に戻された。

あの日のように。

ただ、あの日と違うのは

スクリーン越しでは、君に手を差し出してあげることはできないんだ。

 

ラクスは「その方の姿に惑わされないで下さい」と言った。

果たしてミーアは惑わしていただろうか?

ラクスならこうする、正しいと信じていたのではないのか?

 

今AAにいるクルー達の誰も、俺の隣にいるメイリンも、カガリやキラも、ラクスでさえ

気付かないんだろうな。

ラクスの登場により彼女の命が危うくなることを。

ミーアが本当はただラクスに憧れる普通の女の子だってことを。

彼女に励まされた兵士が確かにいることを。

 

きっと、俺以外。

 

ミーアの瞳が助けを求めてさまよう。

胸がしめつけられた。

そして、気付いた。

俺は君のそんな姿を見たくなかった。

ミーアにはいつだって無邪気で明るい笑顔が一番似合うから。

だから一緒に連れていこうとしたのに。

 

ミーア

今度こそ君をそこから連れ出そう

無理矢理にでも

だから

それまで

生きて…

そして

一緒に…








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