目を見張るくらい綺麗だったけど
そこに
優しさなんてなかった。
彼とは違って…
もう一人の私
「ラクス・クライン、ここにいましたか。議長がお呼びです」
あたしを呼びにきた人物は
あの、レイって子だった。
アスランを撃墜した一人。
あたしは返事をすることもできず、ただ彼の顔を見つめた。
綺麗な顔だった。
整形したあたしが言うのも変だけど、どこか作り物みたい。
その顔には感情がないみたいだった。
怒りだとか、悲しみ、そして後悔。
そう、彼はアスランを殺したことを後悔なんてしていない。
動かないあたしを不信がって近づいてくる。
「どうかいたしましたか、ラクス・クライン?」
当然のように、その名前であたしを呼ぶ。
知ってるくせに!
あたしが偽者だって!
「あなた、知ってるんでしょ!?あたしが…」
「貴女はラクス・クラインです」
あたしの言葉を遮って言う。さも当然のように。
「それでいいではありませんか」
あたしが黙っていると
「もし、仮に貴女がラクス・クラインでないとして、それがなんだというのです?」
「…え?」
「ラクス・クラインなんて名前は象徴であればいいのです。何が正しいかなんて誰にもわからない。ラクス・クラインにも。だったら、自分が信じた道を進むだけです。俺はギルを信じている。それだけです」
彼の言うことはわかる。
正しいとも思える。
…でも
彼と同じように綺麗な顔をした
それなのに、不器用で優しい
人物があたしの中であたしの名前を呼ぶ。
「ミーア」と。
きっと最後の人だった。
それさえ、失ってしまった。
あたしは…
あたしは目の前の彼のように強くはないけど、
少しだけ、微笑んだ。
目の前の、自分に似た
信じる者から与えられた役割を必死で果たそうとする者へ