僕達は似ているから
どうしてこんなことをしたのか
自分でもよくわからない。
ただ、助けたいと思った。
数回しか会ったことのない少女。
しかも、どちらかというと、苦手だった。
どう接していいか困っていた。
それでも、
助けたいと思ったのは
彼女が自分と似ていたから。
なにが正しいかなんてわからない世界で、
その中で自分にできることを必死で探していた。
俺は本当の名前を明かし、彼女は本当の名前を偽り。
偽っていることが、いいこととは思えない。
でも、そこに悪意があったとは思えなかった。
いつも彼女は本音を語ってきた。
それがわかるから。
「一緒に逃げよう」
素直に、そう言えた。
雨の中どれだけ走っただろう。
ふと気付くとミーアの足からは血が流れていた。
ハイヒールを履いていた足は裸足だった。
途中で脱げたのか、それとも自分で脱ぎ捨てたのか。
そんなことに全く気付かなかった。
「ミーア、足…」
「これくらい大丈夫」
走って乱れた呼吸を整えて答える。
「すまない、もう少し我慢してくれ」
「ええ」
少し声が震えている。
無理もない。
ずっと雨の中にいるのだ。
しかも、ミーアはこんな薄着で。
だいたい、なんでまた、こんな露出度の高い服をステージ衣装にしているんだ。
考えが違う方向に行きかけて、慌てて修正する。
早く、格納庫にたどり着かなければ
いくらコーディネーターといえども風邪をひいてしまう。
思わず手に力をいれる。
そこで、はっと気付いた。
急いで、ミーアの手首を見ると、俺の手の跡がくっきり残っている。
「アスラン?」
俺の行動を不信がってミーアが尋ねてくる。
きっと足も手も痛かっただろう。
それなのに、文句一つ言わずに必死に走ってきたんだろう。
普段は騒がしいくらいなのに、こんなところは変に健気だ。
掴んでいた手首を離し、今度は手をつなぐ。
しっかり、離れないように。
なにが正しいかなんて本当はわからない。
彼女をここから連れ出すことも。
きっとなにが正しいかなんて、誰にもわからない。
それでも
生きていて欲しい。
生きていきたい。
一緒に。
だから
「行こう、ミーア」