宍倉ペーパー・ラボ 


宍倉佐敏


私は「技術の特種製紙」と言われる洋紙製造会社の総合技術研究所と資料館準備室で40年ほど製紙用植物繊維に関する研究をしてきました。40代頃までは洋紙の主要繊維である木材繊維の研究を行い、その後はコットン、亜麻などによる画材洋紙の開発とファンシーパーパーに関わる手漉き和紙の原材料に関する研究でした。
 定年退職後、特種製紙で得た知識と経験を生かして、小さな製紙研究所を平成17年に設立しました。個人企業のため宣伝不足で、まだまだ認知度は低いですが、この度、「協同組合静岡文化財保存修理センター」に加入させて頂きましたので、企業の内容を説明させて頂きます。



● 紙の繊維分析


 個人の家では土蔵の中や、古い家の屋根裏に文化財と呼ばれる文書や絵画などがあり、寺院や神社などにも貴重な紙類の文化財が多く眠っています。これらは虫害や破損、シミや汚損、酸化やムレによる劣化が進んでいると思います。
 文化財保存修復の技術者の人々は、蝕んでいる文化財を補修して、長期保存に耐えられるように修復します。これら文化財の素材は紙が多く使われているので、これらの紙の繊維分析を行ないます。この試験法は、「JISの紙の試験法」の規格には無い、独自の方法を私が開発したもので極微量の試料で大きな結果を得ることが出来ます。


● 紙の調査研究

 高野山の古文書を初め、日本各地の寺院、文庫、文書館などで紙の調査研究をした経験を生かして、美術館、博物館や図書館、資料館などに在る古文書や絵画に使われた紙類を、透かしたり、拡大鏡(ルーペ)で表面をみたり、繊維の動きをスケッチしたり、厚みや重さを調べて、非破壊による紙の調査をします。この結果大まかな紙の種類、性質、製法、使用材料などが推定できます。


● 紙の試作

 紙の紙質調査と試作紙の物理試験を行い、紙の強さや柔軟性を調べ、希望により新しい紙、特殊な紙などの試作を行います。



● 紙に関する講演会活動

 女子美術大學や和紙文化講演会、社内外に於ける講師経験をもとに講演を行います。






宍倉佐敏プロフィール

1944年 静岡県沼津市に生まれる
1965年 日本大学短期学部卒業
       特種製紙総合技術研究所勤務
1967年 静岡県立製紙研修所にて紙の一般を研修
1970年 アメリカ・カナダにて木材パルプの研修
1971年以降 「三椏」「雁皮」「楮T・U」「麻類」「竹紙」「ワラと茎幹繊維」
「木綿紙」「木材パルプ」の研究成果を発表
        奈良時代の紙の再現、奈良朝料紙研究、非木材研究などを専門誌に発表
        静岡県紙・パルプ協会誌に新しい特殊紙、修善寺紙、静岡の古札など
        掲載 国立古文書館「昭和十年の事務用紙」、「昭和16〜29年の
        事務用紙」調査結果報告
        社内では画材用紙、保護・保存用紙、ファンシーペーパー、再生紙の開発、藩札や私札の調査、明治時代の洋書の紙調査結果など報告。
 2000年  中国・台湾・韓国の手漉き紙の調査に参加
 2005年  特種製紙定年退職、同時に宍倉ペーパー・ラボ設立
 現在     女子美術大學大学院非常勤講師
        日本鑑識学会会員(紙の分析)
        紙の博物館・陀羅尼会会員
 著書     「製紙用植物繊維」 特種製紙発行
        「中世和紙の研究」 特種製紙発行
        「和紙の歴史」・製法と原材料の変遷・印刷朝陽会発行

 
加盟工房の紹介  ■紙繊維分析・修復用和紙製作