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T 調査目的
今日の福祉契約型社会の黎明期において高齢者虐待は『介護』のみならず『人権』
問題として早急に解決すべき課題である。中でも在宅高齢者の場合、家族・家庭とい
った局限化された環境のもとで発生し、把握されにくいうえ介入も困難である。
本調査では、『虐待』と『不適切な状態』の状況を明らかにするとともに『虐待』
の具体的状況を捉え、その対応を考えることを目的とした。
U 調査対象
平成13年度以前に開設された静岡県下の居宅介護支援事業者の介護支援専門員と
高齢者在宅介護支援センターの相談員1,120名を対象とした。
V 調査期間及び方法
平成16年2〜3月を調査期間とし、平成15年11月〜平成16年1月の3ヶ月間に調査対
象者が担当した虐待事例の個別内容と全体像を捉える内容に大別した調査票を郵送し、
また、回答も同様に郵送方式での回収とした。
なお、『虐待』の定義として「高齢アメリカ人法」の定義を用い広く捉えようとした。
また、それに順ずる行為を『不適切な状態』とした。
W 調査結果
1 回答者の属性等
本調査の回収率は41.9%であった。その内訳を見ると介護支援専門員が45.2%、相談
員が34.6%となっている。また介護支援専門員は30歳代以上が93.6%、職歴は3年以上
の者が50.0%となっている。次に相談員を見ると30歳代以上が85.2%、職歴は3年以上
の者が40.2%となっている。
2 回答者の平均担当件数
介護支援専門員、相談員を合わせた全体では、1人当たり58.54件を担当し、その内虐
待事例が0.48件、虐待が疑われる(不適切)な事例を0.91件担当している。この事から
約2人に1人は虐待事例を担当している事となる。
3 虐待対応のシステム
システムが「ある」と回答したのが51.5%だった。その内容をみると市町村等行政機
関によるもの、在宅介護支援センターによるもの、事業所間の連携によるもの、事業所内
によるものに大別される。また、システムがあっても必ずしも機能していないとの報告
も見受けられた。
4 個別事例について
(1) 事例について
居宅介護支援事業者の介護支援専門員から154事例、在宅介護支援センターの相談員
から42事例の合計196事例が報告された。
虐待の分類については、「高齢アメリカ人法」等の定義を明示したが、分類上疑問のも
のもあった。それだけ虐待を捉える事の困難さを感じる結果でもあった。
介護支援専門員は担当する利用者の事例、在宅介護支援センターの相談員は介護支援
専門員の支援を行った事例と介護保険未利用の事例に分かれた。
(2) 虐待の種類と傾向
虐待の種類としては、「介護放棄」がもっとも多く54.1%、次いで「身体的虐待」44.8%、
「心理的虐待」42.8%、「経済的虐待」20.6%と続き、性的虐待は1.0%、「自虐」は3.1%と
なっている。(複数回答可のため実件数対比)
1つの事例に対して単一種類の虐待が行われているものは全体(除く「自虐」)のうち
51.5%、残りは2つ以上の種類が組み合わさって生じている。単一種類の虐待では、「身
体的虐待」、「介護放棄」が多く両者で72.1%を占め、2種類では、身体的+心理的虐待、介
護放棄+心理的虐待、介護放棄+経済的虐待の組み合わせが多く、3種類以上では介護
放棄+心理的+身体的虐待がもっとも多く虐待の構造性が伺える。
(3) 被虐待者
@平均年齢及び性別
平均年齢80.1歳であったが、男女の構成比は男性27.6%、女性72.4%という結果
であった。
A心身の状況
自立、未認定者が10.9%、要介護認定者(172事例)の中では介護1が多いが大き
な差は見受けられなかった。
B世帯構成
被虐待者の世帯構成を見ると、子供等の世帯と同居している「3人以上世帯」が62.
8%、それ以外の世帯分類では「その他2人世帯」が14.3%、同居者のうち息子が半
数以上あった。
C収入
収入は殆んど(94.3%)が「有り」と答えており、そのうち94.0%が年金を受給し、
収入月額は不明のものを除き、「15万円未満」が93.3%であった。
D住居
持ち家が78.4%を占めているが、所有者は被虐待者のものかどうかは不明であ
る。
(4) 虐待者
@性別及び年齢
性別の記載があったもののうち、男性が57.7%を占め平均年齢は58.2歳であった。
A被虐待者との続柄
もっとも多いのは「息子」で37.6%、「娘」を含めると親子関係によるものが55.6
%あり、夫婦関係においては「夫」によるものが15.5%、妻によるものを合わせると
夫婦関係において生じているものが24.3%あった。
B収入及び所得の状況
所得があるかどうか不明(10.8%)を除き、「無収入」が21.1%おり、被虐待者の無
収入のもの(5.7%)と比して約4倍である。
また、収入があっても介護支援専門員や相談員が「低所得」または「やや低所得」
と感じている事例が40.3%あった。所得の如何に関わらず、借金等の負債があるも
のも見受けられた。
(5) 虐待への気付きと対応及び結果
虐待が行われていることを介護支援専門員や相談員が知ったのは担当後が63.0
%であり、そのきっかけは「自分の訪問」によるものが49.7%ともっとも多く、利用
している「サービス事業者」によるものは訪問系、通所系サービスを合わせて39.5%
あった。また、「家族からの相談」が25.1%あり、「本人(被虐待者)からの訴え」によ
るものも33.3%あり、また、同じ当事者の両極である「虐待者からの相談」によるも
のも約10%あった。(複数回答可)
虐待に気づいた後、「対応した」のは81.6%(160件)、対応内容は「当事者間の話し
合い」が102件、「関係機関とのカンファレンス・情報交換」が89件、「行政機関への相
談」が68件と続き、サービスによる対応は、「回数の増加」67件、「種類の追加」59件、そ
して「入所手続き」51件と大きなウェイトを占めている。(複数回答可)
こうした対応の結果として、「変化なし」49.0%、「状況が改善した」45.2%、中に
は「状況が悪化した」ものも3.2%あった。
次に「対応しなかった」35件の理由として、「差し迫った危機状態ではない」と判
断したものが57.6%、「本人や家族の拒否」が33.3%、「どうしてよいか分からない」
というものも9.1%あった。
(6) 虐待の期間と継続性
「半年未満」がもっとも多く59%だったが、1年以上のものが23.1%あった、この
ため虐待が今回のみでなく、「以前から継続していた」というものが74.4%を占め
ている。
(7) 介護期間、介護開始時期及び同居時期
主介護者の介護期間が「1〜5年未満」が多く40.1%をしめており、「1年未満」15.5
%、「5〜10年未満」11.2%、「10年以上」が4.8%だった。
また、介護開始時期については、「要介護状態後」25.4%、「要介護状態悪化後」22.
2%あり、「要介護状態以前から」も18.8%ある。
次に同居の有無については、「同居」している者87.3%、「別居」しているものが9.
9%だった。
同居の時期は、「要介護以前から同居」79.6%、「要介護後から同居」が7.7%だっ
た。
(8) 被虐退者、虐待者の自覚と関係性
非虐待者側の自覚は、「どちらかというとある」と「ある」が43.6%、「どちらかと
いうとない」と「ない」が34.4%となっており、自覚している方が多い、また「どちら
とも言えない」が22.1%あった。
虐待者側の自覚は、「どちらかというとある」と「ある」が23.7%、「どちらかとい
うとない」と「ない」が55.2%、自覚していない方が半数以上あり、また「どちらとも
言えない」は21.1%あった。「どちらとも言えない」は双方に約20%があり内面的な
部分だけに判断の難しさが伺える。
また、両者の以前からの関係については「普通」38.1%、「険悪」30.9%「良好」が4.
6%、「不明」が20.6%あり、近隣(社会)との関係性においては、「普通」47.4%、「孤
立」37.6%、そして「緊密」が1.5%という結果であり関係性の悪さや「孤立」が目立
つ。
(9) 家族の対応
虐待の事実を他の家族(虐待者以外)に相談をした時の反応として、反応「なし」
が50件、反応が「あった」が81件だったが、その内協力が得られる等のポシテイブな
反応があったものが29件、関わりを避ける等の消極的な反応が28件だった。
(10) 相談及び相談先
虐待についての相談を他機関等にしたかどうかは、「相談した」は120件(63.3%)、
「相談しない」は57件だったが、相談先としては行政機関の76件が圧倒的に多く、以
下在宅介護支援センター13件、主治医12件と続く。
(11) 連携及び連携先
虐待をとおして連携がとれた機関や事業所があったかどうかについては、連携
がとれた機関が「あった」とするのが69.5%、「なかった」とするものも30.5%あっ
た。
連携がとれた機関等としては、行政機関が33.3%、訪問介護員14.9%、在宅介護
支援センター8.8%、そして特別養護老人ホームが8.8%となっている。
X まとめ
今回の調査では「虐待」の定義として自虐を加え広く捉えるとともに、もう一方でい
わゆるグレーゾーンである「不適切介護」とも一線を隔した「虐待」を導きだす事を意図し
たが、回答者により差があったことは否めない。高齢者における「虐待」とは何かを判断
し指し示す必要があるが、それは法整備とともに行政機関の役割の一つではないかと
考える。本調査でも相談先では圧倒的に行政が多いにも関わらず連携がとれた機関と
しての行政機関は激減する。介護保険が始まり、 民間活用を前面に出すあまり行政が
最終ラインとしての機能を発揮できていないのではないか、行政権限をもって立証し
老人福祉法による「措置」が確実に行われるシステムを構築する必要がある。また、同時
に成年後見制度における市町村長の申し立てもシステムに組み入れていく必要がある。
高齢者に携わる専門職種が「虐待」への認識を持ち、早期発見・早期介入をしていく必
要性があるが、プロセスにおいては家族問題への介入といったソーシャルワークが必要
となる。現在、厚生労働省では地域包括支援センターという新たなシステムが検討され
ているが、高齢者の人権を守り在宅生活を支えきるシステムの構築を期待したい。
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