2009年8月11日島田税務署長宛に手渡した申入書の全文は次のとおりです


               申      入      書
 

 先月、政府・日銀は「景気は底打ちした」と宣言しました。しかし、私たち中小零細業者をとりまく状況は日に日に厳しさが増してきています。一時の、受注がそれまでの8〜9割減といった極端な状況は脱しつつあるとはいえ、採算ラインを大きく下回る仕事薄状態はますます長期化の様相を濃くしているのが実情です。
 このところ、所得税こそ幸か不幸かかかってきませんが、消費税については商売らしい商売をしていれば、最低でも10万円単位でかかってきます。多くの仲間は、採算ラインを大きく割り込むような単価の仕事でも赤字覚悟で受注せざるを得ないのが実情です。今時、消費税分を除けておけるような結構な身分の中小零細業者がいったいどこにいると言うのですか。この消費税については、今年度予算の中に「2年後消費税率を見直す」旨の文言が書き込まれ、政府・与党の一部からは税率12%が既定の事実であるかのような発言さえもれてきています。現在の税率5%でさえも誰のために商売しているかわからないほど消費税は私たち中小零細業者の暮らしと営業を困難に陥れているのに、これを倍以上に引き上げるなど、絶対に許すわけにはいきません。
 こうした中、貴税務署は、税金滞納者に対して、売掛金を差し押さえるという、事業主はもとより、従業員の生活を脅かすひどい処分をしています。熱海税務署では自殺者まで出しているというのに何の教訓ともせず、滞納者は死んでもかまわないということなのでしょうか。税金は負担能力のあるところから取り、生活費には課税しないというのは、戦後の民主主義的な税制度の鉄則だったはずです。貴職におかれては、いまこそ生活と営業の困難に必死の思いで立ち向かっている中小零細企業の実情にしっかりと目を向け、血の通った税務行政の執行に当たられることを強く求めたいと思います。
 今、中小業者は、生活するのに必死なのです。憲法第25条は、「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」と定めており、これを保障するのが、国の最優先の責務のはずです。この憲法のもと、国税徴収法第151条第2項は、「税務署長は…中略…差押により滞納者の事業の継続又は生活の維持を困難にするおそれがある財産の差押えを猶予し、又は解除することができる」と定めています。税務署といえども、国民の生活を無視して、ただ取り立てればいいというものではないはずです。
 ついては、私たち島田民主商工会は、中小業者の暮らしと営業を守る立場から、貴職に対して、相互の信頼関係に基づく正常な慣行を守り、税務行政が民主的に運営されることを求めて、左記事項について申し入れるものです。

                             記

一.「日本国憲法」ならびに国税当局自身が出した指針である「税務運営方針」を貴税務職員に徹底するこ  と。

二.長引く不況により、明日の生活もままならない状況のもと、事後調査は原則的に行わないこと。どうして  も必要な場合でも、事前通知を行い、調査に協力する納税者には調査理由を判りやすく具体的に説明し  余計な心配をかけないようにすること。

三.調査においては、立会人がいることを理由に、一方的に調査をせず退席しないこと。また、納税者に対し  ては、頻繁に立ち寄ったり、「青色申告取り消し」などの心理的圧力を掛けたりしないこと。さらに、営業の  信用を失墜させる、いわゆる反面調査は行わないこと。また、調査の結論はいたずらに長引かせることな  く速やかに出すこと。

四.異議申し立ては、更正処分を受けた納税者に対する救済制度です。その制度が作られた趣旨を尊重し  事後調査の処分に誤りがなかったかを謙虚に審理すること。

五.税金の滞納者は生活困窮者が大半を占めています。みだりに滞納処分等をせず、納税者の営業や生   活を尊重して、納税計画や納税の猶予を認めること。換価の猶予や滞納処分の執行停止の要件に該当  する場合は直ちに実行すること。

六.「申告納税制度の基本は、従来とまったく変わっていない」との国会付帯決議の趣旨を尊重し、白色申   告者に対して「収支内訳書」、法人には「事業概況説明書」の添付がないことをもって、差別的な取り扱   いや提出の強要をしないこと。消費税課税業者に対しては、「記帳が厳密にできていない」などとして即   仕入れ控除を否認するといった二重課税を行わないこと。

七.当会と他の納税者団体との間でいかなる差別も行わず、税務行政運営上、公平かつ平等に取り扱うこ  と。また、税務当局及び税務職員はもとより、他の納税者団体に対しても、当会会員への脱会工作はもと  より、当会が脱税をこととする団体であるかのような悪宣伝等をさせないよう、指導を徹底すること。

2009年 8月   11日
島田税務署長   藤 原  日 士 人 殿

                                 島田市若松町2650-6
                                 全商連 島田民主商工会
                                   会 長  中 尾  光