申  入  書
 
  一昨年後半からの深刻な不況は、私たち中小業者の経営を直撃し、一時の売上がそれまでの八〜九割減といっ た極端な状態こそ脱したものの、依然採算ラインには遠く及ばない受注しか確保できないような仲間も少なくあ りません。その上消費税は、“赤字でも容赦なくかかる天下の悪税”として猛威を振るっています。小売業者は、 売上とマージンの低下に頭を抱えていますし、下請業者も、形の上はともかく、単価を最低限以下に値切られて、 もうけはおろか消費税分のお金さえ残らないのが実情です。
  ところが今、滞納処分として売掛金を差し押さえるといった実情を無視した取り立てが行なわれています。貴 職におかれては、機械的な滞納処分などを直ちにやめて、まじめに仕事をし、必死に税金も納めようと努力して いる中小零細業者に対して血の通った姿勢で臨むことを強く求めます。
  憲法25条は、「すべて国民は健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」と定めています。国税徴収法 も、第六章で、差押えができない財産として納税者の生活に欠かせない物や生業に不可欠な財産などを挙げてい ます。これは納税の義務よりも国民の生きる権利の方が先だということを示しています。この点からも、貴職  におかれては、中小零細業者の経営実態を無視し、生存権をも意に介さない強権的・機械的な税務行政執行のあ り方を見直し、改めるように求めるものです。
  税金は、不況に苦しむ私たち中小零細業者からではなく、これまで大儲けをしてきた大企業・大資産家からこそ 取るべきです。消費税の導入からちょうど20年経ちましたが、これまで国に入った213兆円の85%以上にあたる183 兆円が法人減税の穴埋めに使われた計算です。これを元に戻せば年4兆円も増収になります。また、輸出大企業 は、上位10社で約一兆円も消費税の還付を受けています。これをやめることによっても大幅に税収は増えます。
  こうした点をふまえ、私たちは、中小業者の暮らしと営業を守る立場から、貴職に対して、相互の信頼関係に 基づく正常な慣行を守り、税務行政が民主的に運営されることを求めて、次の通り申し入れるものです。

                 記

一.憲法と、国税当局自らが出した指針「税務運営方針」を貴税務署職員に徹底すること。

二.長引く不況で明日の生活もままならない状況のもと、事後調査は行わないこと。どうしても必要な場合でも、 事前通知を必ず行い、協力する納税者に調査理由をわかりやすく説明すること。

三.調査の際、立会人がいることを理由に、調査をせず一方的に退席したりしないこと。また、頻繁に居宅や仕事 先に立ち寄ったり、「青色申告を取り消す」などの心理的圧力を掛けたりしないこと。営業の信用を失わせる、いわ ゆる反面調査は行わないこと。また、調査の結論はいたずらに長引かせることなく速やかに出すこと。

四.税金の滞納者は生活困窮者が大半である。安易な滞納処分をせず、国税徴収法第153条の趣旨を尊重すること。

五.「申告納税制度の基本は、従来とまったく変わっていない」との国会付帯決議の趣旨を尊重し、白色申告者に対 して「収支内訳書」の添付がないことをもって、事後調査等で不当な取り扱いをしないこと。消費税課税業者に対 して、記帳上の些細な不備を理由に、仕入れ税額控除を否認する等の二重課税を行わないこと。

六.当会と他の納税者団体とをいささかも差別せず、税務行政運営上、公平かつ平等に取り扱うこと。また、貴署 職員はもとより、他の納税者団体に対しても、当会への悪宣伝等をさせないよう指導を徹底すること。                                               以     上
二〇一〇年 三月 十二日
島田税務署長  藤 原 日 士 人  殿

                            島田市若松町二六五〇―六
                            全商連・島田民主商工会  会 長  中 尾  光