税務調査への立会いについて

 私は今回、異議申し立て人の△△△△さんから委任を受けて代理人として口頭で意見を述べたいと思います。
 さて、この度△△△△さんが受けた処分の原調査では、臨場したAA調査官、BB調査官の二人が、△△△△さんの依頼した会員の立合い人がそこにいた事で、「守秘義務違反になるから」と退席を求め、さらに両調査官は、それが受け入れられないと判断したらしく「第三者が同席していては、調査ができない」などと言って帰ってしまいました。
 帳簿や請求書などの資料類を用意して、調査に協力する意思を示している△△さんに、“信頼できる人に同席してもらいたい”ということで親しい会員が同席していることのみを理由に、用意してある資料に全く目も通さないまま調査官が帰ってしまうというのは、本当に理解できません。法の公正な執行者であるべきあなた方税務職員が、国民の権利をこのような形で踏みにじる事は決して許されることではないはずです。
 私が民商に加入してから約30年が経ちました。1990年頃迄は、税務署も民商会員の立合いを認め、なんら問題もなく調査が行われて来ました。それは、あなた方の上司や年の多い同僚の方に聞きあわせてもらえれば、その通りという事がわかります。しかし、あなた方税務署員は、この様な事実を確かめようともせず、ただ一方的に「守秘義務違反になる」とオオムのごとく繰返し、立合いを排除する事のみに拘泥して、社会通念上(税務署内部の特殊な立場ではない)当然に要求される程度の努力もしないで帰ってしまうのです。
 もちろん、国の法律が変わったというのなら、当然これに従うのは国民の義務だと考えます。しかし、貴税務職員に法律が変わったのか、また変わったのならいつか、とたずねても結局答えられず、開き直って、「変わっていない。でも立合いは守秘義務違反」と答えるばかり。これでは納得いかないのも当然だと思いますが、そうは思いませんか。
 あまり出鱈目ばかりやっていると当然返事もできないでしょうし、ストレスもたまりますよ!
 さて、あまりにも調査官が“守秘義務”にこだわるので、最近の判例を調べてみました。昭和50年代は、確かに調査官の言い分の根拠になりそうな判例が相次ぎました。しかし、東京地裁で平成3年1月31日に下された判決では、従来の判例をふまえながらも、納税者の協力がないために調査できないという事は、青色取消事由として、「法律上の明文をもって規定されていないこと」「取消処分が納税者に対して一定の不利益を課する処分である事からすれば、取消事由の認定に当っては、一定の慎重さが要求される」とし、「税務当局側が帳簿の備付け状況等を確認する為に、社会通念上当然に要求される程度の努力を行なったにもかかわらず、その確認を行なうことが、客観的にみて、できなかったと考えられる場合に、右のような取消事由の存在が肯定されるものと考えるのが相当である」と判示し、税務職員が「理由の開示」や「立ち合い」を拒否する自己の裁量権にのみ固執して、調査される側が、帳簿書類を取り出して提示してみせる行為までしているのに約20分間という短時間で調査を切り上げてしまった対応を不適切として処分を取り消した。そして、東京高裁による平成5年2月9日の控訴審判決(税務訴訟資料194号)も、この一審の判断を支持して控訴を棄却しています。これ以降、立合人の問題では、納税者側勝訴の判決が続いています。横浜地裁での平成7年6月21日の判決(判例タイムス885号)では「武田の排除に拘泥して、約30分という短時間で調査を打ち切ることなく、ある程度粘り強い態度で調査努力を行なっていれば、本件帳簿類を確認する事ができたと考えられる」と判示しています。
 控訴審の平成9年9月30日東京高裁判決(訟務月報43巻9号)も「調査官の判断は、およそ税務調査の行なわれる家屋内に第三者がいる限り、常に調査に支障があるというに等しいものであり、合理的な裁量の範囲を超えるもの」として控訴を棄却。立合い拒否に固執する税務職員の態度は不当だと断じました。
 平成14年3月22日、愛媛・松山地裁は、調査官が立合い排除・守秘義務に固執し、「可能な調査を進め」なかったことは、「合理的な判断ではない」とし、税務署の処分は、「一般的・抽象的な守秘義務のみを根拠に被調査者の私的利益を一方的に制限するもの」と述べています。また、「青色申告承認の取消事由は慎重になるべきであり、被調査者(納税者)の利益を一方的に制限するもの」だとして、、立合い人の存在を口実とした不当な処分を断罪しています。
 このように裁判でも、立合い人がいることを口実とした不当な処分に対して、これを認めないとする流れが定着しつつあります。
 こうした判例の流れを踏まえると、今回の△△さんに対する「青色申告取消し」については、法律の解釈と運用があまりにも一方的というほかなく、到底認めることはできません。以上の理由で今回の「青色申告取消し」の処分については、ただちに撤回することを求めて、私の代理者としての意見陳述をおわります
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