青山白雲  87.08.13〜15南アルプス 白峰しらね三山縦走
木〜土 2泊3日 単独         北岳→あいの岳→農鳥岳
 2日前山好きの浩宮様が無事終えられた後に行く。ガスって高い所での展望は今一だったが、お花畑、岩稜、森林には満足。

第1日 8/13(木) 晴 広河原→二俣→北岳肩の小屋泊
白峰三山縦走  甲府駅よりのバスは芦安で乗換え、以前は満員だったので判らなかったが一車線のトンネルが沢山あり、中には途中で曲っていたりして、少し行って向うより先入車があるとバックしたり大変だ。

 広河原に着くと駐車場はもとより周辺の着けられる所は車で一杯だ。新しく出来た芦安村のバス発着所で先ずは一服する。

 野呂川に架かる吊橋を渡り、広河原小屋の脇より大樺おおかんば沢沿いの道を大勢の人々と前後して10:00登り出す。

 この辺で見られた花々、カワラナデシコ、アレチマツヨイグサ、アカソ、ヒヨドリバナ、フジアザミ、ヤマハハコ、ホタルブクロ、ツリガネニンジン、オトコヨモギ、オトギリソウ、タマアジサイ。

 上の方はガスの中だ。大樺沢上部の雪渓が今年は少な目だそうだが、そこを行く人が豆粒のように見える。

標高2150mの二俣付近で食事。周りの花々、キオン、イブキトラノオ、ミソガワソウ、トモエシオガマ、ユリワサビ、ヤハズヒゴタイ、キツリフネ、アカバナ、ダイモンジソウ(花了)、アキノキリンソウ、クガイソウ、ホソバトリカブト、ハクサンフウロ、タカネグンナイフウロ、タイツリオオギ、ソバナ。そして丸い葉のヒロハカツラの樹。鳥はコマドリとメボソ。

 これより沢道と別れ右俣コースの急登に入る。天気が良ければ左手に北岳バットレスが見えるらしいが、もっぱら花を見ながらの喘登だ。然しその花はめっきり高山形を呈して来た。タカネナデシコ、ムカゴトラノオ、タカネスイバ、コバノコゴメグサ、シシウド、ハナウド、コオニユリ、クロサワアザミ、ハクサンサイコ、シモツケソウ、マルバダケブキ、イヌショウマ、オヤマリンドウ、ウサギギク、エゾシオガマ、ウメバチソウ、ミヤマオトコヨモギ、シナノオトギリ、メイゲツソウ、ミヤマホツツジ等々がダケカンバ、ミヤマハンノキの下に生えている。
 ↓間の岳
間の岳  14:38風が吹き抜けハイマツのある、北岳より北へと落ちる小太郎尾根の稜線2850m地点に到達。約2km先にその小太郎山が東に山旗雲を靡かせていた。

 往復の大変な割に展望今一らしいので止めにして小休止。滅多に来られない所でこういう中途半端な山が不遇の山となるのだろう。行って慰めてあげなければいけないのだが。北岳、仙丈ヶ岳、甲斐駒ヶ岳何れも雲中で山裾のみ見える。

 ミヤマウイキョウ、オヤマソバ、オンタデ、トウヤクリンドウ、タカネヒゴタイ、チシマギキョウ、イワギキョウ、ミヤマダイコンソウ、チングルマ(実)、イワベンケイ(実)、ミヤマキンポウゲ、シナノキンバイ、タカネヨモギ。シナノキンバイは花は少なく実が多い。
 ハクサンフウロ タカネナデシコ イワオトギリ タイツリオオギ
ハクサンフウロ  15:30北岳肩の小屋へ入り、夕食と朝の弁当を頼む。弁当今日中にくれますかというと、座った途端に持って来たのには驚く。

 16:15には食事になる。ミートボールや煮魚の缶詰と干物、味噌汁。水場は下5分とあるがここでもぽとぽと出る、しかし大勢順番待ちなので私は止めた。

 小屋が作った北岳植物園という3坪程の名札付きの囲みあり。一般に中々見られぬ物があって参考になった。キタダケソウ、クロユリ(共に花了)、キンロバイ、キタダケトリカブト、テガタチドリ、タカネマンテマ、シコタンソウ、キタダケウズ。

 酒を醤油の小瓶に入れて持参したのでイカサキ、イカテン等を肴に半分呑んで18:30には寝る。3000mなので一寸寝返りを打っても息苦しくはあはあやる。又隣の人が鼾と寝言と歯軋りが絶え間無しの交代制で最初は参ったが疲れと酒の御陰か大体眠れた。


第2日 8/14(金) 晴 →北岳→北岳山荘→中白根山→間の岳→農鳥小屋泊
 濃いガスの中4:00出発、4:55日本第2の高峰北岳山頂に立つ。5:30迄食事して待ち明るくはなったがガスが取れそうに無いので、傍らの方に記念写真をお願いして発つ。
 ↓富士
富士  東に高度300m下りガスを抜けたのでカメラを出す。北岳山荘の彼方に間の岳がどっしりと構え、富士も山頂部雲ながら姿を現す。その手前には鯨のように櫛形山が雲海に浮かんでいる。

 お花畑への分岐を過ぎごろごろの大石を跨ぎ八本歯のコル手前のピークに来ると、垂直差600mの北岳バットレスが目の前で、横の大樺沢雪渓を人がちらほら登って来る。その向うに鳳凰三山が山頂部白砂でそそり立つ。

 コルの先ボーコン沢の頭は景色の良さそうな円頂だが中止、登り返して先程の分岐より捲道のお花畑コースに入る。

 タカネビランジ、キタダケヨモギ、クルマユリ、タカネナデシコ、イブキジャコウソウ、ヤツガタケタンポポ、ミヤママンネングサ、タカネツメクサ、タカネコウリンカ、タカネニガナ、ミヤマコウゾリナ、ヨツバシオガマ、タカネヤハズハハコ(タカネウスユキソウ)、ミヤマキンバイ、シナノオトギリ、タテヤマリンドウ、イワウメ。シナノキンバイが一番多い。
 ↓間の岳山頂
間の岳山頂  7:30北岳山荘に着く。夏山救護所があり、ごった返す中に入って缶コーヒーを求め一服。行く手濃いガスの帳垂れ込め出掛けたく無いが、農鳥小屋まで行かぬ事には明日が困るので、半袖の上にヤッケを着用、意を決して外に出る。

 中白根山通過、間の岳少し休んで下りに掛かる。膨大な岩石累々の中赤ペンキの矢印が頼りだ。下り切った辺りに遭難碑がある。ガスで小屋目前でぐるぐる歩き(リングワンデリング)疲労凍死だそうだ。

 農鳥岳と手前鞍部に稜線小屋が見えて来た。時間が大分早いが寒いので受け付け未だですかと聞くと良いとの事で11:50には入る。振り返る間の岳には圧倒される。浩宮様も感銘を受けられたらしい。

 ↓農鳥岳
農鳥岳  この小屋は甲府の夜景が素晴らしいそうだ。全8棟で管理人、食堂、客室6よりなる。西より沢を詰めて登って来た2人組、イワナを釣ったという。もっと獲れる所ありますかの問いに主人、あるけど秘密という。

 沢のビバークで寒くて眠れなかったという2人は、昼の1:00から大鼾となる。主人に明日の天気を尋ねると、気圧配置からだと当然晴れる筈だが、今年は何時までも不安定で確定的なことは言えないとの事。

 食事が出来たのでお早くと17:00呼ばれた15名が食堂に入り、ヒジキと高野豆腐の煮付け、山菜、味噌汁の夕食になった。16名分用意したが15名呼んだ。しかし16名食べてるとかで誰か呼ばれない人が食べてるよ、おかしいともう一度点呼。やはり合っている仕様がない食べて下さい、おかしいを主人が連発しながら去り、一晩中悩むんじゃないかと皆笑う。山の怪談か?主人が名前と年齢を聞きパーテイの場合代表者のみ記入、この辺が間違いの元か。大騒ぎする程の食事でもないが^/^。ランプも無く18:00には寝る。

第3日 8/15(土)晴 →西農鳥岳→農鳥岳→大門沢下降点→奈良田
 3:45弁当を貰いガスの中をヘッドランプで出発。岩の赤ペンキが唯一の頼りに濃いガスの中を突進、岩稜がやがて西農鳥岳近くなる頃、遮るものの無い稜線を冷たいガスが吹き抜け、メガネを曇らせ惨憺たるものになる。4:30山頂直下で風を避け視界の良くなるのを待つ青年がいた。彼が出発、間も無く明るくなり稜線西側の荒涼としたガラ場を上下、5:11農鳥岳に着くと、先着の青年は晴れそうに無いですねと言って行って仕舞った。しかし昨日6:00頃農鳥岳は山頂迄晴れていたので、待つ事にする。
 ↓ブロッケン
ブロッケン  そうこうする内次々と人々が到着、忽ち60人位と賑やかになる。雲も段々切れて来て間の岳が姿を現わしたが、北岳は雲の冠が取れない。西方に塩見岳が時々見えるが直ぐ隠れて仕舞う。

 その内北西のガスに向かって折しも現れた太陽を背にするとブロッケン現象が現出、大騒ぎになり皆大喜びで、一所懸命手を上下する。一人の婦人は特に熱心で寒風の中飽きずに長い事やっていた。

 私は待っている間に食事をしたが高い山等では血が胃腸に集中して、指が感覚無くなり真っ白になるという持病で、シャッターを上手く押せず往生する。30分後回復したが今度は反動?で真赤になりじんじん痛んで来た。
 ↓間の岳と雲に隠れた北岳
間の岳と雲に隠れた北岳  この先広々した二重山稜付近でお花畑になる。ミヤマアワガエリ、ミヤマゼンコ、イワベンケイ、コイワカガミ、ツガザクラ、ウラジロナナカマド等他に無い種も見られた。鐘のある大門沢下降点より山稜は更に続くが予定した広河内岳は省略、三山に別れを告げ下山に移る。

 ここからの下降は凄いと聞いてはいたが、成る程急降そのものもだが、その後の河原と森林の長い事。兎に角バテる。

 この間の植物、カニコウモリ、コウモリソウ、タマガワホトトギス、ジャコウソウ、シナノナデシコ、オミナエシ、ツバメオモト、コバギボウシ、カラマツソウ、ツリフネソウ、ミズヒキ、エビガライチゴ、ナナカマドそして実に巨大なフジアザミ。

 ↓大門沢下降点より
大門沢下降点より  下流で吊橋を渡る事4回、ムジナ坂という小さな峠を越して漸く発電所に12:20、下降点より5時間余を要している。

 2km早川沿いに下り奈良田温泉より乗ったバスは、これ又早川〜富士川を延々2:00掛け身延駅迄。でも甲府から広河原へもそうだがバスが無いと全行程1週間は掛かるだろう。

 何時も東京付近の低山から雪を戴く三山を眺めて憧れていたが、縦走を果して満足した。天候が今一だったので次は両俣か池山吊尾根の静かなコースより登って見たい。

<コースタイム>
 第1日:出発(タクシー)4:35→甲府駅7:16→芦安8:15→広河原9:50→肩の小屋15:32  第2日:出発4:00→北岳4:55→山荘7:30→間の岳10:15→農鳥小屋11:50  第3日:出発3:45→農鳥岳5:11→下降点6:51→発電所12:23→奈良田12:55→帰着19:45
<歩いた距離>第1日:山道6km 第2日:山道9km 第3日:山道19km 車道3km 計22km
<行動時間>第1日:9:57→15:32 歩行5:00 休止:30 計5:30  第2日:4:00→12:50 歩行4:20 休止3:30 計7:50  第3日:3:45→12:55 歩行6:50 休止2:20 計9:10
<掛かった費用>¥21010 (中宿賃4700×2)
<使用地図>昭文社4万 南ア南部  地理院2.5万 仙丈岳/鳳凰山/間の岳/夜叉神峠/奈良田
<参照>甲斐の山山 新ハイキング社 小林経雄氏 p296〜299

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