青山白雲  85.08.15/16南ア 仙丈ヶ岳 3032.7m
木/金 単独
<コース>広河原→北沢峠→仙丈ヶ岳→野呂川越→広河原
 天気は安定し素晴らしい展望だったが、南アの山深さは聞きしに勝るもので、長大な仙塩せんしお尾根にすっかり疲れ、農鳥岳迄の予定を諦め野呂川へと下りた。同じ地図上の距離でも他の山とまるで違う事が判った。

第1日 8/15(木)晴 北沢峠→小仙丈岳→馬の背ヒュッテ(泊)
仙丈ヶ岳

 甲府から芦安乗り換えのバスで広河原に着くと、そこは乗用車で一杯だ。台風でここが土砂で埋ったのは3年前の事だ。

 村営のマイクロバスに乗り換えて出発、一寸集中豪雨が来れば寸断されそうな急な山道を頼りなく走り、11:00北沢峠着。

 樹林の静かな所だったらしいが、今はハイカーと観光客で騒々しい。観光客は大体仙水峠へ向かうらしい。樹林を登り出すと間も無く静けさが戻り少数の登下山者の世界となり、メボソがチチリ、チチリと鳴く。

 カニコウモリ、セリバシオガマ、アキノキリンソウ、ゴゼンタチバナ等の花を見ながら、3合目、4合目と登るにつれ振り返えると、樹間より白い甲斐駒ヶ岳がチラチラする。ソバナ、ヤグルマソウ、トモエシオガマ、オトギリソウ、ヤマハハコ、マルバダケブキ、サラシナショウマ、ホソバトリカブトの花々。大滝の頭は単なる分岐点だが態々樹を伐ったらしく甲斐駒が良く見える。

  ↓鋸岳と甲斐駒ヶ岳
鋸岳〜甲斐駒ヶ岳  ミヤマホツツジを見る頃は森林限界となり、シャクナゲ、ハイマツ、コケモモの広闊な展望地に飛出した。東方、鋸岳、甲斐駒ヶ岳、早川尾根、中でも摩利支天を南に突出した白い甲斐駒の迫力は凄い。

 お花畑に入る。トウヤクリンドウ、タカネシオガマ、ウサギギク、オンタデ、ムカゴトラノオ、イブキトラノオ、チングルマ(実)、クルマユリ、ミヤマウイキョウ、タカネヒゴタイ、タカネグンナイフウロ、ハクサンフウロ、タカネスイバ、テガタチドリ、ミソガワソウ・・・

 13:40小仙丈岳に立つ。行手山頂が大きく迫るがガスって来て、北岳にも雲が掛かり出した。富士は見えない。北に馬の背の平坦部が目立つ。タカネニガナ、チシマギキョウ、タカネツメクサ、花も終りに近く花柱が伸びたミヤマダイコンソウ。ヒカゲノカツラ(胞子)。

 山頂はガスの中となったので、今日は一先ず分岐より小屋に向かう。仙丈小屋は南ア最高の水場だそうだが、無人なので食事、寝具付きの馬の背ヒュッテ迄下らなければならない。ヒメコゴメグサ(コバノコゴメグサ)、ミヤマカラマツ、エゾシオガマ、ミヤマキンポウゲ、シシウド。
 ↓森林限界より山頂
森林限界より山頂  馬の背分岐にザックを置き、丹溪新道に行ってみる。馬の背は平坦で準平原というらしい庭園状の所だ。

 馬の背ヒュッテという破れ小屋に下りる。3名の青年が運営している。昨日は混んで一部下の無人の藪沢小屋に移って貰ったそうだが、今日も相当なものだ。

 水は痺れる位冷たかった。食事は管理人の小屋で2回に分けカレー、その間青年達は突っ立って見守る狭さだ。小屋は6畳3間だが土間と片寄せたザック置場を除くと、15畳に40名位を詰めた。女の人を隅に、次いで家族連、男達と頭足交互に1畳当たり3人で寝返りも儘ならないので体が凝り、又疲れた足が吊るので弱る。はしゃいでいた子達も驚いたのかすっかり静かになってしまった。


第2日 8/16 (金)晴 →山頂→仙塩尾根→野呂川越→両俣小屋→野呂川出合
 ごそごそ2組程起き出したので私も支度、3:45には出発する。馬の背に出ると東天が白らみ始め黒々とした仙丈ヶ岳の半月形モレーンの底に仙丈小屋の灯が見えた。懐電も不要になり東に甲斐駒が黒々と蟠り、雲海の彼方には中ア、北ア、八っ等が浮かんでいる。仙丈小屋から昨日の稜線に戻るとすっかり明るくなり、富士や北岳を左に見ながら登り出す。
 ↓奥秩父上の御来光
奥秩父上の御来光  4:55仙丈ヶ岳3032.7mに立つ。風がありヤッケ着用、小屋の弁当で朝食中に御来光となる。カールの底からは人々が危なっかしいガラガラの近道を続々登って来る。

 景色は今迄で一番?雄大な360°だった。遠くは中ア、御岳、北ア、八っ、浅間、奥秩父、富士。近くに甲斐駒、北岳、塩見方向・・・。

 平地は全て雲の中。富士と北岳、高さで日本1、2位の山が連なって見えるのはここ丈とか。仙丈の山影が西に長い。中アはつい隣に堂々と長大な山脈を横たえている。北アは槍ヶ岳迄見分けられるが、遠いので私のカメラでは迫力不足だろう。御岳山は左手が少し中アに隠れる。仙丈の道標を背に居合わせた方に撮って貰い、これからが大行程なので去り難い山頂を辞す。

 ↓No.1とNo.2連立で見えるのはここだけ
No.1とNo.2連立で見えるのはここだけ  仙塩尾根を下り出すと間も無く素晴らしいお花畑になる。7月末が一番良いらしいが、昨日見た高山植物に次のものを加えよう。

 イブキジャコウソウ、イワベンケイ(実)、イワオウギ、ミヤママンネングサ、ハクサンチドリ、シナノオトギリ、コガネギク(ミヤマアキノキリンソウ)、タカネコウリンカ、タテヤマリンドウ。

 6:13大仙丈岳に着く。振り返ると大仙丈沢のカールが大きく一望される。ここより直ぐで南アに多い二重山稜の船底を道は横断する。皆ここでガスの時等迷うらしい、そのせいか道が在らぬ方に付いていて迷いハイマツで苦労する。黄色の梅花形の可愛いキンロバイを見る。

 ↓ウサギギク チシマギキョウ イブキジャコウソウ イワベンケイ 
ウサギギク チシマギキョウ イブキジャコウソウ イワベンケイ  2600mで森林限界となりハイマツが立ってきたなと思う間も無く、シラビソ、ダケカンバの樹林帯に入る。マルバダケブキの群生した所で、追越した青年が訊くので丸葉岳苳と教えてあげた。

 苳の平は何処か良く判らぬ儘通過、82年台風によるらしい倒木が多く時間を食い、疲れる。樹林中の伊那荒倉岳を過ぎて直ぐで干上がった高望池の小平地で一服。

 上下の繰返しの後ハイマツと露岩の地点に出た。独標2499mのピークらしい。360°の展望。ここからの仙丈はカメラの距離的に今日一番だった。直ぐ又樹林に潜る。岩間に小さく咲くミヤマダイモンジソウは注意しないと気付かない小草だ。

 ↓大仙丈カール
大仙丈カール  直角に左折展望の無い横川岳で、一服中の先程の青年に追い着く。京都立教大生で静岡の実家に帰って、昨日甲斐駒を遣って来た、山は未だ2年という。

 私は疲れてこれから又三峰みぶ岳迄倒木の3:00の登り+あいの岳への岩礫帯1:00の登りを考えると急にへこたれ、それに仙丈丈で充分満足したのでここで下山する事にした。

 青年もそうするとの事、北アと違い山が深いという。全く南アの山は夫々スケールが大きいのだ。地図で考える以上に歩きでがある。皆思いは同じか前後する単独1人、パーテイ4人の方も矢張り下山に決定。

 ↓間の岳
間の岳  野呂川越より一気に河原へ、洗顔して歩いて行くと先行した青年と両俣小屋で会う。小屋主に尋ねると北沢峠よりのバスが出合で捕まりそうというので歩き出す。

 道は崩壊と倒木で荒れペンキが頼りである。林道に出た、サワギクやブルーのツバメオモトの実。これより約10kmは辛いが、高山を左右にそして野呂川を見下ろしながらの曲折は良い。彼方に見えるアサヨ峰の稜線の向うに丈ガスが棚引く山旗雲が見える。

 ヤマハハコ、オトギリソウ、カワラナデシコ、ヤマニガナ、アカソ、ヤマヨモギ、イタドリ、メイゲツソウ、アカバナ、ノコギリソウ、ハンゴンソウ。ヤマハハコ等が多い。又ヤナギランの群生、フジアザミは蕾。ハンミョウ(ミチシルベ)が先へ先へと案内、5〜6回の後飛立った。左より流入する大小仙丈沢の遥かな上にカールを戴き仙丈岳が仰がれた。右より流入する中白根沢辺りの河原ではテントを張る人もいる。

 野呂川出合の停留所で待っていると間も無く青年も辿り着いた。持参の「新ハイキング」誌を拡げ関東、関西の山々の話が弾む内にバスが来た。広河原に着くとここでテントを張り、明日は芦安温泉に¥400で入れて貰い帰る予定です、という人懐こい学生とここで別れた。

<コースタイム>第1日:出発4:20→甲府駅7:13→芦安8:15→広河原9:50→北沢峠11:00→大滝の頭12:26→小仙丈岳13:40→馬の背ヒュッテ15:26  第2日:出発3:40→仙丈岳5:22→伊那荒倉岳8:43→横川岳10:35→野呂川越11:05→両俣小屋11:45→野呂川出合14:23→帰着20:00
<歩いた距離>第1日:山道7km  第2日:山道14km 車道10km 計24km
<行動時間>第1日:11:00→15:26 歩行4:00 休止:30 計4:30  第2日: 3:45→14:23 歩行9:20 休止1:40 計11:00
<掛かった費用>¥14120(中小屋代4500)
<使用地図>昭文社4万 南ア北部   地理院2.5万 仙丈ヶ岳/間ノ岳

(追記)8/12日航ジャンボ機が長野群馬県境の御座山、三国山間の御巣鷹山に墜落、奇跡的に4名が助かったが、坂本九ちゃんを含む520名が亡くなる。これを書いている8/18現在も大捜索が続いている。

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