青山白雲  85.08.04富士山 宝永山 2693m
日曜日 晴 単独             お中道最高点通過2860m
<コース>河口湖駅→御庭→精進口新5合目→吉田口6合目→須走口6合目→お中道最高点→御殿場口6合目→宝永山→御殿庭→御殿場口新2合目→御殿場駅

宝永山

 八ヶ岳山麓のパーマネントオリエンテーリングコースに出掛ける妻と一緒に中央線に乗り、大月で別れる。この所山に異常な位精力を傾けているのでOLはとんと御無沙汰している。関心はあるのだが山への情熱がそれを上回る^/^。河口湖駅より登山バスに乗り終点一つ手前の御庭で降りる。
 ↓南アと天子山塊
南アと天子山塊  新しい石畳のコースを登る。鬱蒼としたシラビソ、コメツガ林で苔の絨毯が素晴らしい涼しい道だ。メボソがチチリ、チチリと鳴いている。

 樹林を抜け出ると山々が見えて来る。南ア〜八ヶ岳〜奥秩父、手前に天子、御坂の延々と続く山屏風だ。甲府盆地はガスに沈み、前回行った櫛形山が白峰三山の手前にずんぐり横たわる。

 お中道ハイキングコースを約3km、右に山頂左に山々を見ながらカラマツの風衝樹形と岩礫帯に一面に咲くオンタデ。時々ダケカンバの林に入ると、ベニバナイチヤクソウとコケモモそして花も終りのハクサンシャクナゲ、ナナカマド。

 メガネを掛けショートパンツのふっくらした女の子が現われ、去年登ったが北岳はどれですかと訊く。その山々をバックに撮りたいという。私も懐かしい赤石を背に写して貰う。南アと富士の話を暫し、お引止めしてどうもと礼儀正しく去って行った。
 ↓八ヶ岳〜奥秩父 手前御坂山塊
八ヶ岳〜奥秩父、手前御坂山塊  9:36相変わらず騒々しい新5合目に出る。富士山一の盛り場だろう。最盛期とあって観光バスと自家用車で広い駐車場も満杯で何kmも下迄車道にも駐車、スピーカーが大音声で喚き耐え難い。

 登山道に入るとゼッケンを付けた大集団が続々下山してくる。皆目以外手袋、手拭等で覆っているのは日焼けの他にお互いの立てる凄い火山灰を防ぐ為もあろう。一様に疲れきった様子で難民みたいだ。しかし同時に日本一高い山に登って来たんだぞ、という満足感や誇りも読み取れ人間の表情の複雑さを感じた。

 ↓宝永火口
宝永火口  その雑踏の中を人を乗せた馬が行き交う。6合目の少し先迄らしい。馬の溜りで一頭がこの大風景と人混みに頓着無く下を向く澄んだ瞳が印象に残った。

 馬方にお中道を訊く、これよりは道があやふやらしい。落石で死者が多数出た下山道は廃止され、新しく付け替えられた方を人々に抗し只管歩き、やっと抜け出して静かなコースへと入る。

 しかしその横断道は道しるべのペンキも定かでない砂礫地で、脚を取られ登りよりむしろ苦しい。しかし植物相は豊だ。低いミヤマハンノキの間にフジハタザオ、クルマユリ、キンレイカ、ミヤマオトコヨモギ、シロバナヘビイチゴ、イワツメクサ、ミヤマヤナギそしてミヤマハンショウズルの可愛い鐘形花。

 ↓フジイタドリ
フジイタドリ  人のちらほらする須走口登山道を横切ると、涸沢を何度も上下、藪もある大変な道だ。

 しかしこの眺めはどうだろう!残雪の在る山頂、大斜面にオンタデ、雲の切れ間に東や北の山々が意外に高く隠見される。

 時々サーッとガスが上って来る。この辺お中道で一番高い地点2860mだ。自衛隊員も登下する御殿場口登山道にクロス。行手に宝永山が現れるとその先に駿河湾が見えた。

 13:30宝永山赤岩に立つ。火口の凄さは山頂に劣らないがガスが激しくなって来た。ここで外人に頼まれお互いにシャッターを押す。生まれて初めて英会話をする。サンキューといった丈だが。

 第1火口に下りるとケルンが沢山あり、観光客も多い。この先植物が豊富になって来る。ムラサキモメンズル、イワオオギ、丈の低いヤマホタルブクロ等。御殿庭はハイマツ状カラマツが多い。赤い花のイタドリが多くなる。イタドリの高山形でメイゲツソウ、フジイタドリともいう。この辺から見る愛鷹山はなんて形いいんだろう。
 ↓愛鷹山
愛鷹山  ダケカンバ等の林に入ると、下草はウラハグサとて緑瑞々しく柔らかで、何処でも寝転びたい所だ。

 ガラ場の急降、そして禿山に登ると小天狗塚といい展望台地だった。シモツケ、コケモモが多く踏まずには歩けない。双子山へ向かう道も雄大な景観を行く。

 フジアザミが多くなり早や蕾を付けたものもある。鞍部よりは山中湖、杓子山、御正体山、丹沢、箱根のパノラマ。スキーリフトに沿ってざくざく下って行くと茶店に着き、ジュースで一服、83.05.15ここまで夜通しで駅よりよくも歩いたものよと、ノンストップ30分のバスの中で感心する。

<地質メモ>
宝永山:宝永4年(1707)生成
    3火口が構造線上に正しく乗っている
    赤岩:富士の前身、古富士火山の山肌が露出したもの
    第1火口付近の砂礫
       白っぽい:宝永山の安山岩   火口から下 270年前
       黒っぽい:宝永山の玄武岩の砂 火口から上 1万年前
       赤っぽい:岸壁から縦縞になって流れている 古富士火山の安山岩
    赤い溶岩:鉄分の酸化による

<植物メモ>
富士山にはハイマツは無い。カラマツのハイマツ状のみ。参考にした新ハイキングの末国さんの記述はヒメコマツ(ゴヨウマツ)だったかも。
この高さなら普通ミヤマ又ウラジロナナカマドだが、富士のは低山帯のナナカマド。
メイゲツソウ(フジイタドリ):イタドリの高山形、オンタデより茎細く、葉が違う。
ムラサキモメンズル:富士以外には殆ど無い。根は1m、綿をよじ捩った様なのでこの名あり。

<コースタイム>出発(タクシー)5:00→河口湖駅7:59→御庭8:54→新5合目9:36→須走口クロス11:51→御殿場口クロス13:08→宝永山13:30→御殿庭14:40→小天狗塚15:06→新2合目16:08→帰着19:20
<歩いた距離>山道23km
<行動時間>8:36→16:08 歩行6:50 休止:40 計7:30
<掛かった費用>¥5810
<使用地図>昭文社6万 富士/五湖  地理院2.5万 富士山/須走/印野
<参照>新ハイキング誌No.358 宝永火口 末国氏
       

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