青山白雲  75.11.30道志 入道丸 714.4m
日曜日 快晴 単独
前回に気をよくして、藪を突き進み危ない目に会う。
<コース> 橋本駅→三ケ木→東野→両国橋→月夜野峠→入道丸→綱子集落→奥相模湖→東野
入道丸  AM:6.00起床。天気がいいのと母の来るのが延びたので、山行きとする。ストで横浜線が動かない。町田駅でバスが来ているので走るのだが、登山靴では走りにくくモタモタとじれったい。橋本、三ケ木、東野と3回乗り換えで、10時にやっと着いた。

 元々はずっと先の巌道がんどう峠へ行く予定だったが、遅いので石砂いしざれ山に変更。然し降りる所が、伏馬田と言うのだが、フシマダと思っていたらフセマダとアナウンス、通り過ぎてしまう。次でと思っていたら、人家も無くなり山中を延々。とうとう次は終点の東野迄行ってしまう。鶴屋旅館という小さな宿と2軒ばかりの雑貨屋があるだけだ。少年がポカンと往来を見ている。帰りも同じようにしていた。

 奥相模湖上の橋を過ぎ、3kmばかり上流の両国橋に来る。神奈川と山梨の県境だ。山梨側に小さなバス待合所があるだけで、神名中バスは殆ど東野止まりで両県のチベットだった。此処の絵看板にも出ていたが、この先のバス停"分校入り口"より山道があり、それを登る事にした。  お百姓に道を聞きながら畑の中を行くと、1軒の農家の中に入って行きそうになり、中より腰の曲がったおばあさんが現れ驚いた顔で「猟師さんですか?」とたずねられた。「いや、ハイキングに来たのですが山道が・・・」と言うと、横の細い道を指して「そこから行けます。安寺あてら沢へ出られます」と教えてくれた。

 最初は細く頼りない道だったが、段々良くなり、落ち葉を踏みしめ登って行くと、木を切り払った所に出た。裏丹沢の大群おおむれ山の眺めが良いのでここで昼食にした。しかし後ろの高みでは山越えの風がゴウゴウと鳴り落ち着かない。リンドウやハコネシダを見る。

 この先、月夜野峠は直ぐだった。大岳山の特徴のある山容を始めとして、奥多摩の山波が遠望された。時計を見ようとしてバンドを引っ掛け、心棒が外れ草の中へコロコロ。小さいのであきらめて時計はポケットへ。後で考えるとこれが予兆とやらだったか? 帰って妻に「山の神様が知らせてくれたのに貴方は行くんだから」と叱られ「神様にお礼を言って来なさい」と言われる。其の時は一笑に附したが、今はそうしようと思っている。

 安寺沢へ出たのでは、大分回り道なので、昭文社の地図には無いが地理院の5万図にある入道丸への道をとる。踏跡が微かに付いているが、笹や野茨が凄く手袋を着ける。明るいがびっしり生えた笹薮で道が分からなくなった。此処で引き返えせば良かったのだが、その内どこかへ出るさと小枝をボキボキ折りながら進む。状況は益々悪くなって倒木、蔓を乗り越え掻き分けて行くようになる。(リュックが引っかかり帽子を取られ・・・)

 気が付けばそこは沢の源頭らしい。木々の向こうには湖が見えているので、この沢を下ればよいと足を踏み出す。沢は一寸曲がっていたので約300m下迄見通せず、怖さを余り感じさせなかったのだ。しかし足の下で小石がザーツと崩れるや、尻餅をつき小石と共にずっと下の見通せる所迄ずり落ちてしまうと、登るも下るも出来なくなった。血が頭にカーツと来てガタガタする足で、闇雲に又ザーツと下るとスッテンと転んでアケビの蔓で首を掬われる。急に自然が周りから見つめているような気がした。

 こんな所で暗くなったらとそればかり考える。時間は2時。まだ十分あると言い聞かせ、チョコレートを食べて気を鎮める。沢は危ないと気が付いて横に這い上がるが、此処も歩きにくい。悪戦苦闘している中、やっと下に林道が見えほっとする。上を見てビックリ其の急な事! 又下を見ると湖へと断崖で、この林道が無かったらと考えゾッとする。

 林道は色々と別れており、下るコースはどれも行き止まり。仕方なく登る道を行くと、湖から遠ざかり、それ迄聞こえていた水音もしなくなり、北側の暗い雰囲気となる。と、突然猟犬のポインターが現れた。気が付くと地元の猟師らしい人が後ろにいた。道を聞くと詳しく教えてくれる。この先綱子に出るからトンネルを経て東野に戻るとよいとの事。話中犬がじゃれどうしでセーターを台無しにしようとする。

 暗い森を抜け出ると良い道に出た。汚れを落としてお茶を一服、ブラブラ行くと綱子集落に出た。おじいさんが畑を耕すその向こうに白い馬が草を食み、少し先ではトラックに作物を積む人。農家の庭先でおとなしく遊ぶ子供たち・・・殆ど無音の世界だ。

 綱子トンネルを抜けた辺りで、道を聞かれた車にすすめられ東野迄同乗させてもらう。バスを待つ間、丹沢の犬越路からという、50代のベテラン登山者と話をする。私の沢の件を聞くと無茶するねと笑われた。日帰りでもこんな大袈裟な荷物を背負ってと女房に言われているが、非常の事を考えるとこれ位持っていなければと言う。沢の場合だが、そんな時は細引きを30m位持っていると助かるとの事。丹沢や道志の沢は脆いので怖い事等色々忠告してくれた。沢の件では妻と母に叱られた。

<歩いた距離>山道6km 車道4km 計10km
<掛かった費用>\1300
<使用地図>昭文社4万 高尾・陣場  地理院2.5万 大室山/青野原
<地名の異称>月夜野峠→平野峠、牛窪峠、五差路峠

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