ブレハッチとの再会

ショパンコンクールが終わって早3ヶ月が過ぎました。
コンクールの内容については、各雑誌やインターネット等のメディアに数多く取 り上げられ、 更に最近では、入賞者の実況録音のCDが発売されるなどして、 皆様にもコンクールの模様がより身近に感じられたことと思います。
そしてこの1月には入賞者によるガラコンサートが行われました。
ガラコンサートは関東から関西にかけて行われ、 ここで初めてブレハッチの生の演奏を体感された方も多かったと思います。
初めて聴かれた方の印象はいかがだったでしょうか?。
私は東京、横浜で行われた全ての演奏会に足を運び、 ワルシャワ以来、久々にブレハッチと再会することができました。
Katagiri
1月22日に横浜で行われた演奏会では、日本と韓国の入賞者達の演奏にも再び 接することができ、 関本君の大きなスケール、山本君のしなやかさ、イム・ドンヒョク君の鋭敏さな ど、 みなそれそれの長所が、ワルシャワの時より更に増したかのようないい演奏を披 露してくれました。
「果たしてブレハッチはどうだろう?。
」 実はこの3ヶ月間、私の頭の中からブレハッチの演奏が消えた日はなく、 今回再びコンチェルトを聴けるにあたって、 「ワルシャワの時から何か変化はあるだろうか?。
」という、 期待と不安が入り混じった(ただし期待の方が大きかった)そんな心境でした。
思えば私自身、コンクールの本選の時はとてもハラハラしていたため、 なかなか落ち着いて聴くことができなかったのです。
なので今回は、コンサートという場で改めて、じっくりと聴きたいと思っていま した。
オケの調弦が終わり、ブレハッチがステージに登場しました。
笑みを浮かべながらながらお辞儀をするその表情は、とてもリラックスしている 様子でした。
いざ演奏が始まってみると、彼の持ち味でもある柔らかな音色は相変わらず美し く、 表現はワルシャワで聴いた時よりも、一段と深みがあるように感じられました。
ショパンのコンチェルトというと、どうしてもソリストの演奏にのみに注目しが ちですが、 ブレハッチの場合は決して出しゃばらず、それどころかオケのことにまで気を配 って弾いているかのよう。
それはまるで室内楽でも聴いているような、驚くべき調和を披露してくれました 。
決してソロが弱いという訳ではありません。
ごく自然な呼吸で全てに無理が無く、限りなくエレガントな演奏です。
今回このピアノとオケとの完全なる融合を目の当たりにした時、 私にこの曲に対するイメージが変化した瞬間が訪れることとなりました。
オケの間奏の時には、演奏に合わせて指でリズムを刻んだりと、 ブレハッチ自身もよほどコンディションが良かったのだと思います。
楽屋で会った時の明るい表情もそれを物語っていました。
しかし今回の日本ツアーはハードスケジュールです。
1週間に東京から関西方面へと目まぐるしく移動して、連夜の演奏会を行い、 再び東京へ戻って来るという強行軍です。
ポーランドはこちらとは比較にならないくらい寒い所ですから、 寒さはそれほど気にならないと思いますが、 季節柄インフルエンザや風邪などで体調を崩さないかと、それがとても心配でし た。
幸いにもサントリーホールにて、再び素晴らしい演奏を聴くことになり、 どうやら無事に戻って来てくれたようだと、ホッと胸を撫で下ろした次第です。
(ただ、さすがに本人は「少し疲れてる」とは言っていましたが。
Katagiri
最終日のサントリーホールのリサイタルでは、 この大舞台に一人で立っているという感触を噛みしめているような、 あるいは高ぶる気持ちを何とか抑えようとしているかのような、 そんな表情でステージに登場したのが印象的でした。
構成力に富んだ舟歌に始まり、私も大好きなOp.64のワルツ、 そして英雄ポロネーズの名演で終わったプログラムは、正にアッという間でした 。
私も含めて、皆もっと聴きたいに違いありません。
なかなか鳴り止まない拍手に少し照れたような仕草を見せながらも、 アンコールを4曲も弾いてくれたことには、大いに感謝せずにはいられませんで した。
特に3曲目にもかかわらず弾いてくれたOp.10−8の完璧なエチュードと、 4曲目の十八番のドビュッシー「月の光」での、ただひたすら美しい演奏には、 聴きにいらした方々の心に、言い尽くせない程の感動を残してくれたことと思い ます。
楽屋でのブレハッチは、沢山のプレゼントに囲まれながら終始とても明るく接し てくれました。
サントリーホールで弾いた感想を聞いてみると、 「とても音響のいいホールですばらしい。
」と非常に満足そうでした。
再びこのホールでの演奏会が組まれることを望みます。
次に来日するのは、11月の浜松コンクールのオープニング・コンサートだそう です。
まだまだ潜在的な魅力を秘めているブレハッチのことです。
その時には、また少し成長したブレハッチと新たな感動と共に、 再び笑顔で会えることを願っています
Katagiri