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自殺とうつ病  ー 偏見と誤解 −

  年末になると恒例のように今年の交通事故による死者は1万人を超えたとか超えなかったとかいうニュースが流れてきます。警察を筆頭に交通事故を防止するための様々な施策が実施され、国民の関心も決して低くありません。それとは対照的に「自殺」に対する意識は低く、防止のための施策は皆無といってもいいほどお粗末です。皆さん、年間に自殺で命を落とされる人がどの位いるか知っていますか?その数は年々増加しており、4万人に近づきつつあるのです。自殺のイメージは、無責任・自分のことしか考えていない・勇気がなく現実逃避などといったネガティブなものが多いと思います。ここに大きな偏見と誤解があるのです。

  実は、自殺者の7割は「うつ病」といわれているのです。「うつ病」も偏見と誤解が多い病気です。病院で正しい診断と治療を受けている人は「うつ病」患者の1割から2割程度で、実はうつ病なのに、病院に行っていない(多くは本人ですら、うつ病と気づいていない)人は数百万人もいるのです。「うつ病」の怖さは、突発的に自殺に走ることなのです。ですから、早期に「うつ病」を発見し、正しい治療を受けることができれば、年間の自殺者を大幅に減少させることができるのです。

  最近では、マスコミやメディアで「うつ病」を取り上げる機会が増えてきたことはとても良いことです。でも、まだその情報内容は不十分です。まず、最初に解かなければならない偏見と誤解は、うつ病は「精神力が弱い」から起こるのではなく「いい人」だから発症する病気だということです。責任感があり、他人への思いやりが強く、人から頼まれたらイヤと言えない性格の人が罹りやすいのです。「うつ病」は恥じるべき病気ではないのです。元気がなくなり、ふさぎ込むようになると、仕事上のミスが増えてきます。もっとやる気をだせとか頑張れとか叱咤激励してしまうことが少なくありません。「うつ病」の人は本来、責任感が強いからやる気はあるのです。でも、行動に移すことができないのです。そして、何もできない自分を責めているのです。こういう状況で、「君ならできる」「お父さん頑張って」などと励まされたらどうなるでしょうか?これが自殺に追い込む最大の原因なのです。常識や自分の考えを押し付けるような接し方をしてはいけません。あるがままを受け止めた、ゆったり落ち着いた接し方が必要なのです。

  最後に、「うつ病」の簡単な見分け方を教えましょう。難しいことは抜きに、簡単に精度高く見分ける方法です。1.食欲がなくなります。もっと平たく言えば、味覚が落ちてくるので、食事がおいしく感じられなくなります。2.睡眠の質が悪くなります。一番分かり易いのは、夜中に目が覚めてしまう。そのときに理由もなく悲しい気分になる。あるいは十分寝ているはずなのに、疲労が取れない。疲れやすい。3.今まで日常的に行っていたことができなくなった。たとえば、男性では毎朝読んでいた新聞を読まなくなった。女性ではお洒落(化粧や服装)がいいかげんになってきた。そして、決め手となるのが、今のような状況になったのは自分のせいと思っているかどうかです。女房のせいとか、上司のせいとか思っている場合は違う病気も考慮しないといけません。思い出してください。「うつ病」は「いい人」が罹りやすい病気なのです。(Daiski, 2005年6月15日)