まずは、従来のハッピに、どう工夫を凝らすかを、ご相談。
山車や山車丸(提灯)のロゴを生かしたい、江戸勘亭流の情緒ある文字を使いたい、新調するなら従来より一格上のハッピにしたい、羽裏(ハッピの裏地)にはオリジナルの柄を染上げたい・・・とイメージがふくらむ。
それなら、まず、素材は正絹が一番。とりわけ、羽二重や玉糸を織り込んだ紬地などが、男意気を表わすのにぴったり!もちろん、綿より格も上がるし、発色、光沢が断然勝る。第一、軽くって着心地が違うからと、おすすめ。
ハッピの表地は、従来の柄を尊重し、凝るべしは、羽裏の柄。鷹、鯉、富士山など数々のデザインを参考にしながら、老松を決定。この老松を背景に、持参された提灯のロゴを、重ね合わせて配置することに決定。字体に凝るということは、墨字の運筆やその勢い、枯れ具合も拘りたいという意味。
墨黒の濃い部分、薄墨のかすれ方もそっくりにしたいという、思い入れ。じっくり聞き入っていた図案家が、羽裏のデザインの下絵を、目の前で描き上げる。そして染工場へ・・・
すべてオリジナルだから、この図案にそって、一枚づつの型を彫って用意する。柿渋を塗った伊勢型紙に、一色ごとの図案を彫っていく。同じ黒といっても、濃淡、中間色とそれぞれの型を彫ることになったから、型枚数も相当なものに。
この型紙を置き、丸刷毛で染料を挿す。根気のいる手捺染の仕事が続く。
さて、表地と羽裏の双方が染め上がれば、今度は、仕立てに入る。ハッピといえども、こだわりの逸品、絹物であるからには、ミシン縫いではツレが出る。すべて、和裁士による手縫いで、縫い上げる。
撥水加工も施して、汗、汚れなどのアフターケアーも簡単にお引き受けできるよう、最善の配慮をし、ご納品。
お祭り当日、趣向を凝らした飾り付けの山車が引き回される。勇壮華麗なハッピ姿が、町中を深夜まで練り歩き、磐田の大地を熱くしたことは想像に難くない。
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