宮内豊文司法書士事務所
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過払金が発生する仕組み

 サラ金からの借り入れやクレジットカードによるキャッシングの場合、年20〜29%程度の利率(グレーゾーン金利)により利息を請求されています。一方利息制限法という法律がありますが、この法律によりますと、金銭の貸し借りの場合の最高利率は次のように定められていて、これを超えるものは無効と定められています。

利息制限法制限利率
元本が10万円未満年20%
元本が10万円以上100万円未満年18%
元本が100万円以上年15%

 したがって、利息制限法の利率を超えて利息の支払を続けている場合には、本来支払わなくても良い利息(グレーゾーン金利)を支払っていますので、これを元金に順次充当して計算することになりますので、サラ金等が請求している金額と相違(減少)することになります。相当年数支払いを続けた場合には、債務が存在しなくなり、更に返済を続けた場合には、債務が存在しないにもかかわらず、返済を続けたことになり、過払い状態になります。
 私の経験によれば返済金額や利率にもにもよりますが、サラ金等からの借り入れの場合、6〜7年間程度取引している場合(取引期間中は返済及び借り入れを繰り返し、サラ金からの請求額は貸付け限度額近くになっている場合が殆どです)には、債務額が0になり、これ以上返済を継続した場合には払い過ぎになる可能性が高くなると考えてよいでしょう。
 この場合に、サラ金やクレジット業者は、法律上の原因なくに債務者の財産を利得していることになり、これが過払い金が発生する仕組みです。

過払金返還請求の手続

 過払金の返還請求は、過払金額を確定するため、それまでの取引経過を利息制限法制限利率により計算する必要があります。利息制限法制限利率により計算するといっても、サラ金業者との取引経過に関する資料を保管している人は稀ですので、まず第1番目にサラ金業者から、取引履歴を取り寄せることから始めなくてはなりません。
 サラ金業者から、取引履歴を取得した後は、これをパソコンの表計算ソフトなどで計算をして過払金額を確定し、返還を求めることになります。この、過払金返還請求に対して、サラ金業者が任意の返還に応ずれば良いのですが、最近は任意の交渉で返還に応ずるサラ金業者が少なくなってきました。
 そこで、サラ金業者が任意に返還しない場合には、過払金の返還を求めるため「不当利得返還請求」として訴訟を提起することになります。

訴訟提起後の手続き

 訴訟提起後においても、サラ金業者と過払金の返還交渉をし、交渉がまとまれば和解により訴訟は終了することになりますが、返還額や返還時期で折り合いがつかなければ判決を求めることになります。サラ金業者の過払金返還請求の対応は様々ですが、返還請求する者は、坦々と手続きを進め、任意の交渉や訴訟後の和解交渉にこだわる必要はなく、交渉が決裂した場合には判決を求めれば良いと考えています。
 判決後にも支払いをしないサラ金業者も少なからず存在するので、これらの場合には、強制執行を行い債権の満足を得なくてはなりません。強制執行が功を奏しない場合もあるが、そのような場合には、過払金の債権譲渡などの方法も検討しなくてはならないと考えますが、この債権譲渡には、手続きを厳格に行わないと問題が発生するので注意が必要です。この問題については、消費者法ニュース77号(2008/10発行)に、「過払金の債権譲渡」として拙稿を掲載してありますので参照してください。  



Q私は、数年前までサラ金業者と取引をしていましたが、なんとかやり繰りをして返済をして取引を終了しました。現在はサラ金業者との取引がありませんが、今からでも過払金を取り戻すことができますか。

A過払金返還請求ができる仕組み(不当利得が発生する仕組み)は、上記のとおりですので、現在サラ金業者と取引をしているか否かにかかわりなく、過払金の返還請求ができます。ただし、過払金返還請求権は、基本的に10年間行使(請求)しないでいると時効により消滅します。したがって、最終返済日から10年を経過している場合には、時効により消滅している可能性が高くなりますが、そうでない場合には、返還請求が可能です。


Q私は、10年くらい前からサラ金との取引をしてきましたが、半年前にサラ金から連絡があり、借入利率が、それまでの年24%から年18%に下げてもらいました。利率を下げてもらい返済額は減ったのですが、収入が減少して返済が苦しく、それまでと同じように、返済と借入を繰り返しています。過払金の返還請求ができると聞きましたが、私の場合には、既に利率が下がっていますが、請求は可能でしょうか。

A現在の利率が、利息制限法の範囲内だとしても、それまで長期にわたり支払わなくても良い利息を支払ってきた可能性が高いので、過払金返還請求ができる可能性が高いと思われます。半年前に利率が下がったとのことですが、利率が下がった半年前には、既に過払いの状態になっていた可能性が高いので、利率の変更は過払金返還請求に影響しないと思われます。


Q私は2年前までサラ金と取引をしていましたが、なんとか返済を終え現在は取引がありません。そこで、サラ金に対して発生していると思われる、過払金の返還を請求したいのですが、資料はすでに廃棄処分済みで手元に何もありません。このような状態でも、過払金の返還請求は可能でしょうか。

Aサラ金業者の業務を取り締まる法律としては、「貸金業の規制等に関する法律」があり、現在は法律名も変わり「貸金業法」となりました。これらの法律により、サラ金業者は、借主との取引履歴を、最終取引日(完済日)から10年間保存することが定められています(貸金業法施行規則17条)。また、商法19条3項は、「商人は、帳簿閉鎖の時から10年間、その商業帳簿及びその営業に関する重要な資料を保存しなければならない。」と定めています。これらの規定により保存されている取引履歴の開示を受けることになります。従前は、借主からの取引履歴の開示を拒むサラ金業者が少なくありませんでしたが、最高裁がサラ金業者の取引履歴の開示義務を認め、この義務の不履行は不法行為を構成するとの判決(最高裁第三小法廷平成17年7月19日)以降は、取引履歴を開示さないサラ金業者は少数となりました。取引履歴の開示を受けた後は、これを利息制限法制限利率により計算をして過払金を算出して、返還を請求することになります。


Q過払金の取り戻しを行いたいと考えていますが、なるべく費用をかけたくありません。訴訟などの手続きのこともあるようですが専門家に依頼することなく、借主本人でも可能でしょうか。

A過払金の返還請求訴訟を、借主本人が行っているのを稀に裁判所で見かけますので、借主本人が行った場合に、返還される過払金額が満足できるものになっているかが疑問です。法律上返還請求できる金額が100万円であるにもかかわらず、サラ金業者との交渉により100万円の50%や70%程度で和解をしているのではないかと想像するからです。
 過払金の返還請求を行う場合に、「過払金元金」と「過払金に対する利息」を請求することができます。例えば、当事務所では、基本的にこの全額を回収することを目標にしています。但し、訴訟提起前に任意に和解する場合には、紛争の早期解決を考慮して、いくらか減額をして和解をしています。
   このようなことを考慮すれば、借主自身が手続きをするより、専門家に依頼したほうが総合的に多くの満足を得ることができる場合が少なくありません。また、サラ金業者との取引内容によっては、法律的に難しい問題が発生することもありますので、最終的に手続きを依頼するか否かは別にして、一度は専門家に相談することをお勧めします。


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