序章
「おやすみ、パトリック…。」
マリアが放った霊力を込めた弾丸は、パトリックを完全に動けなくしていた。
これにより、ブレント・ファーロング率いるダグラス・スチュワート社の陰謀は幕を閉じた。
帝国華撃団、そして巴里から駆けつけた大神の活躍により、事件は無事に解決した。
一時は華撃団の解体の危機もあったが、何とか乗り越える事が出来た。
新春特別公演の「海神別荘」も、危うい部分があったにせよ無事に千秋楽を迎える事が出来た。
元星組隊長のラチェット・アルタイルも、この時、本当の意味での仲間となることが出来た。
そしてラチェットは紐育へと帰っていった…。
暫くの間、帝都は平和な日々が続いていたが、大久保長安の怨霊が帝都を危機に陥れた。
金色の蒸気は光武を使用できなくするなど、苦戦を強いられたが、
帝都、巴里の二つの華撃団の活躍によって、再び帝都には平和が戻ったのだった。
この時、米田は悟ったのだった。今こそ、若い世代にすべてを託す時だと。
そう思ったからこそ、大神に神刀滅却を渡したのだった。
「世界を旅するって、一体どういうことでしょうか?」
突然の米田の発言に、大神はキョトンとしたままだった。
「言葉どおりの事よ。大神よ、その目でいろいろな世界を見に行ってくんだよ。
いずれ自分の糧となるだろうさ。」
「しかし、事件が解決したばかりの時期に帝都を離れるのは…。」
「つべこべいうな、俺がいいっていってんだからいいんだ。帝都の事は心配すんな。
あいつらを信頼しろって。」
米田は問答無用で大神に命令を押し付けた。
「でも本当に…。」
「いいからいってくんだよ!女々しい事いうんじゃねぇ!」
どうも米田はかなり飲んでいるらしかった…。
この件については、米田は以前から考えていたようで、かなりスムースに事は進んだ。
しかし治まりがつかないのは花組の連中だった。せっかく大神が帝都に帰ってきたのに、
またしても長期に渡って帝都を留守にするのは納得いかないようだった。
大神の根気強い説得に応じて全員が納得したのは、出発の数日前であった。
「みんな、行って来るよ。」
大神は、花組の見送りを背しながら再び旅立っていった。
予定は、華撃団構想の候補地をくまなく回る事だった。とはいえ、候補地は世界中に散らばっている。
全部を回るのは大変な事だった。しかし、世界の色々な地域を旅し、色々な人にふれあう事で、
必ず収穫になるものがある。米田はそう確信していた。
そして大神が世界を回り、再び帝都に帰ってくる時、予期せぬ事件が起こるのであった…。