他。金田一少年の事件簿における所感


*魔犬の森・雪影村・怪奇サーカス・金田一少年の決死行の事件・探偵学園Q雪月花殺人事件のネタバレがあります。

マンガを読んでみて筆者が好きになったのは雪影村の事件だ。金田一少年の事件簿で唯一怪人名が出てこない異色作で、情緒面を前面に押し出した雰囲気重視である。

とにかくあれは雰囲気が良い。大人になりつつある幼馴染達の、悲しい偶然とすれ違いから生まれた悲劇を描いた物語だ。
 死んだのは皆同じ仲良しグループに所属していた少女であり、唯一生き残った悲劇とは関係ない少女も探偵と行動をともにしている。矢の残りの1本、生き残った少女も1人の時の彼女の悲しそうな顔といったら。少年達にもそれぞれドラマがあり、あの話は雰囲気がとても良い。

「被害者に落ち度があるとは言えない。2人とも、特に冬美は後悔している。トリックは足跡ものかよ。むしろ2度目のにはトリックはない。てゆうか避妊しなかった犯人が悪いだろう。それにあの自然現象は立派に研究対象だ」

などの突っ込みはありますが、あれは情緒面に重きを置いた異色作だから良いんです。

それに妊娠中で情緒不安定の状態であんなこと言われたらそりゃ自殺しかねんと思うが・・・。筆者は神話関係以外におけるああいうのには抵抗というか嫌悪感すらあるので(だから遠野は異常者扱いした)、自殺するほど追い詰められる気持ちは少し解る。
 でも被害者2人は妊娠の事実は知らなかったわけだから、あれは悲しい偶然が重なった哀愁劇という面を前に押し出しているのだろう。

「犯人は女を孕ませた挙句自殺に追い込み、更に自分を好いていた女2人を殺した鬼畜野郎だ。むしろそもそも本当に妊娠していたかは解らないだろうに」

などど言われても反論できませんし、むしろその通りです。それでも私にとっては金田一シリーズの中では一番の作品だ。

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怪奇サーカスの殺人

この事件の最後で金田一が「お前1人で罪被って自殺して姉ちゃん助けるつもりだったんだろーが、そんなに警察も世間も甘くねぇっつーの!」といってまだ12歳の犯人を慰める場面があった。それじゃあ私は甘い世間の範疇に入るのだろうか。

この事件の14歳の姉の方は実行犯としては具体的に何をやったんだよ。実行犯は全部弟で姉は環境整えだけかと思ってた。
 「大の大人を小学生が1人で殺せるわけないから共犯者が・・・」という理由で姉も犯人らしいが、被害者はスタントマン経験のあるピエロだろう?女子中学生の助けが合ってもあんな殺し方できるかね。

金田一に限らず探偵物ではよく言われるが、「これはいくら自白してても裁判に持ち込んだら証拠不十分で無罪だろうな〜。いやむしろ不起訴だ」という犯人は多い。吸血鬼伝説の犯人の証拠なんでショボすぎて裁判を待たずに即日釈放レベルじゃないか?むしろよく逮捕できたよなと思う。

かといって下手に証拠があると「日本の警察や鑑識をなめるな!」と言われるから大変だ。

高遠や冥王星もね。本来なら奇想天外なトリックではなくて物的証拠を完璧に無くして鑑識の目をごまかす方法を提示したほうが良いんだろうなあ・・・。それじゃあマンガにならんが。

逆に恐ろしいことも言える。探偵が大勢いて探偵が捜査に関わるのが日常的な話だった探偵学園Q。あれでは探偵が先走って危うく冤罪になりそうだった場面が多すぎて寒気がした。あの世界は絶対に冤罪多発してると思うぞ。

特に主人公5人の誤認推理で父親が追い詰められて死んだのに爽やかに終わっていた事件は本気でどうかと思った。右近はヌボーっとしているのは演技で、本当ははらわた煮えくり返っていると思うぞ。

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金田一少年の決死行

金田一少年の事件簿最終回でオールキャストといっても、個人的には一番好きな犯人がでてくる事件だ。

しかし最初の高遠に助けられたときに犯人は「俺」と連発していたから、麗晶や胡蝶は無いと決まりそうなものだが。
 となると男の22,3歳は健一しかいない。でもあんな生活していたら健一みたいにまともに成長できそうにないし・・・。という事で、わりと犯人を特定するのは簡単かと。

ていうか健一や麗晶や胡蝶の影薄すぎて、成長不良説を思いつかないと「こんな少ない描写で犯人わかるか〜!」と叫びたくなるだろうな。

一人称に男女がない外国語版なら、麗晶や胡蝶犯人説をまじめに考える人がいるかもね。
 でも美人が生きたネズミをかじる場面なんて想像したくない人が多いかもしれない。でも筆者はジャンプで犬のマネをしていたヒステリアが女だった時点で推理マンガの女性に期待は抱いていない。

ちなみに一番ショックだった犯人は千家。ダイイングメッセージは簡単に解けてしまったのだが、千家以外の数字苗字の容疑者ではないかと思っていた。実は萬屋が生きていたとか。

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学園七不思議と天草伝説

学園七不思議の犯人は異色だ。犯行理由は隠蔽。しかも何十年にも及ぶ隠蔽だ。この犯人は個人的に「一番身につつまされる犯人」だ。10年前にアニメを見たときから、あの犯人の人生を思うと悲しかった。

あんな白骨なんてさっさと掘り出して砕いて川に捨ててしまえばよかったのに。あの犯人に全てを押し付けた製薬会社の人間が憎かった。彼に家族はいたのだろうか。ずっとビクビクするだけの生活だったのだろうか。

上の方で雪影村が悲しいと書いたが、天草財宝伝説も悲しい。被害者に落ち度が何一つない話だったから。
 あの被害者達は天草財宝になると人格が変わるよう教育されていたんだろうか、でも伯父伯母みたいに殺し合いをするほど強欲ではなかっただろうに。

蔵元醍醐も子供が孫を残して早死にした場合の事も考えておけよ。おかげで5人姉弟の子供は皆死んで婿は殺人犯で、関係ないけど唯一の孫は重病で会社倒産で。

もうあの会社倒産と犯人の独白のシーンでぐわっときた。天草財宝の独白シーンは若いときはそうでもないが年を取ったらクル性質らしい。ということは筆者は年だろうか(まだ学生だが)

金田一少年の事件簿は突っ込みを入れようとしたら切りがない。週刊連載だから仕方ないかもしれないが、特に気になったことだけ書きました。
 といっても後半は殆ど感想ですがね。


最後に━━「金田一少年の事件簿が本当の最終回を迎えるのは、金田一少年にとって大切な人が惨殺されたときだ」。そう言われているのを見たことがある。
 佐木1号の死亡でもあの程度だったからハードルは高そうだが、まあ理想は美雪・両親・フミちゃんクラスか。殺され方によっては剣持・明智・佐木2号・玲香ちゃん・草太・いつきさん・ミス研の方々でもまあ何とか。

「彼らが惨殺され、金田一少年が復讐鬼と化す。そこに高遠が現れ何事かささやく・・・『これで貴方も、今まで対峙してきた方々と一緒ですね』みたいな意味」こうなったら金田一少年も真の最終回だろう。美雪犯人の話を書くより後戻りできない。

こういった展開は個人的には好きだが、ただ少々古いな。30年位前のまだ規制がゆるかった頃にありそうな救えない系の最終回だ。

(2006.07.16)



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