高校までの生物レベルでわかる、双子(双生児)に関する雑学コラム


今まで筆者が書いてきたコラムとはうって変わりますが、私は今までも何回か特にゲーム系で双子について書いてきました。ですから双子に関する覚え書きのような意味でこのコラムを作る気になりました。

意外と双生児に関して誤解されている人って多いらしいんですよね。と言ってもこのコラムも高校までの生物レベルの話題しか出しませんが。

数年前に二卵性双生児の妹さんがいる女性が書かれた双子に関するコラムを読んだのですが、まあその女性は今まで散々誤解されてきたらしいです。
 それだけ知らない人が多いんだと言う事もそうですが、その女性が書かれたコラムも、実体験に基づく話はさすがですが生物学的な話になると“?”という記述が多かったのです。

まずは手元の電子辞書で双生児について検索してみました。百科事典マイペディアの記述が詳しかったですね。以下引用です。

一回の分娩で2子が生まれるとき、これを双生児あるいは<ふたご>という。人間では約100の出産に1回くらいの割合で生まれる。別の2卵が受精して生ずる場合(二卵性双生児)と、最初は1卵のものが発展途上でなんらかの原因で二つに分かれて成長する場合(一卵性双生児)とがある。後者は遺伝子が同一であるため、性は必ず同じで形質も互いによく似る。

引用終わり。

まずは一卵性双生児については彼らは受精卵の段階までは同一の存在でした。しかし胎芽や胎児になったり誕生した後はもちろん別々の存在です。

つまり遺伝子レベルで決定する情報は同一ですが、胎芽以降の環境要因は別々なのです。ですから指紋や手のひらの静脈などの情報は胎児の時に決まるので別々です。生体情報を使ったセキュリティもそういったものを使えば知らない双子に侵入される心配はありませんね。

ちなみに人間のひととなりは遺伝的要因によって決定するのか、それとも環境的要因によって決定するのかという議題があります。これはまだ解明されていませんが、はっきり言えるのはどちらも重要であり複雑に絡み合っているということです。

これはどちらかというとクローン技術の方でよく出てくる話題ですかね。クローンについても誤解している人はかなり多いですが、手に余るのでここでは扱いません。

1つだけ言えるのは、ある人物(偉人でも芸術家でも独裁者でも大切な人でも)のクローンをつくった所で、その人物が復活するわけではありませんよ。全く同じ遺伝情報を持つ一卵性双生児が別の人間であるように、クローンも別の人間ですよ。

次は二卵性双生児についてです。

彼らはただ同時に生まれたと言うだけのきょうだい(兄弟・姉妹・兄妹・姉弟)です。同性の場合もあれば異性の場合もあります。性別は遺伝子レベルで決まる情報です。

異性の双子は(兄妹・姉弟)はほぼ100%二卵性です(注1)

更に言うなら、フリー百科事典ウィキペディア「双生児」の項目によると http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8F%8C%E7%94%9F%E5%85%90#_note-11

「男女の二卵性双生児(全双生児のうち、約4割を占める)」
だそうなので異性の双子も別にそうムッチャレアな存在と言うわけではないでしょう。日本では二卵性双生児出生率が低いので必ずしもこの割合とは限らないそうですが、まあ生徒数が1000人を超える学校なら2,3組くらいはいるんじゃありません?

ただ双子に関する認識は人によって随分異なるようです。極端な事例を出します。

パターン1:「オレさあ、小学校のときにすっごいソックリな男女の双子がいたんだよ。あれが一卵性双生児って奴だろうね。本当にソックリだった」

パターン2:「何を言うか。男女の双子なら絶対二卵性だ。だから似ているわけがない。マンガやゲームなどでやたらそっくりな男女双子が異様に数多く出てくるがあれはおかしい!」

パターン1が間違っている事は今更指摘する事もないでしょう。(注1)

次はパターンその2ですが、まず数についてはそうムッチャレアな存在と言うわけではないとは書きました。問題は「だから似ているわけがない」です。それはケースバイケースですね。

二卵性双生児はただ同時に生まれたと言うだけのきょうだい(兄弟・姉妹・兄妹・姉弟)です。しかし逆に言えば実のきょうだいでもあるんです。普通の年子や2歳違いのきょうだいでも、それこそ“ふたごのようにそっくり”な人達もいるはずです。

私の経験で言うなら、高校のときに知り合いだった男の子には2歳年上のお姉さんがいたんです。お姉さんも同じ高校だったので姉弟が3年生と1年生だったときに会ったことがあるんですが、これがまあそっくりでした。ブレザー制服の学校だったのとお姉さんがベリーショートだったのもあるでしょうが。

更には姉弟は趣味が共通していて本やCDは共有していたそうです。TVのチャンネル争いは15年間やった事すらないとか。

2歳違いの高校生でこれですから、小学生つまり第二次性徴期前で同い年の実のきょうだいなら“ふたごのようにそっくり”な兄妹・姉弟がいても別段非科学的でもないでしょう。繰り返しますが、普通のきょうだい(兄弟・姉妹・兄妹・姉弟)でも赤の他人と比べれば遺伝子は似通っているんですよ。

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注1:男女の一卵性双生児について。

正確に言えばありえない訳ではないです。ああ、落ち着いてください。「じゃあ、大好きなあのキャラの一卵性の妹になって可愛がられるドリーム小説を書いても良いのね!」とか言い出さないで下さい。

最初に書いた二卵性双生児の妹さんがいる女性が書かれた双子に関するコラムでは男女の一卵性双生児についてこう書いてありました。

A.1つの卵子に2つの精子が同時に着床した場合(これに行数を割いていた)

B.染色体の異常で・・・(「ああ、これ以上は可哀想で書けない。と2,3行だけ)

ちょっと待ってください。A.って何ですか。三倍体ですか!?んな植物じゃ有るまいし。B.よりA.の方がよっぽど可哀想ですよ!

ちなみに「一卵性双生児はすべからくA.のパターンで誕生する」と勘違いしている高校生が多いと嘆いているサイトがありました。思ったよりそういう人多いのか?

ええと、まずそもそも受精卵とは何なのかの説明から入らなくてはいけないのか?難しいなオイ。

もう一度一卵性双生児の説明から入りますが、1卵のものが発展途上でなんらかの原因で二つに分かれて成長する場合をさします。つまり受精卵の段階では彼らは1卵だったわけです。ちなみに何故1卵のものが二つに分かれて成長するかの原因はよく解っていません。

B.の染色体の異常は実際に起こっているそうです。それでも全世界に数例しかないと聞きました。詳しい事は解りませんしこれ以上深入りするつもりもありません。少なくともドリーム小説のヒロインには止めといたほうが良いでしょう。

もう一度A.に戻りますが、これはそもそも生存すら困難です。というより過受精した卵子でつつがなく双子になるってどういう・・・。まあいいや。

ちなみにウィキペディアに書いてあったのですが、半一卵性双生児という理論上でその存在が指摘されているものがあるそうです。これならばつつがなく異性双生児になれます。

どういう事かというと排卵された一卵が受精前に分裂して二卵になるという理論です。もちろん精子は別々なので75%のDNAを共有している事になります。ただし検証が困難であることに加え、そもそも存在が稀であるため確認されたことはないそうです。理論上の存在です。

結論から言うなら、創作物でそっくりな異性双生児を出したいなら普通に出せば良いでしょう。無理に極めて稀なケースを出さないでも“一卵性の如く似ている”異性双生児を出せばそれで良いはずです。何度も書きますが二卵性であっても実の兄妹・姉弟なんですよ。

例:「マリサちゃんはマリオの双子の姉ちゃんなんだってな。いや〜まるで一卵性みたいにソックリだねえ〜」
 例2:「王国の滅亡により逃亡生活を続けるユミナ王女とユベロ王子は、12歳(14歳説も)であるが、あたかも一卵性の如き容貌を持った双生児の姉弟であった」

更に言うなら同性・異性問わず、全く似ていない双生児を出しても良いでしょう。現実においても実のきょうだいでも全然似ていない場合ももちろん有るのですから。“双子”と言われて何か特別な存在だと身構えて考えると勘違いしやすいのかもしれませんが、実のきょうだいで“似ているのはおかしい”“似ていないのはおかしい”と議論するのは変でしょう。ケースバイケースです。

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最後に、マンガやゲームにおける双子の扱いについて少し。

創作の世界において、一回の分娩で2人のキャラが産まれるのが望ましい場合があります。ストーリー展開上、母親役の女性が一回しか分娩の機会がない場合などですね。父親役が既に死んでいる場合が特に顕著でしょう。

あるいは学園モノや学生スポーツマンガなど、キャラクターの殆どが同年代の作品では年子や双子の割合は増えるでしょう。

もしくは双生児は同じ年なので“同格である”というキャラ性を表せる事も出来ます。もちろんただ単にキャラ立ての一部である場合もあるでしょう。

更には時代をさかのぼれば神話や伝説の世界では二項対立の考え方や双生児そのものを重要視する見方もあります。民間伝承や俗説などでは差別的な意味合いも含めて色々有ったみたいです。

何が言いたいかというと、一卵性異性双生児みたいに明確に医学的に間違っているとか、かつての俗信みたいに差別観バリバリとかでない限り別にそう目くじらを立てることもないでしょう。キャラ立ての一部・演出の一種です。

問題はマンガやゲームを本気にする人々やそもそも受精卵がどういったものかを理解しているのかすら怪しい人々、現実の双生児に失礼な事をいう人々だと思いますよ。


あとがき━━もっとズバッと斬り込む様な論調にしたかったが、色んな人達が少しずつ間違っている状態なので論述の焦点を合わせられなかった。

かくいう私も合っているのかどうか怪しい。更に言うならこれはあくまで「高校生物レベル」のコラムなのでクローンや染色体異常などには切り込まなかった。本題からズレてしまうし、それだけで紙面が付きかねなかったから。

これからも特にゲーム関係で異性双生児について書く予定があるので一旦確認の意味でも書いてみたかったことだ。書けて良かった。

参考:

電子辞書内の百科事典マイペディア内「双生児」の項目

フリー百科事典ウィキペディア内「双生児」の項目

URL:http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8F%8C%E7%94%9F%E5%85%90#_note-11

参照年月日:2007年6月12日

(2007.06.15)

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