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富士宮市の脳神経外科、外科、内科クリニック。加藤脳神経外科です。

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健康コラムHealth Column

健康コラム第11回 認知症について知っておくべきこと

1)認知症とはどんな病気なのか?

認知症というのは認知機能低下によって日常生活に支障をきたす症状を指します。
具体的には物忘れが激しく同じことを何度も繰り返したり、他人の名前と顔が一致しなかったり、今何をしようとしたのかを忘れてしまう。こらえ性がなくなって怒りやすくなる。等の症状があります。
簡単に言うと、日常生活において、他人とのコミュニュケーションを取ることが難しくなってしまうということです。症状が進むと摂食や排泄も自分自身では出来なくなるので、24時間の介護が必要になる場合も珍しくはありません。また似たような症状はうつ病によっても引き起こされるので、うつ病で無いかどうかを確認してから専門医により認知症と診断されます。

2)認知症はどのくらいの確率で発症するのか?

今、日本人の高齢者の7人に1人が認知症と言われています。社会全体の高齢化進行によってこの数値は増えることが予測されています。具体的には65歳以上の高齢者の15%はなんらかの認知症であり、15%は認知症予備軍であるMCI(Mild Congnitive Imperiment)とよばれる状態であると言われています。合わせて30%くらいの確立で認知症又はその予備軍であると言えます。

3)認知症と物忘れの違い

認知症はしばしば物忘れと混同されやすいですが、症状はかなり異なっています。

@認知症では、記憶が抜け落ちたようにすっぽりと忘れてしまう。
A認知症では忘れてしまったことに対しての自覚がない。
B認知症では物がなくなった時に人のせいにする傾向が強くなる。
C認知症では物忘れの度合いが日常生活において支障が出てくる
D認知症では物忘れの頻度が急速に進む。


物忘れと認知症では上記のような症状の違いが出てきます。

4)認知症の原因とは

認知症は様々な要因によって引き起こされます、その結果脳の細胞が死滅、もしくはアミロイドと呼ばれるタンパク質が蓄積されることによる機能不全を起こし、脳の機能が徐々に悪くなっていきます。代表的な認知症の種類として次のようなものがあります。

@アルツハイマー型認知症
Aレビー小体型認知症
B脳血管性認知症
CFTLD(前頭側頭葉変性症)


@アルツハイマー型認知症は脳神経にアミロイドβと呼ばれるタンパク質が集積することで、脳神経の線維化を起こして脳全体が萎縮を起こす。その結果脳の神経伝達物質が充分に作用せずに認知障害を起こしていると考えられている。尚本当の原因は未だ不明。日本では一番多い認知症形です。
Aレビー小体型認知症は大脳皮質の神経細胞にレビー小体と呼ばれる物質封入されるのでそう呼ばれています。レビー小体の中身はアルファシヌクレインと呼ばれるタンパク質で、アルツハイマー病と同じように神経伝達物質を阻害することで認知症の症状が見られます。アルツハイマーとの違いはパーキンソン症状とよばれる運動障害の発生にあります。パーキンソン症状とは神経伝達物質のドーパミンの量が不足するため手の震え、歩行障害、歯車症状と呼ばれる筋肉のこわばり等、典型的な症状が多く見られます。アルツハイマーと同じく神経伝達物質の作用に問題があるので、治療の仕方も似通っています。日本ではアルツハイマー病についで多い認知症です。
B脳血管性認知症は脳の血管が詰まる脳梗塞によって引き起こされる認知症です。生活習慣や食生活などで動脈硬化が進むと、脳の細い動脈が詰まって脳梗塞を起こします。梗塞を起こした先の脳細胞は死滅してしまいますが、梗塞の範囲が狭いため本人に自覚症状が無く、次々に梗塞が起きることで徐々に認知症の症状が進行します。原因ははっきりしているので、動脈硬化に対するコントロールを欠かさずに行うことが大切です。
CFTLD(前頭側頭葉変性症)は@、Aと同様に大脳皮質にタンパク質(リン酸化タウ蛋白)が蓄積することで前頭葉から側頭葉にかけて大きく萎縮が見られることが特徴です。FTLDの場合は症状が特徴的で、人が変わったように怒りやすくなったり、万引きをしたり、社交性が無くなったり、子供っぽくなったりします。これは元来ピック病と呼ばれていたものと同じもので、抑制を司る前頭葉が萎縮することで感情の抑制が効かなくなるためです。
これ以外にも認知症にはいくつかの種類がありますが、必ずしも典型例に当てはまるわけではなく、アルツハイマー型認知症でも前頭葉の萎縮によってFTLDの症状を合併することもあり、レビー小体型でも同様のケースは多いです。現在のところ完治させる治療方法が無いので、認知症の症状を抑制しつつ進行を抑える薬を使用するのが一般的な治療となります。

5)認知症の症状とは

認知症によって生じる症状は、中核症状と周辺症状の2つに分けられます。中核症状というのは認知症の進行によって、記憶障害、見当識障害、判断力障害、感情の欠如、実行障害といった認知症による直接的な症状が挙げられます。周辺症状とは中核症状による脳の機能低下が原因となり、患者本人の性格と相まっておこる症状です。例えば認知症であることを自覚して、うつ病を併発したり、怒りっぽい人が脳の抑制が効かなくなって介護者に暴力を振るったり、置き忘れを認識できないので、誰かに取られたと被害妄想をもったり、あげくにはところかまわず徘徊して、万引きをしてしまうなど多岐にわたります。
特にこの周辺症状の進行は介護者や家族にとって大きな負担になりますので、中核症状の進行を遅らせる薬を投与しつつ、周辺症状を抑えるために症状に応じた適切なケアを行う必要があります。

6)認知症の診断について

認知症を診断するためには現在では主に2つの手段を組み合わせて行います。

@問診検査
A画像検査

@の問診検査は患者に対して簡単なテストを行い、そのスコアから認知症であるかどうかを診断する方法です。主なものに長谷川式認知症スケール、三宅式記銘力検査、時計描写テストなどがあります。
Aの画像検査はCTやMRIを使用して脳全体をスキャンし、脳の特定の場所が萎縮していないかどうかを調べる検査です。特に記憶を司る海馬と呼ばれる部位は認知症の早期から萎縮する傾向があるので、問診と合わせてかなり正確に認知症を診断することができます。MRIであればVSRADと呼ばれるソフトウェアを使用することで、健常者のMRIと患者のMRIを比較して点数化するので客観的な診断を行うことが出来ます。さらにMRIは血液の流れがわかるので、血の巡りの悪いところからどこが機能低下しているかも推測することが出来ます。

7)認知症の治療について

アルツハイマー型やレビー小体型認知症は根本的に治す方法は今のところは残念ながらありません。しかし症状の進行を遅らせる薬は何種類かあります。主なものは次の通りです。

@ドネペジル塩酸塩(アリセプト) コリンエステラーゼ阻害薬
A
リバスチグミン(リバスタッチ、イクセロン) コリンエステラーゼ阻害薬
B塩酸メマンチン(メマリー) NMDA受容体拮抗薬
Cガランタミン(レミニール) コリンエステラーゼ阻害薬

@のドネペジル塩酸塩は神経伝達物質アセチルコリンを分解するコリンエステラーゼを阻害することで記憶力の低下を防ぐ薬でアルツハイマーに効果があります。Aのリバスチグミンも同様にコリンエステラーゼを阻害しますが、コリンエステラーゼとブチルコリンエステラーゼの2種類を阻害できるので、効果はドネペジルよりも高いと言われています。またこの薬は飲み薬ではなく、貼り薬なので介護者が使いやすいという利点もあります。Bの塩酸メマンチンは神経の過剰な興奮を抑えて脳細胞の死滅を防ぐ作用があります。この薬は他の薬剤と効き方が異なるので、組み合わせて使用できるのが特徴です。認知症が進行して@Aの薬剤だけでは効果が望めない場合に併用することで症状の進行を抑えることが出来ます。
Cのガランタミンは昔から使われている薬剤でコリンエステラーゼ阻害作用があるのは@Aと同じです。@Aに比べると効果が悪いので、初期のアルツハイマー型の治療に使われる他、脳血管の動脈硬化が原因の脳血管性認知症には効果があるのでよく使用されます。この薬は他の薬剤と比べると副作用が少ないので他の薬剤で副作用が出てしまった人にも投与できるのが特徴です。
これらの薬剤を最初は少量で、徐々に量を増やして使用するのが一般的に認知症の治療となります。また副作用が出てしまったら量を減らして様子を見ながらコントロールします。中核症状の進行に伴い周辺症状も悪化するので、やはり症状に応じて鎮静剤や抗鬱剤、睡眠導入剤を投与することで、本人と介護者に一番負担の少ない状態を目指してコントロールしなければなりません。

8)認知症の包括的なケア

認知症は本人の認知できる空間が徐々に狭くなってしまう病気です。薬は対症療法であり症状を抑える効果しかないのが現状です。ですが骨折に対してリハビリを行うように、認知症に対しても脳のリハビリを行うことで患者の残りの人生が有意義なものになります。リハビリといっても特別な事をするわけでは無く、日常生活を本人の出来る範囲で続けることがリハビリとなります。脳に刺激が少ないと脳の血流は低下し、症状はどんどん進行してしまいます。ですが日々の家事をこなすことで、脳の血流が保たれ、認知症の進行を遅らせることが出来るのです。もちろん認知症のため1人では生活難しくなるので、介護の人が本人の認識できない部分を補ってあげなければなりません。認知症の患者同士が共同生活を行う、認知症対応型グループホームと呼ばれる施設が最も認知症ケアには最適ですが、施設の数が充分ではありません。在宅、または通所だけで後は家族がケアを行わなければならない例も沢山あります。介護施設に入居しても患者本人の尊厳とは関係なく、日常生活を制限され、他者とのコミュニュケーションが無いことで一気に症状が進んで寝たきりになることも珍しくありません。
大切なことは、医療機関、介護施設、そして家族が患者本人の現状を共有して、その時々にあったケアを選択することです。治療薬の用量によっても、日中の作業量、他人とのコミュニュケーション量によっても、ささいな事で患者の状態は変化してしまいます。常にコントロールを良好に保つために、ケアマネジャーを中心に連携して、包括的な認知症ケアを目指していきましょう。


参考URL:政府広報オンライン(認知症について)

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