ここにある鳳凰の絵は、当山十八世道契老師が画かれた、本堂水引き(内陣入口正面の横に張られた幕状のもののこと)の下絵を縮尺したものです。道契老師は、苦労されて大正の本堂を再建されました。最後に丸柱等を飾る柱巻や水引きを自分の思いを込めた図柄で織り飾り、再建の総仕上げにしたいと、思われていたと推測します。しかしそれも実現しないまま、又私の代で大正再建の本堂を、壊すこととなってしまいました。
そんな事を思い、新本堂の唐狭間(欄間)の鳳凰の一つを、道契老師の下絵を参考にする様、それとなく番匠屋さんにお願いしました。新本堂の唐狭間には実現しませんでしたが、しかし、番匠屋さんが、道契老師の下絵の鳳凰を欄間に彫り、これを寄進して下さいました。現在、大玄関客殿の部屋の長押の上に飾ってあります。
大玄関客殿の部屋に飾ってある鳳凰の彫物 |
本堂には唐狭間(欄間)があり、水引きや柱巻きも不必要で、又彫り物の羽根が折れやすく、道契老師の願いの様に、本堂の水引きや柱巻きを作ることが出来ません。しかし、約70年ぶりに番匠屋さんの計らいで、下絵が生かされました。道契老師のみならず私としても念願が図らずもかない、責任の一端を果した様な気持でおります。
(平成の甘露寺本堂建設記録−本堂建設事業の主経緯とその内容に関する報告
平成10年2月発行 末光愛正記より)
柱巻が施された旧本堂 (大間・内陣) |
唐狭間が極楽浄土を表す新本堂 (大間・内陣) |