2005年3月3日 

「安心して医療が受けられるように、国民健康保険料の値上げをしないことを求める請願」趣旨説明

 ただいま上程されました請願第一号「安心して医療が受けられるように、国民健康保険料の値上げをしないことを求める請願」の紹介議員を代表いたしまして趣旨説明を行います。

 この請願は、「軍事費を削って、くらしと福祉・教育の充実を」国民大運動浜松実行委員会が提出をいたしました。この会はくらし、福祉、教育、環境、まちづくり、平和とあらゆる分野から市民の声を持ち寄り、浜松市当局と毎年懇談の場を持ち続けてきました。昨年で22回目を迎え、市民の切実な要望実現を目指して活動を続けている会であります。

 今回の国保料を値上げしないでほしいという切実な思いのこもった署名は、請願文書表の8858筆に今日までの105筆が加わり全体で8963筆になりました。

 浜松市国民健康保険運営協議会が市長の諮問に応え、1月14日に答申を出してからの取り組みですので、わずか6週間の間に9千人にちかい方からの「国保料を値上げしないで欲しい」という、悲鳴にも似た思いがここに積み上げられたことになります。

 国保をめぐる全国の状況をみてみますと、国保加入世帯は過去5年間、毎年およそ80万世帯ずつ増加しています。

 これは、高齢化の進行と共に、高齢退職者の国保加入が増え、失業やリストラで社会保険から国保への移動を余儀なくされたり、企業の中でも社会保険に加入し続けることが大変になり、従業員を国保加入に切り替えたりという状況の中で生まれています。国保加入者が増えても高い国保料が支払えず滞納世帯が増加をしています。

 国保滞納世帯数は461万世帯、加入世帯比18,9%となり、資格証明書の発行は1年で4万世帯増加し、過去最高の298507世帯とほぼ30万世帯に達してしまいました。

 国の「三位一体改革」の一環として国民健康保険への国庫補助負担金がおよそ5500億円削減され、平成18年度にはさらにおよそ1400億円が減額され、国保への国庫負担削減額は約7000億円になる見通しです。
 
 同額が都道府県に税源移譲されることから、市町村の補助金そのものに大きな変化はないとされていますが、国庫負の担削減で国保に対する国の責任を大幅に後退させるものになります。
 
 厚生労働省が平成18年にも国会への提出をねらう「医療保険制度改革法案」との関係からいえば、「基本方針」として掲げている「医療保険の都道府県単位での統合・再編」が課題のひとつとなっており、これについては注意深く見ていかなければなりません。

 さて、本市の国保をめぐる状況と今回の請願項目の内容について述べます。

 請願の第一項は「国民健康保険料の値上げをしないこと」であります。昨年度に続き連続の値上げに、「もうこれ以上の負担には耐えられない」「年金が減らされ介護保険料が値上げされ、その上国保料までも値上げではとてもやっていけない」「医者に掛かっているので、国保料はどんな無理をしても払ってきたけれど、また値上げでは払えなくなるかもしれない」これらの声は、街頭で署名をお願いしている時に市民の皆さんから直接寄せられた生の声です。

 ここに現れているように多くの国保加入者はまじめに国保料を払い続けてきました。しかし、あまりにも高い国保料は払いたくても払えない状況を生み出しています。

 本市では、全世帯の46%にあたる104505世帯が国保に加入しています。

 加入世帯の所得状況をみてみますと加入者全体の約4分の1に近い24.2%の世帯は所得がありません。所得なしから所得200万円までの世帯でなんと69%、所得300万円未満までの世帯で81%を占めています。

 国保加入世帯の1世帯あたりの平均所得は202万円であることも国保運協の資料で示されました。

 今回提案されている値上げ案を見てみますと、所得割額、資産割額はかろうじて据え置かれましたが、医療分で、加入者一人について支払う均等割額、加入世帯について支払う平等割額ともに1000円が値上げされ、介護分では均等割額が1000円、平等割額が1500円の値上げ案になっています。

 国保運営協議会の資料でモデルケースとして夫婦2人、子ども2人の例がでていますが、所得が192万円で市民税額7700円、固定資産税10万円の世帯でも5000円の値上げになり、国保料が23万5500円になります。応益割合の負担が増えたことで低所得者に重く負担のかかる値上げ案になっています。

 本市の滞納状況をみてみますと、 国保加入世帯の大半が低所得であることから、高い国保料が原因で滞納する世帯が増えていることがわかります。平成15年度の滞納世帯は国保加入世帯の5世帯に1世帯に当る20,25%、21000世帯、金額では36億8700万円にのぼっています。

 滞納世帯の内訳をみてみますと、所得なし世帯が38.8%、所得100万円未満世帯で53.8%になっており、本当に所得が低く払えない状況であることがわかります。

 500万円を超える所得がありながら滞納をしている世帯はわずか4.8%です。

 国保料の値上げがされれば今まで何とか頑張って国保料を支払っていた低所得者の世帯がいよいよ支払えず、滞納が今以上に増えてくると予想されます。この悪循環を断つためにも新たな負担を強いる値上げを止めるべきではないでしょうか。

 中核市35市の平成15年度一般会計から国保会計への1人あたりの繰入額では、平均で19,913円になっていますが、本市はその半分以下の8678円にとどまり中核市の中で最下位になっています。

 せめて、一般会計からの繰入れを中核市並にして、今回の値上げをすべきでないと考えます。

 請願項目の2つ目は滞納世帯に交付される「資格証明書」についてであります。

 この資格証明書は医療を受ける機会を著しく損なうものであり、国保加入者の命と健康を守るために国民皆保険として設立された国民健康保険の精神に反するものであり、事実上の保険証取り上げである資格証明書の交付はしないでほしいという内容です。

 政府は2000年から国保料の滞納者について短期保険証や資格証明書の交付を義務づけることとしましたが、これはあくまでも保険者である地方自治体の裁量にまかされている部分が多く、現在でも短期証も資格証も1通も交付していない自治体があります。

 県内では富士宮市、富士市、下田市、そして、合併予定の12市町村では、細江町、引佐町、三ケ日町、龍山村は短期証も資格証明書も発行していません。

 また、浜松市、浜北市、春野町を除く9つの自治体では短期証の発行はあるものの、資格証の発行はしていません。

 きめ細やかな対応で滞納世帯の状況を確認し、特別な事情に当てはまる場合は交付しないことになっているからです。政府はこの罰則的措置を導入した時、資格証明書の交付については悪質な滞納者に限ると説明していたはずです。

 本市で平成15年度に資格証明書を交付された427世帯のうち32世帯が医療を受けました。医療機関の窓口で10割負担を承知の上での受診だったでしょうか?どうしようもなくなるところまで我慢して、我慢して、いよいよ我慢できずに病院に出かけたと思われます。

 県内では旧清水市や旧静岡市で資格証明書であることから、受診が遅れ、手遅れで亡くなるという悲しい現実がありましたが、本市でこのようなことを起こさないためにも滞納世帯の実情把握に努め、被保険者が医療を受ける権利を保障している国保法の第2条と第36条にのっとり、事実上の保険証の取り上げである資格証明書の交付は一日も早くやめるべきと考えます。
 
 さて、最後の請願項目は減免制度の拡充についてです。

 ここに名古屋市の「国民健康保険のてびき」があります。本市で発行している「国保のしおり」とほぼ同じような内容が掲載されていますが大きく違うところは、「保険料の減額、減免をうけるには」と保険料の減免制度の内容が詳しく掲載されてるところです。

 所得の申告をすることで、基準以下であれば7割、5割、3割の減額がされることが詳しく書かれています。平成15年度に法定減免を受けた世帯は15万6千世帯にのぼっています。

 また、申請減免では、減免の内容も要件別に記載されており、大変進んだ内容になっていることに驚きました。

 そのうちの一つを紹介しますと、市県民税の所得割を課されない被保険者のうち、次の要件に該当する方として、身体障害者手帳の交付を受けている方、65歳以上の老年者の方、寡婦、寡夫の方となっており、均等割り額の3割が減免されます。このように国保加入者にとって大変分かりやすく、幅広く国保料の減免の対象が広がっていることから平成15年度では、14万5千世帯の申請減免がありました。

 減免が進むことで滞納者が減り、滞納世帯の割合は17.4%と政令市の平均である19.6%を下回り、資格証明書の発行はたった8通となっています。

 減免制度を広く市民に周知させ、対象者には制度の活用をはかり、滞納世帯を減らしていく、そうして収納率を高めていく方式をとっているのです。

 本市では、残念ながらこの「国保のしおり」の中で減免については納付が困難な方にという一行で終わっています。どういう状況なら減免されるのか全くわかりません。

 減免制度の拡充を含め、もっと内容を具体的にお知らせし、国保料の滞納を予防する立場で改善が必要ではないでしょうか。

 国民健康保険は加入者にとって命を守る最後の砦であり、社会保障であります。ぜひ国保に加入している低所得者や障害者、高齢者などに配慮し、値上げをしないよう、慎重な審議をお願いしまして「国民健康保険料の値上げをしないよう求める請願」の趣旨説明を終わります。

               

「安心して医療が受けられるように、
国民健康保険料の値上げをしないことを
求める請願」の趣旨説明