2005年5月議会 反対討論原稿          小黒啓子   2005年5月議会 反対討論原稿          小黒啓子
                           2005年5月31日

第293号議案 浜松市税条例の一部改正について
第382号議案 (仮称)浜松市新清掃工場・新水泳場整備運営事業に
       関する契約締結について  


 私は日本共産党浜松市議団を代表して、第293号議案浜松市税条例の一部改正について及び、第382号議案浜松市新清掃工場・新水泳場整備運営事業に関する契約締結についての2つの議案に反対の立場で討論を行います。

 さて、初めに市税条例の一部改正についてですが、この条例改正には合併に伴う改正の他に、地方税法の一部改正に伴い市税条例を改正する内容が含まれています。

 そのうちの一つに「年齢65歳以上の者のうち前年の合計所得金額が125万円以下のものに対する個人市民税の非課税措置を廃止する」という制度改正がありますが、長引く不況で市民の収入は大きく減少する中での増税となり、市民生活の悪化をもたらすとともに、消費の後退を招き、景気にも悪影響をもたらすものとなります。
 
 現在、65歳以上の高齢者は、所得125万円までは住民税が非課税になっていますが、政府はこの制度を18年度に廃止することを打ち出しました。

 これは、昨年春に公的年金等控除の縮小や老年者控除の廃止が決定され、住民税については平成18年6月から実行されることに合わせたものです。このため高齢者の住民税についてみると、公的年金等控除の縮小、老年者控除の廃止、非課税限度額の廃止、定率減税の半減と4つの改悪が同時に行われることになります。
全国では今まで住民税非課税だった高齢者のうち約100万人が新たに課税されるといわれ、本市での影響は平成18年度において、約2万人、1億数千万円の増額になると推測されると報告がありました。

 この結果どういうことになるかというと、たとえば、年金を年に260万円受給している高齢者の場合、今は1円も住民税を納めていませんが、この改悪によって単身者なら約5万円、夫婦世帯なら約3万円の住民税を納めることになります。経過措置がありますので、全額負担をするのは平成20年度からですが、深刻な増税でくらしがつぶされることは目に見えています。

 さらに重大なことは、住民税が非課税から課税にかわることによって、社会保険料など各種の料金負担に影響がでてくることです。介護保険料、国民健康保険料、医療費の負担限度額、その他障害者の福祉サービス等の利用者負担、公営住宅の家賃等、くらしに大きな影響を与える改悪になっていることは問題です。

 次に定率減税の縮減についてですが、定率減税は恒久的減税の一環として平成11年の税制改正で実施され、所得税では25万円を限度として税額の20%が控除され、個人住民税では4万円を限度として税額の15%が控除されています。

 今回、所得税については平成18年1月から、住民税では18年度分からですので18年6月からこの定率減税額が2分の1に縮減されることになりました。

 浜松市税条例では税条例附則第26条で定率減税について規定されています。今回地方税法において定率減税の規定が改正されており、「市税条例の一部改正手続き」にはでてきませんが、課税の実務としては影響があります。本市においては市民税所得割が課税される全員が対象になり、平成18年度においては約26万人、金額では約14億円もの増額になると推測され、大変な市民への負担になることが明らかになりました。

 「老いも若きも」国民各層に及ぶ情け容赦ない大増税路線ができてしまいました。

 ちなみに、小泉内閣が決めたこれまでの増税を規模の大きい順に並べると、配偶者特別控除廃止(所得税・住民税合わせて7000億円)消費税の免税点引き下げ等(6000億円)年金課税強化(4000億円)となり、この3つを合計すると1兆7000億円ですが、定率減税は「半減」するだけでも所得税で1兆2520億円、住民税で3880億円合わせて1兆6400億円と先ほどの3つの増税額に匹敵します。定率減税がすべて廃止になれば増税額の倍の規模になります。

 定率減税半減・廃止が家計消費を冷え込ませ、市民のくらしと景気に深刻な影響をもたらすことは避けられないことから、地方税法の改正による市税条例の一部改正には反対をします。


 続いて、第382号議案(仮称)浜松市新清掃工場・新水泳場整備運営事業に関する契約締結について述べます。
 
 わが会派は、今回の継続審査の動議に対しては「疑惑の中で契約すべきでない」ことと合わせ「委員会にて徹底的に審議を尽くすべき」という意味合いから賛成の立場をとり、納得のいく審議を求めましたが、動議が否決されましたのでこの本会議にて本議案に対して反対討論をおこないます。

 わが会派はこの事業については、本来の安心・安全な施設になっていないことや、市民に対して非常に不透明な経過で決められてきていることなどから建設そのものに反対の立場をとっています。

 ガス化溶融炉については各地で事故を続発しており、特に浜松の新清掃工場のシステムとして採用されたキルン式ガス化熔融炉については、システム検討委員会がまとめた報告書にもいくつかの問題点が指摘されているところです。スラグに含まれるダイオキシンや重金属汚染の危険性についても多くの心配が払拭されていません。

 さらには事業者の選定について市民団体が「PFI審査委員会」のメモや議事録、提案書の情報公開を行いましたがメモ・提案書は非公開、議事録については一部公開でありながらほとんどが黒塗りの状態で審議の経過が市民に明らかにされていません。

 また、大型施設中心のゴミ処理、大量廃棄、大量焼却という時代に逆行したゴミ行政から脱却し、拡大生産者責任を明確にし、分別収集の徹底と再利用、生ゴミの堆肥化とリサイクル行政の推進を行い、ゴミ発生そのものを抑制するシステムを作りだしていくことが必要だと思いますが、それもできないでいる状況です。

 欧米では焼却炉から排出される有害物質への危惧や採算性の問題から、焼却炉の建設を止める姿勢を強め、同時に土壌汚染の原因になる処分場の建設も禁止する方向がとられています。大規模な焼却炉は一度建設してしまうと運転や維持管理に多額の資金が投じられ、さらに、施設の連続稼動をさせるために大量のゴミが必要になってきます。とりわけ溶融という技術には大きなリスクがともなうため、一度事故があればその修復にかかるコストは計り知れません。

 すでに多くの事例が示すようにゴミの大量焼却・溶融路線はいたるところで技術的破綻と財政的破綻を招いており、安全性を無視した大型のガス化熔融施設ありきで清掃工場の建設を進めることは大変問題があると思います。

 今回、鋼鉄製橋梁談合事件で本事業の仮契約を結んでいた「三井造船」が家宅捜索をされる事態となったことはご存知の通りです。

 この談合事件は諸外国と比べても桁違いに甘い制裁措置や、政財界との癒着が原因となっています。

 日本経団連副会長を務める新日鉄は平成15年、ステンレス鋼鈑の価格カルテルで排除勧告を受け、今年3月には約13億円の課徴金の納付を命じられています。そして、談合組織のメンバー47社のうち9社が過去10年間に独禁法違反で排除勧告を受けています。

 繰り返し談合が行われる背景には課徴金の金額が低く、アメリカやEUと日本を比べてみると、アメリカやEUでは一番多く課徴金などを払った金額は500億円台に対して日本ではわずか16億円になっていて、課徴金を払っても談合をしたほうが得という構図になっているからです。

 国土交通省が発注する工事の原資は税金です。談合による受注企業の不当利益、国民にとっての損害額はいくらになるか計算をしてみると、現在、国交省の直轄工事の入札で談合が確認された場合、契約額の10%を違約金として国に払うようになっています。鋼鉄製橋梁の年間市場規模が平成15年度で3500億円ですので、その10%で年間350億円、それが数十年続いていたのですから、橋梁談合事件による国民の損害額は数千億円にのぼることになります。

 このように、国民の税金を不当に利益とする談合で家宅捜索を受けた企業であれば、たとえ告発されずとも社会的同義、企業倫理をもって自らの姿勢を正すべきです。また、新清掃工場の建設については、施設そのものが、市民にとって安全であり安心できるものであるかどうかを判断の中心に据えるべきと考えます。
 
 以上我が会派の見解を述べ、第382号議案の浜松市新清掃工場・新水泳場整備運営事業に関する契約締結については反対をいたします。

 以上2つの議案について、反対の理由を述べ私の反対討論とします。