kr_toku
日本語の文法的,音韻的特徴
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日本語は,語順が [主語(S)+目的語(O)+動詞(V)] である
中国を除くユーラシア大陸の中核部分の言語は,インド・イラニアン諸語なども含めほとんどすべてこのような特徴を持っている。
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この構造を持つ言語:
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日本語,琉球(沖縄)語,朝鮮語,アイヌ語,ギリヤーク語など
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アルタイ諸語----ツングース語,モンゴル語,トルコ語など
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ウラル諸語-------フィンランド語,ハンガリー語,ラップ語など
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チベット・ビルマ諸語----チベット語,ビルマ語,ロロ語,レブチャ語など
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インド・イラニアン諸語----インド・イラニアン諸語,ベンガーリー語,ネパール語,シンハリーズ語など
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その他----シュメール語,ドラヴィダ諸語(タミル語その他)
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※ ラテン語も,いろんな語順が許されたが,動詞を最後にすえるのが標準的な形だった。 それがロマンス語へと発達するにつれて大きく変化していった。
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※ ちなみに,[(S)+(V)+(O)]型は二つの中核的な分布域をもっている。 一つはインドシア、マレー半島からインドネシア諸島を含む東南アジアの世界と,もう一つはアフリカ中・北部から地中海沿岸の南ヨーロッパを含む地域である。 その周辺にさまざまな中間的,過渡的な領域があり,中でもヨーロッパと中国大陸が最も規模が大きい。
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日本語には 「て,に(から,へ,で),を,は(が) 」という助詞がある。 そして名詞や動詞に接尾する。
これは朝鮮語も同じである。 ただし,モンゴル語には 「て,に,を」はあるが,格助詞[は(が)]はない。 もっとも古い日本語でも格助詞はなかった。
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形容詞は名詞の前にくる
マライ・ポリネシア諸語では形容詞は,一般に,名詞のあとに置かれる。(タイ語・ベトナム語はむろん,そしてフランス語もだいたいそうである)
アルタイ諸語やウラル諸語でも名詞にかかる連体修飾語が,一般に,名詞のあとに置かれる。
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単語はだいたい二音節である
中国語,タイ語,ラオ語,ベトナム語,ギリヤーク語なとは,単語の大部分が一音節からなる単音節的な言語である。
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語の頭に r音が立たない
本来の日本語(大和ことば)では,単語のはじめには r音が立たない。これはアルタイ諸語,朝鮮語に共通の特徴である。
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語の頭に 濁音が立たない
本来の日本語(大和ことば)では,単語のはじめに濁音が立たない。
(朝鮮語/韓国語でも同じ,というより濁音・清音という区別はない。 有気音(激音)、無気音の区別はある)
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濁音が少ない
日本語では 「とぶ(飛ぶ)」 などのように,語頭以外の部分に,濁音のあらわれる単語がある。 しかし,他の諸言語にくらべれば,濁音をふくむ単語は少ない。
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語の頭に 二つ以上の子音(子音群)が立たない
英語では 語頭にstとかstrとか splのように子音群がくることがあるが,日本語にはない。
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二重子音(子音群)がない
日本語では 語頭に二重子音が立たないばかりでなく,単語の語中,語末にも二重子音がない。
(現代朝鮮語/韓国語では語末に二重子音が立つことがある。 現代ではふつうどちらか一方のみが発音される)
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重母音が本来なかった
現代日本語では "aoi青い"とか"moeru燃える"など,母音が二つ以上続くことも,しばしばある。
しかし,古くはこれらの語は"awosi青し"とか"moyu燃ゆ"であった。
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単語は原則として母音で終わる
日本語では はねる音やつまる音を除いては,音節が母音で終わる。
(記紀に見える新羅・百済・高句麗の古い人名などを見ると古代朝鮮語でもそのようであった可能性はある)
<出典@:安本美典著 『新説! 日本人と日本語の起源』 宝島社新書>
<出典A:小沢重男著 『日本語の故郷を探る−モンゴル語圏から−』 講談社現代新書>
<出典B:金田一春彦著 『日本語』 岩波新書>
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