小 杉 谷
小杉谷は、安房川河口から16km遡った上流にある。島内随一の美林地帯で、
伐採は秀吉の時代から行われていた。江戸時代には、島津藩が代官を置き、
200年間にわたり、本格的な伐採が行われた。
大正時代には営林署事業所が開設され、昭和35年頃には小・中学校・
商店も出来、130世帯・540人余が生活していた。
現在それらは、鬱蒼とした森の中に埋もれ、錆びたトロッコの軌道や学校の
礎石、住居跡の石垣などが、厚い苔の下から見え隠れしている。
小杉谷周辺は、大木の切り株が、朽ちつつも塔のようにそそり立ち、独特の
景観を呈している。
それらは、恐ろしげな形相のもの、呻き苦しんでいるかのように見えるもの、
動物に見えるもの等、実に様々だ。
それらの放つ不思議な魅力に取り憑かれ、幾度となく小杉谷に足を運んだ。
(その1)