「志を持った子供を育てる会」

  人間力の基本となる「志」

世の中も人生も、山あり谷あり。それを乗り越えていくのが志の力だ。これから子供たちは、いまだかつてない厳しい時代に生きることになる。止まらぬ地球環境の破壊。平和とは逆行する国際社会の現実。国内では、選挙ごとに投票率が下がるなど「事なかれ主義」の蔓延。その一方で子供への虐待が広がるなど、日本の社会病理も行き着くところに来た感がある。
  そうした中、各国の青少年を対象にした意識調査があると、決まったように日本の若者は「将来に希望がなく、国に誇りが持てず、世のため人のために生きようとする熱意に乏しい」という結果を出している。その国の将来は、青年を見れば分かるという。厳しい時代へ向かう中、次代を担う青少年の意識が著しく低いようでは、未来に大きな不安を覚えざるを得ない。
  また子供たちは、ちょっとしたことですぐに「うざい」と歯向かい、「キレる」「むかつく」傾向にある。日本の青少年犯罪は凶悪化・低年齢化する一方だ。痛ましい事件がある度に、「心の教育」の必要性が叫ばれてはいる。しかし本当のところ、何をどうすればいいのか、大人たちも全く方向性を見失っている有様だ。このままでは、この国は「精神の崩壊」によって滅びゆくことになるだろう。今こそ、何かできることから始めなければならない。

◆十代半ばを人生の節目に

そこで私たちは、中学2年生頃を対象にした「立志式」を行うことにより、徳育の重要な一助にしようと願うに至った(「立志式」の他、「元服式」「立春式」「少年式」などの名称が各地で用いられている)。中学生は体格の向上に精神の成長が追いつかず、情緒が不安定になりがちで、エネルギーを持て余す年頃だ。この時期の子供たちに、人間力の基本となる志の大切さを伝えようではないか。それを、全市の全中学校で取り組むことによって、地域全体の教育力を育むことを目指すものである。
 ところで、毎年の成人式は各地で大荒れとなり、大人の自覚を促すという本来の目的が薄れ、同窓会的な雰囲気のパーティが主流となっている。いまや開催の是非まで問われている状態だ。本会は、成人式を否定する立場ではないが、その目的を補完する意味を込め、「立志式」の“公式行事”化を提唱するものである。また、14歳から刑事処分可能年齢(*今後、さらなる年齢引き下げが検討されている)となることも、中学2年生頃に責任感を養わせるべき背景として見落としてはならない(改正少年法20条1項)。こうして、稚心を去らせて社会への関心を促すには、十代半ばが節目としてふさわしいと思う次第である。

◆「立志式」を通して育てたい心

 さて、厳しい時代を生き抜く以上、子供たちには信念や心の強さ・広さが求められることになる。「立志式」を通して育てたい心には、以下のポイントがあると考えている。

☆個人的自立性 自分の人生を決めるのは自分だという自覚

☆地域的連帯性 地域の人々によって育まれているという絆

☆日本的固有性 日本に生まれ日本に生きることの喜びと誇り

☆人類的普遍性 世界平和と人類の幸福に役立とうとする心

これまで個人の自由を強調するあまり、それが他人を無視する勝手主義に陥ってしまう傾向が見られた。そもそも人間は社会的存在である。自分は誰を仲間として、どこに立っているのかという、いわゆるアイデンティティを抜きにしては人生が成り立たない。自分を超える意識、他者とのつながり、人に喜ばれる喜び、といった心の広がりがないと、社会に適応できないのである。
  そして、それぞれが持つ才能を磨くのは何のためか。能力を生かすのは大切だが、自己満足(私利私欲)をゴールとするだけでいいのだろうか。自分の個性を、何のため誰のために伸ばしたいのか。そこを見つめさせるのが、「立志式」の意味なのである。
  また「立志式」は、親が子育てを見直し、地域社会との関わりを深めるきっかけともなる。特に父親の参画が、割合としてもっと増えて欲しい。一般に父親は、子供が中学生になると母親まかせになりがちで、学校との関わりが少なくなる傾向があるからだ。
 人は志を立てることによって、素晴らしい人生を歩むことが可能となる。自己実現と社会への貢献という、目的のある喜びに満ちた生き方である。そんな目の輝く人生を子供たちに歩ませたい。それが本会の願いである。


                                     志を持った子どもを育てる会 
                                             会長  林 英臣






 参  考   「吾十有五にして学に志す」孔子
   *孔子は15歳で聖賢の学問に志しました。

  「志は氣の帥」孟子
   *志によって氣というエネルギーが体の中に湧き起こります。
 
  「それ学は立志より先なるはなし」王陽明
   *勉強の一番始めに必要なことは志を立てることです。

  「志立たざれば天下に成るべきの事なし」王陽明
   *志が無くて世の中で成功した人はいません。

  「人は初一念が大切」吉田松陰
   *人間にとって最初に立てる志が大切です(それでゴールが決まるから)。

  「一、稚心を去る 二、氣を振ふ 三、志を立つ 四、学に勉む 五、交友を択ぶ」
   橋本左内(15歳の書『啓発録』)

    *一、人に甘えてばかりいる子供の心のままではいけません。
    *二、元氣や勇氣をふるい立たせましょう。
    *三、何のため誰のために生きるのか、人生の目標を立てましょう。
    *四、その目標を実らせるため、勉強に励みましょう。
    *五、お互いに成長し合える友達を選びましょう。

  □「志」=「之」+「心」。「之」は行くこと。
    「志」とは、目的を持って行動する精神のことである。



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