浜松市議会での一般質問 

                        ◆  花井和夫 浜松市議会議員   平成16年9月議会

「こころざし」を持った子どもを育てることについて、市長並びに教育長に御質問いたします。
  平成16年8月1日現在の推計人口によれば,日本の総人口は,1億2758万人であり,そのうち0歳〜24歳までの青少年人口は,3,230万人で,総人口の25.3%を占めています。国などが行う
青少年を対象にした意識調査があると、決まったように日本の若者は「将来に希望が無く、国に誇りが持てず、世のため人のために生きようとする熱意に乏しい」という結果が出ています。次の時代を担う青少年の意識が未来を決定することを思うと、日本の将来に大きな不安を感じる次第です。また、子どもたちは、ちょっとしたことですぐに「キレる」「むかつく」傾向にあり、日本の青少年犯罪が凶悪化していることも憂う状況にあります。文部科学省の発表によると昨年度中に公立小学校で起きた校内暴力が前年度より27.7%増えて過去最多であり、中学、高校でも前年度より増えており、低年齢化、深刻化している実態が浮かんでいます。その多くの子どもたちが、悪いことをしたとか、大変なことをしてしまったという自覚がなかったり、極めてその意識が薄いということも言われています。今日、核家族化の進行による家族構成の変化、地域社会における連帯意識の希薄化や、学校教育での道徳教育や倫理教育の軽視などが影響しているとも語られておりますが、実際、何をどうすればいいのか、我々大人たちもまったく方向性を見失っている状況にあると言えます。 いまこそ、日本の将来に向けて真剣にその原因や事態を改善するための方策について考えるとともに、何かできることから始めなくてはなりません。
  そこで、14歳頃を対象にした日本古来の元服式にちなんだ「立志式」を開催することにより徳育の重要な一助にしてはどうかと思う次第です。中学生時代は、肉体的にも精神的にも、子どもから大人に成長する時期であり、心身ともに不安定な時期にあります。これから迎えるであろう厳しい時代を乗り越え、素晴らしい未来を作っていくためにも、今までの自分自身を振り返り、次の時代を担う若者としてしっかりと自分の将来をこころざし、自覚とともに夢や志を持たせるための行事として立志式を行うことは大変に意義があることではないかと思います。また、改正が検討されていますが、現行の少年法では、14歳になれば刑事責任が問われ、社会的責任も課せられる年齢でもあります。
  さて、浜松市内での立志式の開催状況ですが、十数年前までは、いくつかの中学校で開催されていたと聞きます。その後、道徳教育の衰退や学校の週5日制の実施などにより学校行事の縮小もあり、開催する学校が減っていったとも聞きます。昨年度は、市内では、市立中部中学校と浜松日体中学校において開催されております。中部中学校では、2月に「立春式」として14歳となる2年生を対象に開催され、保護者、教職員、自治会をはじめとした地域の方々が見守る中、生徒が将来に向けた決意を述べ、各生徒は家族あての感謝の手紙を、また、保護者が生徒に、子どもが生まれた頃の状況や名前の由来などについて書いた手紙を交換しているとのことであります。これまでの自分自身を振り返り、将来への志をたて、また、親や周囲の人たちにも思いをはせ、感謝の気持ちを持つ機会となっています。何より生徒が自分一人ではなく、家族や地域など多くの人に見守られながら育まれていることに気づく、よい機会となっています。また、不登校がゼロになった等、教育上においても効果が表れていると伺いました。 
  日体中学校では、「積志式」として、生徒会の企画により、2年生一人一人が、色紙にしたためた志を保護者、教職員の前で読み上げ、将来への決意を力強く語り、勉学やスポーツなど将来への心がまえを確かめる機会として開催しています。
  また、立志式の開催について、47都道府県および13の政令指定都市の教育委員会あてにアンケートを独自に実施いたしました。現在、集計の途中ではありますが、30の都道府県、9つの政令市の教育委員会より回答をいただきました。実施について把握していないところがあるものの、宮崎県や石川県、また愛媛県では、ほとんどの中学で取り組んでいるとのことであり、茨城県でも公立235校中40校、愛知県では公立303校中56校、そして、静岡県では、公立274校中27校、私立1校の開催と全国的に見ても、多くの学校で開催していることがわかりました。開催内容についても地域の特色を生かした内容となっており、生徒の誓いの言葉や保護者からの手紙、講演会などを行うところが多いようです。開催による効果を見ると、
  ・将来について考える機会となり、自立に向けての自覚をたかめることができた。
   ・自分や友人、保護者、地域の方々の思いを知り、視野が広がった。
  ・信頼関係ができ良好な人間関係づくりの場となった。
その他にも様々に有益となる回答を頂きました。
 静岡県教育員会では、平成14年に「人づくり2010プラン」として、静岡県の教育の進むべき方向と主要施策について、目標を示した教育計画が策定されました。 
 その中で、学校教育の充実を目指す中で、子どもたち一人一人がそれぞれの持つ「自分らしさに」に気づき、社会とのかかわりの中で、自信を持って自らの目標に向かって主体的に努力することができる「こころざし」を持った子どもを育てることを示しています。
 北脇市長も、浜松市のホームページ内の「市長の部屋」の中で、座右の銘として、論語から「匹夫も志を奪うべからず」の言葉を挙げ、人間の生き方の中で高い志が大事であると述べています。今こそ、人間力の基本となる志の大切さを教えられる地域を創ることが20年、30年先の浜松の発展に必要であると考えます。そこで、1つ目に、高い志を持って市政にあたられている市長に、志を持つ事の大切さについてどう考えるのかお伺いします。
2つ目に、県教育委員会の示す教育目標にある「こころざしを持った子どもを育てる」ことを学校教育の中でどう実現していくのか教育長に伺います。3つ目に、立志式を市内の全中学校で開催することにより、この浜松の地域の教育力を上げていくことについて教育長にお伺いします。

 北脇市長答弁
 物質的に豊かな社会の中で、非行の低年齢化、援助交際、さらには虐待などが問題となり、子どもたちを取り巻く環境は、決して良好とは言えません。こうした状況の下、最近の子どもたちは、「夢を語れない」と言われます。私は、学生時代に「三軍も師を奪うべし、匹夫も志を奪うべからざるなり」という論語に出てくる言葉に出会いました。これは、「どんな大軍であっても、その司令官を奪い取ることはできる。しかし、どんなちっぽけな人であっても、その人の『志』を奪うことはできない。」という意味でございます。これを平たく言えば、人の心の中で育った「志」は、誰も奪えないということになりましょう。
  やはり、人間の生き方の中で何か高いものを追求するという気持ち、つまり「志」が大事なのだと思います。いろいろと難しいことがあって、なかなか思い通りにならないことも数多くありますが、自分が求めている高い目標を忘れてはいけないと思いますし、自分自身が「志」を高く持っていれば、どんな障害があっても、必ず乗り越えることができるものだと思います。
 教育の目的は、子どもに自己教育力をつけること、言い換えれば、「志」を持たせることと言えます。長い人生を主体的、自律的に生きるためにも「志」を持たせる教育は大切であると考えます。

  教育長答弁
 学校の役割は、子ども一人ひとりの自己実現に向けて、目標を持って学ぶことや努力することの大切さをしっかり教えることにあります。「はままつの教育」では、重点目標として「夢や目標を持ち、達成に向けて努力する子どもの育成」を掲げておりますが、これは、県教育委員会で示す「『こころざし』を持った子どもの育成」そのものと考えます。
 この目標達成のためには、幼・小・中それぞれの成長段階に応じた指導とその一貫性が重要と考えます。特に、心も体も著しく変化・成長する中学校では、職業体験や高校の体験入学など自己の将来をしっかりと見据えるための体験活動やスポーツや集団活動などを通して、多くの感動体験を積み重ねることができるよう指導しております。
 今後もさらに、こうした体験をベースとして、夢をはぐくみ、目標を持つことができるよう、より一層の工夫を凝らした教育課程や行事のあり方などについて研究していく必要があります。
 同時に、子ども自身が、自己の夢や目標を達成するために、何をどのように学び、いかに自分を高めていくかを考えることのできる能力や態度を育成することも大切と考えます。
 市教育委員会としましては、どの子もそれぞれの夢や目標を持ちいきいきと学ぶことができる学校づくりを進め、「こころざしを持った健やかな子ども」の育成に努めてまいります。
 市内中学校では、かつては10数校の中学校で立志式を行っていたことがありますが、しかし、昨年度、同様の趣旨の式を実施したのは、1校でした。その中学校では、2年生を対象に「立春式」と銘打って、保護者や地元自治会の方々の参列のもと実施しました。実施後の感想によれば、生徒からは「親や地域の人たちの前で、目標を発表したことで、自分の志を固めることができた。」とか、保護者からは「何を考えているのかわからなくなった我が子の夢を知り、成長を見届けることができて、安心した。」とか、教員からは「入学時の緊張感が薄れ、進路決定の緊迫感も少なく、中だるみともいわれる中学校2年生の時期に、生徒各自の夢や目標が再確認でき、意味ある行事であった。」など、成果が上げられています。
 名称や形式はいろいろありますが、志を立てる機会や場を設けることは、自己を正しく見つめ将来を考えるという観点からも大変有意義なものと考えます。従いまして、昨年度実施した中学校の取り組みや成果を全中学校に紹介してまいりたいと考えています。

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