国の方針及び県の方針についての検証

  「立志式」の意義とめざすもの

平成12年12月の中央教育審議会のまとめ、第2章に示されている「教養」の定義の中で、教養とは「社会とのかかわりの中で自己を位置づける力、個人としての座標軸(行動の基準とそれを支える価値観)、主体性のある人間として向上心や志をもって生きる力、社会全体の幸福を考え、その実現に向かって行動することができる力、他者の立場に立って考えることのできる想像力などととらえることができる。」と述べている。

現行の中学校学習指導要領第1章総則の第6には、「(4)生徒が自らの生き方を考え主体的に進路を選択することができるよう、学校の教育活動全体を通じ、計画的、組織的な進路指導を行うこと。(5)生徒が学校や学級での生活によりよく適応すると共に、現在及び将来の生き方を考え行動する態度や能力を育成することができるよう、学校の教育活動全体を通じ、ガイダンスの機能の充実をはかること。」と記述されている。これらは進路指導やガイダンスの充実について述べたものだが、それらの出発点として、または中間の節目として「立志式」と意図的,計画的に盛り込むことは有意義だと考える。さらに、第4章特別活動の学校行事(1)の儀式的行事では「学校生活に有意義な変化や折り目を付け、厳粛で清新な気分を味わい、新しい生活の展開への動機付けとなるような活動を行うこと。」と記述されている。これは入学式や始業式等の一般的な儀式的な行事を示すが、その趣旨からすれば「立志式」は、より大きな人生の節目としての意味合いを含んでいると考えることができる。

以上のことから、「志」をもった子どもの育成は国の願いであることを読みとることができる。

「『こころざし』を持った子ども」の育成は静岡県教育委員会の方針を示した「『人づくり』2010プラン」を支えるひとつの柱となっている。この中で、「こころざし」という言葉を敢えて個人的な成功を目指すニュアンスが残る「立志」という言葉と切り離しているが、私たちが提唱する立志式も、社会的な地位や財産などの立身出世を意味するのではなく、それぞれの子どもたちが「生きるというのはどういうことなのだろうか」「人は人としてどうあるべきだろうか」「自分はどのように生きていこうか」、と考えるきっかけを作りたいという願いから始まっている。

以上のことから、私たちは、子どもたちに人生に目覚める直接的な手だての一つとして学校教育に「立志式」を盛り込むことを提唱したい。


戻る