新場澪筋8番ポール         

 

 

 

 

 

 

 新場澪筋8番ポールと言えばキビレの極上ポイントです。「8番」と言えばこの新場澪筋8番ポールを指す程にその存在は釣り師の間に広く知れ渡っています。春のノッコミからオチまでの6ヶ月間、毎年多くの釣り師を惹き付け虜にしてきました。広い浜名湖の中でいつ見ても船が溜まっているのはこの8番ポールだけで、その人気振りは数あるポイントの中で特出し際立っています。
 8番ポールの一画を担う新居の瀬は、落ちガキでもかなり有名な場所となっています。真冬の湖上で竿を出すでもなく係船している船を見掛ける事があります。船上ではコンコンと何かを叩く様な音がします。澄み切った空気を伝って遠くまで届いてくるこの音は、間違いなく採り立てのカキの殻を割っている音です。船上の容器にはグリコーゲンをたっぷりと蓄えた新鮮な白いカキの身がたっぷりと溜まっている筈です。
 湖底は豆ガニやカッチンエビと言った甲殻類、太い弁天ジャムシ等の地虫類がこれでもかとばかりに生息しています。長い
時をかけて積み重なったカキ殻の層は小動物の恰好の住まいとなっている訳です。釣り餌屋さんと契約した人達が弁天ジャムシを掘っているのもこの辺りです。ウェットスーツに身を固め特製のスコップを使っては湖底の砂泥の中から太い弁天ジャムシを選り出します。仕事の邪魔をしてはいけないと思いながらもついつい近付いて話し掛けてしまいます。
「その辺りに竿を入れてご覧。」
 借用した竿はスチールラインでフグ用です。掘り起こされた湖底に仕掛けを入れると瞬く間にクサフグが数匹揚がります。
「とって置いてくれないか。」
 信じられない事に猛毒のクサフグをその人達は持ち帰るのだと言います。調理師の免許でも持っているのでしょうか。

 豊かな海の象徴として8番ポールは浜名湖を演出し続けています。
 ところがこの好ポイントにその人気を揺るがす激震が走った事がかつてありました。95年の事です。湖底の改良工事がポール東側に入り、大きな落ちガキがこれでもかと繁殖していた湖底は数日にして何の変哲もない砂泥地へと一変してしまったのです。(90年頃よりアサリの漁獲量は急激な減少を見せ始め、対策として新たなアサリの育成場を設けようとした訳です。アサリ減少の真の原因はツメタガイによる食害ですが、その当時はその原因を乱獲によるものと見ていました)。遊漁者としては複雑な思いでその作業を見詰めていたものです。
 この辺り一帯の湖底の環境は著しく変化し、寄り付く魚も減っていきました。にもかかわらず連日8番ポールは釣り師で賑わっています。裏切らない釣果が釣り師をしてここに集めているのでしょう。何がこれ程までに人を寄せるのでしょう。湖底を調査してみました。上の海図から分かる様に、新場水路はこの8番ポールで急速にその深度を浅くしています。鷲津漁港方面に斜めに抜ける潮の流れがこの8番ポールを境として航路を埋めたと思われます。湖底の急激な変化は、新場澪筋沿いに北上した魚をここに溜めているのです。
 上げ潮時に平坦な新居の瀬を流れてきた潮は、中ノ郷に沿って新場水路を北上してきた潮とこの8番ポール周辺でぶつかり合い大きくその流れを乱れさせます。潮目がここに出来ていると言っても良い程です。引き潮時の潮の流れも複雑です。中ノ郷に遮られた潮は8番ポール西側に潮のヨレを作り、湖底に複雑な起伏を作り上げています。ポール南側の傾斜もこの潮の影響で2段に削られ変形のカケアガリとなっています。全体的に見て奥カメの湖底の様相と酷似していますが、8番ポールは奥カメより潮流が複雑でその為、ポイントが狭いと言うのを特徴としています。中央航路から外れているいる為、潮が緩く流れ藻が少なく、風・波ともに穏やかだと言うのも大きな特徴です。大潮時にはこのポイントで、中潮時には浜名湖中央に位置する奥カメ22番ポールで、と言う様に使い分けをすれば良いでしょう。
 ポール東側も好ポイントです。夜釣りでは、アナゴの集中攻撃があるものの潮止まり時を狙ったキビレ釣りがお勧めです。混み合った8番を避けてのんびりと大海原で釣りが出来ますが、引ったくるようなアタリにご用心。ポールの北東部では8月末に新セイゴやヘダイの切れ食いに遇います。束釣りを目的とした日中の釣りとして一度お試しあれ。時期を見計らっての釣行をお勧めします。

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