周防 元水 様

 作品を読ませていただきました。先生が小説に手を染めていたとは全く知りませんでした。大きな驚きでした。と共にこの世界での仲間ができたような喜びを覚えました。他のお作もあれぼ拝読したいと思います。

 今回の作に関しては、人間だれも未来に興味のない者はなく、その未来に対して大きな不安を抱いているということが根底にあることに共感を抱きます。その不安は時代に完全に取り残され、自己の存在が全く必要のないものと化してしまうことであり、それは死を意味します。考えてみれば明治以降、日本人は絶えず世界を意識し世界に遅れを取らないことを考え、ひとときの休みもなく突き進んできた。そしてそれは今も続いていて、時代のスビードは以前よりも増している。そして日本人に染み込んだ、「遅れてはならない症候群」が今、日本人を滅ぼそうとしている。

 なぜ日本人は世界と快を分かち、自分の意志で生きることができないのか。なぜ日本人の持つ本来の感性を捨てて、世界に同調しようとするのか。なぜ日本人のアイデンティティを守ろうとしないのか。
 企業が必要なことはわかるがそれがすべてではない。ワン・ノブ・ゼンだということを早く知らなけれぱならない。その意味で「森の中の企業」は日本人の近未来に警鐘を鳴らしている作品であるといえる。一読の価値のある作品だと思われる。私自身が今までに読んだことのない作風であり、まさに創作である。

 重ねて言うが、日本人は江戸時代以前の日本人らしさを取り戻さなければならない。さもなければ日本はなくなり、名前だけの日本人が残ることになる。

と以上のような感想を持ちました。次作が待たれます。

平成16年7月15日
鈴木 孝之

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