第31回公演 『霧の中』
AM 8:30 より搬入が始まり、公演の準備が行われます。
大道具の組み立て・小道具確認・音響確認・立ち位置確認・場面転換リハーサル・通しリハetc
様々な確認とリハーサルで本番前はハードなスケジュールなのです。
役者の目で安全性を確認し、悔いの残らない公演を創り上げる為に一人一人の眼差しは真剣になります。
あらすじ
幕末の探偵事務所に、ある男が訪れた。
「婚約者が行方不明になったので探して欲しい」
と、その三十男は訴える。
家賃を滞納し、食費にも事欠く探偵ヒミコと田丸は、
仕方なしにその冴えない依頼を引き受ける。
が、事件を追う内に、同じような失踪事件に遭遇。
そして、突然現れる竹下夢二の亡霊?
いったい失踪事件に隠された、謎とは?
霊感探偵ヒミコが暴く、人間の心の闇の行方に何が…
◆ 麻美(大家の娘)
 「私は母(不知火)の唯一の後継者。私を仲間にしてくれるのなら
 滞納している家賃を待ってもらえるよう頼んであげる!
 私昔から探偵に憧れていたのぉ♪」

 麻美は必死にヒミコと田丸に、仲間になりたいと訴える。

◆ 田丸(探偵見習)
 「明日のパンも買えない状態だし…。家賃待ってもらえるんですよ!
 それに、あの子を仲間にしてその内クビにでもすればいいじゃない
 ですか!ヒミコさん!聞いてるんですか?ヒミコさん!!」

 ヒミコにコキ使われながらも、立派な探偵になろうとはするものの…
 そこへ『坊屋』と名乗る男が「自分の婚約者が行方不明になったから探して欲しい」と
 駆け込んで来る。
◆ 夢二(大正の叙情画家)
 「どうかしたんですか?」
◆ 山路しの(坊屋の婚約者)
 「…はい…少し、さしこみが…」

 夢二はシノの言葉を聞くと、自分が持っていた薬を差し出す。
 その薬を飲むシノ。しかし、この後シノは行方不明となる。
 いったいシノの身に何が起きたのか?そして夢二はいったい何者なのか?
◆ 闇語り(謎の男)
 「山路しのの誘拐事件から手を引かれた方がいいと御忠告に」
◆ ヒミコ(ヒミコ霊感探偵事務所の所長)
 「手を引け?それは、それは、有り難い御忠告を!」

 突然ヒミコ達の目の前に現れた謎の男。彼はいったい何を知っているのだろうか?
 ヒミコの霊感が少しずつ働き初めていた。
◆ 夢二(大正時代の叙情画家)
 「どうかしたんですか?」
◆ アヤ(一人の女)
 「はい…少し、頭が…」
◆ 闇語り(謎の男)
 「渋谷のど真ん中でカドワカシとは恐れいるぜ!」

 夢二はアヤの言葉を聞くと、シノと同様薬を差し出す。
 その薬を飲むアヤ。しばらくするとアヤの意識は遠のき夢二はアヤを
 連れて行こうとする。が、そこへ闇語りが現れ、邪魔をしようとする。
◆ 彦乃(夢二の恋人)
 「私は先生以外の男性に抱かれました。
 夢二先生と関係のある女の人を見ると、羨ましくなって…。
 私は盲目になりましょう。あなたの為に盲目になりましょう。
 あなたの回りに現れる女を見ぬように…。
 盲目になってもいいけれど、もし、あなたの姿が見たくなった時
 私はどうしたらいいのかしら…。」

 彦乃は幻想となって夢二の前で想いを伝える。夢二にもっとも愛された
 彦乃のだったが、夢二を想う気持ちは何年断っても焦る事はなかった。
◆ 夢二(大正時代の叙情画家)
 「僕の心はまるで嵐に出会った小船のように揺らいでいた。
 彦乃を責める事が出来ない自分を責め、何故今になって言うのかと
 彦乃を責め…。
 僕の心には君以外はいない。僕の横に寝るのは君だけだ。
 彦乃、彦乃…彦乃!!」

 夢二は彦乃を愛し過ぎるあまり、自分の犯した過ちを悔やみ続けていた。
 そして、自分自身と葛藤していた。
◆ 不知火(ヒミコ霊感探偵事務所の大家)
 「しかし、まいったは。忍び込んだ屋敷に夢二の亡霊がいたとは…
 金になりそうな匂いがするね。まずは、あの女(お紺)を待ち伏せし、
 夢二との連携を断たせな。」
◆ 闇語り(謎の男)
 「しかし…。あの男が生きているはずは…それに、屋敷に囚われて
 いた女はどうします?まずは、外掘りから埋めますか…」

 不知火は影で盗人を行っていたのだが、忍び込んだ際に夢二と遭遇していた。
 夢二の出現に不信を感じ、夢二の周りをうろついている女(お紺)をマークする様
 闇語りに指示する。

◆ さよ(囚われた女)
 「助けてー!誰かー!教えて。あの男は誰なの?何の為に私達を
 ここに閉じ込めているの?あの男は…竹下夢二…幽霊なの?」
◆ 山路しの(坊屋の婚約者)
 「幽霊じゃないわ…。仕方がないのよ、これは。それに、多分これも
 愛の一つの形なんだと思う。…ごめんね…。」

 サヨの問いかけに、冷静な口調で話しをするシノ。シノには夢二の気持ちが
 分かっていた。逃げる手段を知っていながらも、逃げようとしないシノだった。
◆ 夢二(大正時代の叙情画家)
 「一人だけ助けてあげてもいいと言ったら瞬時に名乗り出た。
 匂いって、不思議だと思いませんか?君の匂いが僕の心を掴めば
 そして、君が僕の匂いが好きになれば。君を助けてあげましょう。」
◆ アヤ(一人の女)
 「当然よ!誰だって死にたくないわ!それに何を言いたいんです!
 夢二さんの匂いを好きになればいいんですか?そうすれば助けて
 くれるんですか?」
◆ お紺(謎の女)
 「匂いだけで、その人を好きだという気持ちまでも湧いてこなければ
 駄目。あなたに夢二先生の匂いが分かるかしら?」

 暗い地下室の中で夢二はアヤに話し掛ける。アヤは逃げる為には何をしたらいい
 のか問いただすが、『匂い』としか言われないアヤは苛立ちを感じる。
 そこへ、お紺が現れ追い討ちをかけるかの様にアヤに『匂い』の話しをする。
 アヤの運命はどう左右されるのか?
◆ さよ(囚われた女)
 「あなたは何故囚われているの?何故?何故なの?
 もう、いたくない!亡霊が彷徨っていいるからって、私には何の
 関係があるのよ!だして!ここから出して!」
◆ 山路しの(坊屋の婚約者)
 「竹下夢二に愛された彦乃の別称山路シノと同じ名前だから…。
 囚われている人は、なんらかの形で夢二に関係しているわ。
 もしかしたら、あの夢二の亡霊はもう一度恋をやり直したいのかも…」

 サヨの問いかけは続く中、シノは少しずつだが夢二の企みに気付き始める。
 しかし、どうする事も出来ないシノを裏目に、サヨは必死になって逃げようとする。
◆ 闇語り(謎の男)
 「女は時として、どうしようもなく無神経な厚顔無恥になる。
 夢二の最初の妻タマキさんしかり、最愛の女、彦乃さんも又、ある意味では
 同じだった。そして、あんたも…。そう、遊びだったんですよ、あなたとは。
 単なる性欲のはけ口に過ぎない。」
◆ お紺(謎の女)
 「違う!あんたなんかに夢二先生の本当のお心は分からないわ。何も…。
 それとね、物語にはねいつも続きがあるのよ、生きている限り書かれて
 いない続きが…。私は作ってみせるわ!夢二先生と私の物語を!!」

 闇語りは静かに夢二の女に対する考えをお紺に話す。しかし、大正時代から夢二を想い続けて生きた
 お紺にとっては、単なる戯言にしか過ぎなかった。
 しかし、闇語りに追求され、お紺は夢二に対しての熱い想いに火を灯す。
◆ 闇語り(謎の男)
 「これで、いいんですか?しかし、奴等は今の時代の人間じゃない。
 それに、亡霊でもない…。だがあいつらは、80年以上前に死んだはずの
 夢二・そして、夢二に捨てられた、お紺だ。」
◆ 不知火(ヒミコ霊感探偵事務所の大家)
 「あぁ。これで火が付いた。後は、どんな風に燃えるかだ。
 二人のカラクリは後で説明するわ。とにかく、囚われた女をどう逃がすかよ」
◆ スナックのママ
 「ともかく、今は祈るだけね…」

 不知火達は囚われている女を逃がす為に、お紺に火を付けたのだった。
 そして、不知火だけが、生きているはずがない竹下夢二とお紺の生存する
 カラクリを知っているのだった。
◆ 山路しの(坊屋の婚約者)
 「やはり…」
◆ 坊屋(山路しのの婚約者)
 「しのー!!」

 森の中で殺された山路シノの死体を見て、号泣する坊屋
 しかし、坊屋の心中には何か違う企みが宿っていたのだった。
◆新たなる謎◆ ◆ ヒミコ(ヒミコ霊感探偵事務所の所長)
 「違う…。何かが違う…。山路しのはすでに死んでいるはずだ。
 私には聞こえたんだ。一週間前に「助けてやってほしい」というシノさんの
 声が…。」

 坊屋の泣き声だけが児玉する。しかし、霊感で聞いたシノの何かを訴える声が、
 ヒミコの中で引っかかっていた。
◆アヤの死◆ ◆ アヤ(一人の女)
 「きゃー!」
◆ 田丸(探偵見習)
 「アヤさん!」

 ヒミコと田丸の目の前にはアヤの死体が横たわっていた。そこへ夢二が現れる。
 夢二は「醜い女だった。」と吐き捨てる様に話す。
◆夢二の死◆
◆お紺の愛・死◆
◆ 闇語り(謎の男)
 「いいかげん、出て来たらどうだ!」
◆ ヒミコ(ヒミコ霊感探偵の所長)
 「バカな女ね。夢二が死んだほうがいいと思えば、代わりに殺しさえする。
 あんたがいくら夢二を好きになっても、夢二はあんたを好きにならないよ。」
◆ 夢二(大正時代の叙情画家)
 「好きにならない。お前なんか絶対に!僕は美しいものにしか興味はない。」
◆ お紺(謎の女)
 「彦乃さんのどこが美しいの?あなたを裏切って、あなたの嫌いな男に抱かれた
 彦乃さんの!私はあなたを一番愛しているの。だから後一年待って…。
 一年あれば、あなたの遺伝子は書き換わる。そうしたらあなたは私を好きになる。」

 夢二はお紺の言葉に怒り狂い、お紺を刺し殺してしまう。が、お紺は「勝った!彦乃さんはあなたの手で
 殺してももらえなかった…でも…私は…。」笑みを浮かべ、幸せを感じながら息絶える。
 そして、夢二もまたヒミコの手によって死んで行った。
◆ヒミコの謎解き◆ ◆ ヒミコ(ヒミコ霊感探偵事務所の所長)
 「もう、十分だろ。お前の望んだシュミレーション・ゲームは面白くないよ!」
◆ 坊屋(山路しのの婚約者)
 「良く分かりましたね。人は愛すべき人を愛さなくちゃいけないんだ。夢二は彦乃
 が愛するに値しない男だ。だから僕が過ちを正そうとしたんだよ。」

 ヒミコは今までの謎を解き明かす。
 「こいつは愛する彦乃をクローン人間として蘇らせた。だが、クローン人間である彦乃が夢二を
 愛している事に気付いた彼は彦乃を殺した。だが、彦乃の心を自分の物にしたいと思い、夢二と
 夢二に捨てられたお紺を蘇らせ、夢二から彦乃への愛を消そうとした。
 その為にお紺と取引をして惚れ薬(匂い)を夢二に飲ませた。
 しかし、予想外の展開で囚われていたシノさんが夢二を好きになってしまった。
 そして、この馬鹿は逆上してシノさんを殺した。しかし死体が見付かっては行方不明を演出出来ない。
 そこで、何の関係も無いサヨさんを誘拐し、いかにもシノが生きているかのように見せかけた。しかし、
 幻想は作れても死体は作れない。そこで、シノさんの死体の代わりを作る為にサヨさんを殺したのさ。
 そして、後でサヨさんの死体がシノさんと分からない様に、霧を出して、死体を隠した。
劇団☆RIN 第31回公演
『 霧の中 』
(平成14年12月15日 サールナートホール於)
〜 開 演 〜