●● 担当者のうんちく ●●           

金山寺と白蛇伝     2013.08.10

以前、静岡市の主催する海外商談会で台湾の会社宛に商談のお礼メールを送ったところ、返信メールに次のような物語が紹介されていました。

金山寺と白蛇伝
四川省・峨眉山の上にある清風洞に住む白蛇の精・白娘子は、お供の青蛇の精と共にお嬢様の白素貞と下女の小青に変身して人間界の西湖に観光に来た。そこで白娘子は人間界に住む書生の許仙と出会い、彼と相思相愛の仲に。やがて、二人はは夫婦となって幸せに暮らし始めたが、金山寺の和尚・法海は白娘子の正体が人間でないことを見抜き、彼女を雷峰塔の下に閉じ込めてしまう。

…と、ここまでしか書かれていませんでした。ああ、続きが知りたい!弊社の主力商品のルーツとなる場所が舞台となった物語ですからねぇ。有名な歌劇だそうですから一度観てみたいものです。

メールにはこんなお言葉も

お手紙ありがとうございます。
この度、静岡訪問で一番印象に残ったのは金山寺味噌です。何百年前から日本に伝えて、今日まで続けて作っているものに感動しました。商売に繋がることは難しい所はありますが、心に残りました、金山寺味噌は忘れません、頑張って下さい、何百年、何千年も。

ありがたいお言葉です。日本に伝わって約七百年、その土地の風土によって様々な形態に変化してきた金山寺(舐め味噌)をこれからも永く造っていこうと思っています。


そもそも金山寺みそ って?     2010.02.19

時々立ち寄る居酒屋の女将は北海道出身。話の中で「金山寺みそって何?見たことも聞いたこともない!」といいます。彼女は静岡に来て20年近いのですが、「知らない」というのです。

そういえば金山寺の基礎知識は紹介してなかった・・・。ではあらためて

金山寺みそは、小麦と大豆から麹を造り、塩水と共に仕込み、茄子、瓜などの野菜を合わせた風味豊かな食品です。いわゆるなめ味噌で、ご飯にのせて、お茶漬け、酒の肴に とおかずとして食べます。(普通味噌のように味噌汁にすると残念なことになります)

起源に関しては諸説ありますが、鎌倉時代の僧・覚心が中国での修行のかたわら径山寺味噌の製法を習得し、それを紀伊の国に伝えたという説が有力です。その後、各地に伝わり、様々な製法で後世に伝えられました。静岡地方の金山寺みそは戦国時代に武田の武将・穴山梅雪が甲斐の国に伝わる金山寺みそを駿河に伝えたといわれています。


白いつぶつぶは何?    2009.10.01

常連のお客さんから「金山寺の中に白いつぶつぶがあるんだけれど…」といわれることがあります。スワッ!異物混入?恐々と現物を観察します。するとウチの社長はニヤッと笑顔で説明を始めます。

これはチロシンというアミノ酸の結晶です。無害の、というより有用成分です。水煮タケノコの白いモロモロとしたものがわかりやすいですかね。他には大豆、卵黄、チーズなどに含まれています。チロシンは脳を活性化させてドーパミンやノルアドレナリンなどの神経伝達物質の原料になるんです。

安心して召し上がってください。

しかし、お客様は目の付け所が専門家のようですね。これからもご愛顧願います。

とまあ、社長は知識を披露できてご満悦、お客様をヨイショして話しは終わります。

チロシンに限らず金山寺はアミノ酸を多く含んでいます。積極的に食べてみて下さい。


小麦も大豆もいっしょに醸す   2009.06.23

金山寺みそと普通味噌の違いは?

普通味噌は麦や米でこうじを作り、それを大豆にまぜて醸造します。金山寺みそは麹をまるごと熟成させ、調味したものです。

    

フジモ印金山寺みそは麦と大豆をいっしょに麹菌をつけます。上の写真、大粒のかたまり(矢印)が大豆で、麹菌が繁殖して白く見えます。(小さい粒は小麦)

こうすることにより甘味成分や旨味成分が生成し、味わい深い金山寺みそができるのです。また八丁味噌にも似た独特の風味もうまれます。


 ダブダブはいい!    2008.11.01

 お客様や取引先から「国産の金山寺はないの?」。ここのところの「食の不安」からか問い合わせが増えています。試験製造したことはあるんですが・・・。

 現在、主原料の小麦はアメリカ産ウエスタン・ホワイト種(WW、通称ダブダブ)を使っています。「ホワイト」とあるように白色でタンパク質の少ない軟質小麦です。加工すると口当たりのよい、きれいな黄金色の金山寺になります。普通味噌に比べ熟成期間が短く、全麹で仕込み、食感をある程度残すという金山寺にピッタリな麦といってイイでしょう。

 一方国内産は有色種の中質小麦が主流です。これを加工すると、現製品より硬く、黒っぽくなってしまうのです。

アメリカ産
ウエスタンホワイト
国内産の主流種
ホクシン

 製法の確立、原料の安定供給など課題は多いのですが、「お客様のニーズに合った商品を」と日々考えております。


 化学調味料?   2006.03.12

 最近は「アミノ・サプリ」とかでアミノ酸がブームとなっています。でも、アミノ酸はひとつの物質を表すと思っていたり、特別な成分だと思っていたりとよく知らないことが多いようです。

 アミノ酸は窒素を含む有機化合物で体を構成する基本的な物質のひとつです。ヒトの体を構成するタンパク質は何種類かのアミノ酸からできています。そのなかで摂取でしか得られないものを必須アミノ酸といいます。

 そんなアミノ酸系の調味料にグルタミン酸ナトリウムがあります。あの「味の素」ですね。100年ほど前、池田菊苗博士によって発見され、やがて商品化されたものです。これが「化学調味料」だとして嫌われているんです。以前ある試食会で「この○○は美味し過ぎます。グルソ(俗称)を使っていますね」なんて意見も出るほどです。(ちなみに、この商品はグルソを添加していなく、その業者さんはニヤリ)

 その製法は初期の抽出法から合成法となり、現在はグルタミン酸生成菌による発酵法へと変ってきています。つまり化学を利用したものではなくなっています。何か化学というとマッドサイエンティストの狂気的なイメージがあっていけませんねえ。だから「バイオ調味料」と云えばイメージは回復すると思います。味の素さん「麦からビール、サトウキビから味の素」じゃあイマイチわかりづらいとおもいますよぉ。


 ソルビット って何?    2005.08.23

 以前、沼津で漬物組合の試食会に参加したときのことです。ある主婦から「表示に『ソルビット』ってありますけど、これは保存料ですか?ソルビン酸じゃあないの?」と質問されました。それでは「ソルビット」について説明しましょう。

 ソルビットはD‐ソルビトールの簡略名で糖アルコールと呼ばれる物質のひとつです。糖アルコールの仲間には他にマルチトール、キシリトール、エリスリトールなどがあります。一般に低カロリー、難消化性、非う触性(虫歯の原因になりにくい)及び血糖値の急激な上昇を引きおこさないなどの生理的特性や、熱、酸およびアルカリに強いなどの加工特性などがあります。

 ソルビットの語源はナナカマド(フランス語でSorbe)。その実から結晶として取り出されたのが最初です。現在は、澱粉を加水分解したブドウ糖を原料にしています。現在日本で最も多く使用されている重要な化合物で、年間需要130,000tにも及ぶ糖アルコールの王様である。自然界にも比較的多く存在し、海藻や木の実、蜜入りリンゴの蜜の部分などに含まれている。甘くて吸湿性のある白い粉末なので、この特性を生かして、食品では甘味料、保湿剤、柔軟剤、たん白質変性防止剤、ガムの軟化剤などに使われています。この他、化粧品、医薬品、繊維などにも利用されています。

 ソルビットは砂糖の60%の甘味、カロリーも75%程度。砂糖に比べ熱に強く、劣化しにくいため食品業界で広く使用されています。また高い保湿作用を持ち、「しっとりした食感」を出すための保湿剤としても広く使われています。わが社で使っているのはD‐ソルビトール(白色粉末)生成過程の濃縮液です。シロップ状(ゆるい水飴状)で漬け液などに使用します。その保湿力で金山寺に「なめらかさ」を加えます。

でも注意することが…
大腸に糖アルコールが多量に流れ込むと、大腸本来の役割である水の吸収が阻害されてしまう。(消化物の保湿性を高めてしまう)吸収されなかった余分な水分は便と共に排出され緩下、すなわち下痢を引き起こします。つまり糖アルコールである以上、摂取するとおなかが緩くなるのは避けられない現象なのです。

ソルビン酸も
防腐剤のソルビン酸もナナカマドの実から発見されたので、名前が似てしまったんです。


 「漬かる」って何だ   2002.11.15

 そもそも野菜を漬けるってのはどういうことか。漬物の種類によって異なるらしいが、基本的には次のようだ。

 植物細胞の外側は固い(といっても鉄のようなものではない)細胞壁があり、その内側に細胞膜に包まれた原形質があります。細胞膜は半透性で塩分などの濃度を維持し、原形質を安定した状態に保ちます。これに食塩、砂糖などの高濃度溶液に触れると、細胞膜が安定を維持しようと水分(細胞液)を外に出します。(浸透圧の利用)さらに水分が出て行くと「もうダメだ」と細胞膜は機能を失います。すると今度は外の溶液が細胞内に入ってきます。この状態を漬かるといいます。細胞膜破壊が3〜4割の場合は浅漬、7割以上でよく漬かった状態 というそうです。細胞液が抜けた細胞は柔らかくなり、歯切れが良くなり、食べやすくなる。美味しい漬物の出来上がりです。


 夏バテには生姜    2002.08.07

 いやあ、暑いですね。静岡では連続24日真夏日だそうです。ジッとしていても汗が出るし、夜は寝苦しいし、グッタリしますね。「夏バテ宣言」したくなります。それを解決してくれそうな食品を探してみると・・・ありました梅干し。とこれは前にやったと・・・そうだ!しょうだ!生姜だ!

 生姜の中に含まれているショウガオールジンゲロンという成分が食欲を促進したり、健胃作用があります。食べ物の口当たりが悪いときや脂物を食べた後に、ガリを食べるとすぐにその効果を実感できます。

 七月のあるお昼のTV番組(「ファイナルアンサぁの男が司会)で、「夏のイライラ、夏バテの主な原因は自律神経の乱れで、それを直す必要がある。それには生姜の砂糖漬がお勧め」てなことをいっていました。奥様に絶大な人気の番組ですから生姜砂糖漬を作った人もいたでしょう。でも「作るのは面倒くさいワァ」という方には甘酢生姜があるじゃないですか。お寿司屋でだされるガリです。生姜と砂糖に酢まで加わっているんですから。生姜砂糖漬より一枚上手。食卓にチョットあるだけで食欲が出ることウケアイです。

☆生姜の選び方と保存
ひねしょうがは皮の色があめ色で根茎がしまっているもの、新しょうがは肌が白くて芽やかまが真っ赤なものを選びます。乾燥すると香りや味が失われるので湿ったキッチンペーパーで生姜をくるみラップを巻き冷蔵庫で保存します。


 酸っぱいは成功の素   2002.07.10   

 梅雨明けまでもう少し。「何もしなくても疲労感がある」そんな暑い夏がやってきます。これを解消する物質の話しをしましょう。

 昔から「すっぱいものを食べると疲れが取れる」と云われます。そうそう、数十年昔、部活動の合間、美人マネージャーの作ったレモンスライスは疲れを吹っ飛ばしてくれました。これは彼女が美人だったからではなく、レモンに含まれるクエン酸の効用だったのです。クエン酸は、炭素・酸素・水素原子から成る有機酸のひとつで、体のエネルギーを作るのに関わる物質です。(高校生物で「TCA回路」ってのをやったの憶えていますか?) 爽やかな酸味は脳の疲労感も和らげてくれます。長野オリンピックで大活躍した清水、船木、上村らの選手も「体調維持のためにクエン酸を摂取していた」と聞いています。

 さて、当社の製品でクエン酸といえば梅干しです。梅干しは5%程度のクエン酸を含んでいます。昔から云われる「暑気あたりに効く」はクエン酸によるものでしょう。汗で失われるミネラルの補給にもひと役かいます。また抗菌力があり、夏の行楽には梅干しのオニギリが定番です。