AKB48選抜総選挙の分析≪神7の崩壊≫

 

「関心が二極化し複雑化するAKB48選抜総選挙」なる論文を見つけたため、これを参考に、はるか総合研究所として別角度から分析を行った。

 

論文名:関心が二極化し複雑化するAKB48選抜総選挙

著者:CuteStrategy

URLhttp://biz-journal.jp/2014/06/post_5114.html

 

対象データ:第6回選抜総選挙(2014

第6回選抜総選挙(2014)における全データを使用したいところであるが、第80位までの数値データしか持ち合わせていないため、第80位までの票が対象となる。

 

1.パーセンタイル順位と累積得票数指数

まず初めに選抜総選挙第1位の渡辺麻友から第80位大島涼花までのパーセンタイル順位を求めた。表1の通り。もし仮にファンの関心度が順位に応じて比例しているならば、パーセンタイル順位は理論値だということが出来る。

 次に累積得票数指数を求めた。累積得票数指数とは該当順位のメンバーが下位から見て、累積でどれだけ得票しているかという指数である。第1位渡辺麻友は第1位から第80位までの票を累積で得票しているため、100%となる。表1の通り。

 両者をグラフに表したのが図1となる。X軸は順位、Y軸は%である。順位が上位並びに下位ほどパーセンタイル順位と累積得票数指数が近づき、逆に中位はパーセンタイル順位と累積得票数指数が離れる。これが意味することは、中位よりも上位と下位にファンの興味が向けられているということである。ファンとしては誰が1位を獲得するのかということと下位における選抜入りに対して関心が高い。CuteStrategyは「ライト・ファンや一般層の総選挙の興味はTOP3争いに集中している。コア・ファンの興味は20位以下の下位メンバーに投票を集中させ競争が激化している。ライト・ファンと一般層の興味とコア・ファンの興味が上位と下位に向けられ二極化したため、4位〜19位までの中間位の興味が薄れてきている。」と分析している。

図1.パーセンタイル順位と累積得票数指数

X軸・・・・順位 Y軸・・・・%

 

 次にパーセンタイル順位と累積得票指数の離れ具合について分析した。離れ具合の平均は19.67である。平均を上回っている(離れている)のは表1の通り第7位から第52位である。AKB48選挙では第1〜16位シングル選抜、第17〜32位アンダーガールズ、第33〜48位ネクストガールズ、第49〜64位フューチャーガールズ、第65〜80位アップカミングガールズと選抜される。平均から離れているのは第7位(シングル選抜後半)から第52位(フューチャーガールズ前半)である。このことからアンダーガールズ及びネクストガールズへの興味が薄れていることが分かる。ちなみに平均を上回り始める第7位は非公式ではあるが「神7」である。ファンの関心は既に「神7」から離れ始めている。もともと「神7」は第1回総選挙と第2回総選挙の第1〜7位のメンバーが変わらなかったことから「神7」と呼ばれた。しかしながら最近は「神7」のメンバーも交代し、今や「神」ではなくなっていることが、「神7」への興味低下につながっていると思われる。

表1.パーセンタイル順位と累積得票指数

順位 氏名 パーセンタイル順位(A) 累積得票数指数(B) A-B
1 渡辺麻友 99.375 100.00 -0.63
2 指原莉乃 98.125 92.98 5.14
3 柏木由紀 96.875 86.75 10.13
4 松井珠理奈 95.625 82.17 13.46
5 松井玲奈 94.375 78.18 16.20
6 山本 彩 93.125 75.11 18.01
7 島崎遥香 91.875 72.13 19.75
8 小嶋陽菜 90.625 69.16 21.46
9 高橋みなみ 89.375 66.40 22.97
10 須田亜香里 88.125 63.88 24.24
11 宮脇咲良 86.875 61.77 25.11
12 宮澤佐江 85.625 59.77 25.86
13 横山由依 84.375 57.80 26.57
14 生駒里奈 83.125 56.03 27.09
15 柴田阿弥 81.875 54.27 27.60
16 川栄李奈 80.625 52.55 28.07
17 松村香織 79.375 50.83 28.54
18 渡辺美優紀 78.125 49.17 28.96
19 北原里英 76.875 47.58 29.29
20 入山杏奈 75.625 46.06 29.57
21 児玉 遥 74.375 44.57 29.81
22 峯岸みなみ 73.125 43.09 30.03
23 木崎ゆりあ 71.875 41.64 30.24
24 武藤十夢 70.625 40.31 30.31
25 森保まどか 69.375 38.99 30.38
26 高城亜樹 68.125 37.80 30.32
27 朝長美桜 66.875 36.73 30.14
28 高橋朱里 65.625 35.69 29.94
29 山田菜々 64.375 34.65 29.72
30 大矢真那 63.125 33.63 29.50
31 高蝟セ音 61.875 32.66 29.21
32 加藤玲奈 60.625 31.70 28.93
33 藤江れいな 59.375 30.74 28.64
34 二村春香 58.125 29.82 28.31
35 梅田彩佳 56.875 28.90 27.97
36 小嶋真子 55.625 27.99 27.63
37 古川愛李 54.375 27.10 27.28
38 田島芽瑠 53.125 26.25 26.87
39 穴井千尋 51.875 25.42 26.45
40 木下有希子 50.625 24.60 26.03
41 矢倉楓子 49.375 23.77 25.61
42 多田愛佳 48.125 22.95 25.17
43 白間美瑠 46.875 22.16 24.72
44 磯原杏華 45.625 21.38 24.25
45 田野優花 44.375 20.60 23.77
46 岩永亞美 43.125 19.83 23.29
47 佐々木優佳里 41.875 19.06 22.81
48 本村碧唯 40.625 18.33 22.30
49 岩佐美咲 39.375 17.61 21.77
50 木本花音 38.125 16.90 21.23
51 岡田奈々 36.875 16.20 20.68
52 倉持明日香 35.625 15.50 20.13
53 市川美織 34.375 14.82 19.55
54 山田みずほ 33.125 14.16 18.96
55 古畑奈和 31.875 13.50 18.37
56 大場美奈 30.625 12.86 17.76
57 石田晴香 29.375 12.22 17.15
58 上西 恵 28.125 11.59 16.53
59 藪下 柊 26.875 10.97 15.91
60 坂口理子 25.625 10.35 15.28
61 小谷里歩 24.375 9.78 14.59
62 西野未姫 23.125 9.21 13.91
63 内山奈月 21.875 8.65 13.22
64 松岡菜摘 20.625 8.09 12.53
65 永尾まりあ 19.375 7.54 11.84
66 岩立沙穂 18.125 6.99 11.13
67 村重杏奈 16.875 6.47 10.40
68 梅本まどか 15.625 5.96 9.66
69 山内鈴蘭 14.375 5.46 8.92
70 前田亜美 13.125 4.95 8.17
71 田名部生来 11.875 4.46 7.41
72 吉田朱里 10.625 3.98 6.65
73 矢方美紀 9.375 3.50 5.88
74 阿比留李帆 8.125 3.03 5.10
75 斉藤真木子 6.875 2.58 4.29
76 小笠原茉由 5.625 2.14 3.49
77 小林亜実 4.375 1.70 2.67
78 宮崎美穂 3.125 1.27 1.86
79 駒田京伽 1.875 0.84 1.03
80 大島涼花 0.625 0.42 0.21
  平均     19.67

 表中のピンク色のセルが平均を上回っている。

 

 

2.近似直線・曲線(理論値)

次にパーセンタイル順位と累計得票数指数グラフに近似直線・曲線を入れた。図2の通りである。特に多項式(累積得票数指数)y=0.0142-2.1508+86.986を見ていただきたい。この多項式は今回計算した累積得票数指数の理論値といえる。なおこれはExcelが自動計算してくれた。このグラフを見ると、左から約1/4が理論値より上、次の約1/4が理論値より下、次の約1/4が理論値より上、最後の約1/4が理論値より下となっている。これだけ理論値を実際の結果には差がある。

 

図2.近似直線・曲線(理論値)

X軸・・・・順位 Y軸・・・・%

 

表2.累積得票数指数と理論値の差

順位 氏名 累積得票数指数(B) 理論値(多項式)(C) B−C
1 渡辺麻友 100.00 80.88 19.12
2 指原莉乃 92.98 78.90 14.08
3 柏木由紀 86.75 76.95 9.80
4 松井珠理奈 82.17 75.02 7.15
5 松井玲奈 78.18 73.12 5.06
6 山本 彩 75.11 71.24 3.87
7 島崎遥香 72.13 69.39 2.74
8 小嶋陽菜 69.16 67.57 1.60
9 高橋みなみ 66.40 65.77 0.63
10 須田亜香里 63.88 63.99 ▲ 0.11
11 宮脇咲良 61.77 62.25 ▲ 0.48
12 宮澤佐江 59.77 60.52 ▲ 0.76
13 横山由依 57.80 58.83 ▲ 1.03
14 生駒里奈 56.03 57.16 ▲ 1.12
15 柴田阿弥 54.27 55.51 ▲ 1.24
16 川栄李奈 52.55 53.89 ▲ 1.34
17 松村香織 50.83 52.30 ▲ 1.46
18 渡辺美優紀 49.17 50.73 ▲ 1.56
19 北原里英 47.58 49.19 ▲ 1.60
20 入山杏奈 46.06 47.67 ▲ 1.61
21 児玉 遥 44.57 46.18 ▲ 1.61
22 峯岸みなみ 43.09 44.71 ▲ 1.62
23 木崎ゆりあ 41.64 43.27 ▲ 1.63
24 武藤十夢 40.31 41.85 ▲ 1.54
25 森保まどか 38.99 40.47 ▲ 1.47
26 高城亜樹 37.80 39.10 ▲ 1.30
27 朝長美桜 36.73 37.76 ▲ 1.03
28 高橋朱里 35.69 36.45 ▲ 0.76
29 山田菜々 34.65 35.16 ▲ 0.51
30 大矢真那 33.63 33.90 ▲ 0.27
31 高蝟セ音 32.66 32.67 ▲ 0.00
32 加藤玲奈 31.70 31.46 0.24
33 藤江れいな 30.74 30.27 0.47
34 二村春香 29.82 29.11 0.71
35 梅田彩佳 28.90 27.98 0.92
36 小嶋真子 27.99 26.87 1.12
37 古川愛李 27.10 25.79 1.31
38 田島芽瑠 26.25 24.73 1.52
39 穴井千尋 25.42 23.70 1.72
40 木下有希子 24.60 22.70 1.90
41 矢倉楓子 23.77 21.72 2.05
42 多田愛佳 22.95 20.76 2.19
43 白間美瑠 22.16 19.83 2.32
44 磯原杏華 21.38 18.93 2.45
45 田野優花 20.60 18.05 2.55
46 岩永亞美 19.83 17.20 2.63
47 佐々木優佳里 19.06 16.38 2.69
48 本村碧唯 18.33 15.57 2.75
49 岩佐美咲 17.61 14.80 2.81
50 木本花音 16.90 14.05 2.85
51 岡田奈々 16.20 13.33 2.87
52 倉持明日香 15.50 12.63 2.87
53 市川美織 14.82 11.96 2.87
54 山田みずほ 14.16 11.31 2.85
55 古畑奈和 13.50 10.69 2.82
56 大場美奈 12.86 10.09 2.77
57 石田晴香 12.22 9.52 2.70
58 上西 恵 11.59 8.98 2.62
59 藪下 柊 10.97 8.46 2.51
60 坂口理子 10.35 7.96 2.39
61 小谷里歩 9.78 7.50 2.29
62 西野未姫 9.21 7.05 2.16
63 内山奈月 8.65 6.64 2.01
64 松岡菜摘 8.09 6.25 1.85
65 永尾まりあ 7.54 5.88 1.66
66 岩立沙穂 6.99 5.54 1.45
67 村重杏奈 6.47 5.23 1.25
68 梅本まどか 5.96 4.94 1.02
69 山内鈴蘭 5.46 4.68 0.78
70 前田亜美 4.95 4.44 0.51
71 田名部生来 4.46 4.23 0.24
72 吉田朱里 3.98 4.04 ▲ 0.06
73 矢方美紀 3.50 3.88 ▲ 0.38
74 阿比留李帆 3.03 3.74 ▲ 0.72
75 斉藤真木子 2.58 3.63 ▲ 1.05
76 小笠原茉由 2.14 3.55 ▲ 1.41
77 小林亜実 1.70 3.49 ▲ 1.79
78 宮崎美穂 1.27 3.46 ▲ 2.19
79 駒田京伽 0.84 3.45 ▲ 2.61
80 大島涼花 0.42 3.47 ▲ 3.05

表中のピンク色のセルが理論値を下回っている。

 表2の通り、具体的な順位では第1〜9位が理論値より上、第10〜31位が理論値より下、第32〜71位が理論値より上、第72〜80位が理論値より下となっている。理論値と比較すると、第1〜9位に対してファンは興味あり、第10〜31位が興味なし、第32〜72位が興味あり、第72〜80位が興味なしといった具合である。

 選抜ごとに見ると、シングル選抜の上位は興味あり、シングル選抜の下位は興味なし、アンダーガールズは興味なし、ネクストガールズとフューチャーガールズは興味あり、アップカミングガールズは興味なしといった具合である。

 

3.考察

 上記の分析から考察する。AKB48ファンといっても、その中には様々な方がいる。CuteStrategyの言葉を借りれば、一般層、ライト・ファン、コア・ファンとなり、それぞれの興味対象が分かれている。トップ争いに興味があるのは一般層やライト・ファンであると推測できる。一般層やライト・ファンはAKB48のメンバーも多く知っているわけではなく、テレビ等に多く出演するメンバーを知っているに過ぎない。また、一般層は楽曲もテレビやラジオで流れるくらいの知識しかない。ライト・ファンはテレビやラジオで流れる楽曲を聞いてCDやDVDを購入し、一般層よりも多くの楽曲を知っている。一般層やライト・ファンの多くは、その保有している知識の中で起こっている選抜総選挙のみに興味が行き、自分が知らないメンバーの順位や、シングル選抜以外のテレビに出演しない選抜組には興味が行かない。そのため、自分が知っているメンバーの名前が登場する上位争いに興味が行くことになる。

 今回の選抜総選挙では、AKB48渡辺麻友、SKE48松井珠理奈、NMB48山本彩、HKT48指原莉乃の4人を前面に出し、誰が第1位を獲得するのかプロモーション戦略を行った。こういったプロモーションが功を奏し、一般層やライトファンには分かりやすかったのではないかと思う。そのため、一般層やライトファンはトップ争いに興味が行ったのだと思う。

 また今回の選抜総選挙で第1位を獲得した渡辺麻友の得票数は約16万票であり、全てCDの投票権から投票されたと仮定すると、選抜総選挙で第1位を獲得するためには2億円以上かかることになる。この金額を一人のファンが支えることはできない。コア・ファンもさることながら、一般層やライト・ファンの投票により渡辺麻友は第1位を獲得したのだ。

 AKB48のコンセプトの一つに「ファンが育てるアイドル」というものがある。AKB48はアイドルといっても、完成されたアイドルではなく、未完成のままデビューし、ファンが育てていくのだ。数年前の選抜総選挙までは、トップ争いにおいても一人一人が寄与できる割合は大きかった。しかし最近の総選挙では寄与率は小さくなっており、前述した通り、トップ争いへの寄与率はわずかなものとなっている。トップ争いではなく、下位選抜争いにおいては、現在も一人一人が寄与できる割合は比較的大きい。コア・ファンはトップ争いよりも、自分が投資できる範囲で寄与できるメンバーに投票する。そのメンバーが選抜入りすれば、コア・ファンはメンバーを同一視でき達成感は大きくなる。こういった背景から選抜総選挙における上位と下位にファンの票が集中し、中位には票が集まらなかったと推測できる。

 中位の中でも更に見ると、「1.パーセンタイル順位と累積得票数指数」と「2.近似直線・曲線(理論値)」で興味が薄れていると分析された順位に共通する第10〜31位への興味が薄れている。CuteStrategyの分析では第1〜3位が得票数アップ、第4〜19位が得票数ダウン、第20位以降が得票数アップとしており、多少の違いはあるにせよ、当研究所の分析と結果は一致している。上位と下位に対する興味、中位に対する興味の薄れ、という当研究所の結論は、CuteStrategyの分析により更に補強されたことになる。

 最後に、前述したが、ファンの関心は既に「神7」から離れ始めている。もともと「神7」は第1回総選挙と第2回総選挙の第1〜7位のメンバーが変わらなかったことから「神7」と呼ばれた。しかしながら最近は「神7」のメンバーも交代し、今や「神」ではなくなっていることが、「神7」への興味低下→崩壊につながっていると思われる。ファンにとってメンバーが「神7」に入るかどうかは、総選挙の焦点にはなっていない。「神7」に対して大変興味がある当研究所にとって、驚愕の事実となった。

 


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