2014FIFAワールドカップブラジル大会2
ドイツの優勝により、最終成績が出ましたので、最終成績による分析をしていきます。
1.「FIFAランキング」と「最終順位」相関
まずはじめに、「FIFAランキング」と「最終順位」の相関を計算しました。
「FIFAランキング」−「最終順位」相関係数r=0.663
となり、相関が認められた。これにより「FIFAランキング」が高いチームほど、ワールドカップブラジル大会において好成績をおさめたといえる。グループ
リーグだけの相関係数r=0.635よりも相関係数が高くなっており、決勝トーナメントにおいても、「FIFAランキング」が結果に影響を与えていること
が分かる。
2.「FIFAランキング」と「最終順位」χ2(二乗)検定による有意差検定
次に「FIFAランキングは決勝トーナメントの結果には影響しない。」という仮説を立て、分析を行った。
実際の結果 勝ち10試合 引き分け4試合 負け2試合
※FIFAランキングが上のチームから見た結果
期待値 勝ち5.3試合 引き分け5.3試合 負け5.3試合
※期待値は決勝トーナメント全16試合を3(勝・分・負)で除した数字
FIFAランキングが結果に影響しなければ、それぞれが発生する確率は同じになるはずだ。
結果と期待値についてχ2検定を行った。
χ2=6.5 自由度2
ということで、5%水準で有意差が認められた。
その結果、統計学的に「FIFAランキングが高いチームほど勝利を掴む」ということが証明された。
GLも決勝トーナメントも同じように有意差が認められ、結果として 「FIFAランキングが高いチームほど勝利を掴む」という結果になったが、GLは1%水準、決勝トーナメントは5%水準であった。決勝トーナメントの方 が、偶然が入り込む確率が若干高い結果となった。これはGLよりも決勝トーナメントの方が、チーム力が拮抗していることを示している。引き分けが少なかっ たGLに比べて、決勝トーナメントに入ったとたん、延長戦やPK戦が急激に増えた。チーム力が拮抗している証拠だ。このことから、「本当の意味でのワール ドカップとは決勝トーナメントからだ。」と言える。グループリーグは前哨戦に過ぎず、言い方を変えると、グループリーグは「世界最終予選」、決勝トーナメ ントが「FIFAワールドカップ」という図式となる。日本代表はアジア予選を突破したが、「世界最終予選」に敗退し、「FIFAワールドカップ」には出ら れなかったと解釈できる。ワールドカップに出られるように頑張りましょう。
3.各連盟間成績t検定
アジアが弱かったとの声を受け(自分が受けたわけではないが)、各連盟間の成績を分析した。
順位 | 連盟 | 平均順位 | 標準偏差 | チーム数 |
1位 | 南米 | 8.2 | 5.1 | 6 |
2位 | 欧州 | 14.8 | 8.2 | 13 |
3位 | 北中米 | 16.0 | 9.0 | 4 |
4位 | アフリカ | 21.6 | 6.5 | 5 |
5位 | アジア | 28.5 | 1.1 | 4 |
この結果を見る限り、各連盟の中で最も成績が良かったのは南米(平均順位8.2)である。逆に最も成績が悪かったのがアジア(平均順位28.5)である。
南米はエクアドルを除く5チームが決勝トーナメントに進み、唯一GL敗退のエクアドルでさえ、アジアで最も成績が良かったイラン(28位)を上回る17位であった。その他のアジアの成績は日本(29位)、韓国(27位)、オーストラリア(30位)であり、下位独占状態であった。そこで、南米とアジアだけでなく、その他の連盟も含めて、統計学的に差があるのかを計算した。
その結果統計学的に差が認められたのは下記の通りである。
南米(1位)−アジア(5位) t=6.96 1%水準で有意差有り
欧州(2位)−アジア(5位) t=3.13 1%水準で有意差有り
南米(1位)−アフリカ(4位) t=3.47 1%水準で有意差有り
アジアは南米と欧州とは統計学的に有意差があるが、北中米とアフリカに対しては有意差はない。北中米とアフリカとは統計学的な差はなく、偶然の結果の範囲内である。統計学的には、もう一回同じ条件でワールドカップを開催した時には順位が入れ替わる可能性があることを示している。アジアは南米と欧州とは順位が入れ替わることはない。それだけ明確な差が出ている。
アフリカは南米とは統計学的に有意差があるが、欧州・北中米・アジアとは有意差はない。欧州・北中米・アジアとは統計学的な差はなく、偶然の結果の範囲内である。アフリカはもう一回同じ条件でワールドカップを開催した時には、欧州・北中米・アジアとは入れ替わる可能性はあるが、南米とは順位が入れ替わることはない。アフリカと南米は明確な差があり、もう一度同じ条件でワールドカップを開催しても順位が入れ替わることはない。
正直なところ、アジアはダントツの最下位であると思うのだが、何故北中米とアフリカとは統計学的な差が生じないだろうか?北中米とアジアの平均順位を比較すると12.5の差がある。その一方でアジアの標準偏差が1.1であるのに対して、北中米の標準偏差が9.0あることが大きな要因である。標準偏差が大きいということは、順位にバラツキがあるということであり、もう一回やった時に、北中米は大幅に順位を落とす可能性があるということを示唆している。アフリカとアジアの差は平均順位が6.9であり、標準偏差の差も大きく、北中米の時と同様に順位が大きく変わる可能性がある。そのためアジアは北中米とアフリカとは統計学的な有意差は見られないのであり、もう一度同じ条件でワールドカップを開催した際には、順位が入れ替わる可能性があるという結果となった。
あと一つ付け加えるならば、最下位はアジアではなくオセアニアである。オセアニアは1チームも本戦に出場することが出来なかった。