たいした動機もなく始めたスキューバダイビングそして水中写真であったが、気がついてみると、
休日の時間とエネルギーの大半をこれに注ぎ込むことになっていた。
初めて海に潜った時、まず海水が想像以上にショッパイものだと感じ、
潜り終わって、一歩、一歩と体が海水からで出るに従い、それまで無重力
状態に慣れた両足に体重がズシッ、ズシッと乗ってくるのを感じて、これが
重力だと思った。魚のことは何も覚えていない。
私が、ホームグラウンドとしている三保は、お世辞にもきれいとは言
えない海である。透明度は平均すると2〜3mである。一度潜れば、ほとん
どのダイバーは、もう二度と潜らないに違いない。
こんな私が、こんな海に夢中になってしまったのは、そこに棲む生物の
生態写真を撮ることがおもしろかったから、この一点に尽きる。
魚類は陸上動物に比べると行動が単純、本能だけで生きている、と思い
込んでいた。ところが実際に彼らの生活をのぞいてみると、陸上動物と変わら
ぬ複雑な社会があった。子育ては季節を選び、時間帯を選び、場所を選び、
思いもよらぬ子育法を生み出し、自分で巣作りをし、助け合い、自分や子供を
守るために威嚇し、擬態をし、生きるために捕食する。これらを見ていると本
能の一言では納得できなくなる。喜怒哀楽、意志、知能があると思わざるを得
ないのである。このことは、驚きであった。
そんな彼らの生活シーンを、写真に記録することは簡単ではないが、うま
くいった時はいい気分である。例えれば、バッターがピッチャーの投げる