◎09年4月


砂漠の狐を狩れの表紙画像

[あらすじ]

 ローレンス・チャップマンがオックスフォード大学在学中の1939年9月、ヒトラーがポーランドに進攻、イギリスは参戦した。 チャップマンはすぐさま志願し、王国戦車連隊を選んだ。 教練半ばでポリオによく似た病気に罹り、リハビリ中にフランスが降伏。 ようやく士官候補生訓練部隊を卒業し、パレスチナに着いたのは1942年初頭だった。 その頃、アフリカ戦線はロンメルに制圧されていた。

[採点] ☆☆☆

[寸評]

 第2次大戦中のアフリカ砂漠における戦いを描いた正統派の戦争冒険活劇で、史実に基づいたところが多いらしい。 砂漠の海における過酷な気象条件や、車両で走破することの困難さがリアルに描かれており、臨場感に富んでいる。 残念なのは、翻訳が少々読みづらいことと、最後のエピソードはともかく、主人公の人間的魅力が伝わってこなかったこと。 ロンメルを狙うという興味深い設定なのに、盛り上がりに欠けた。


アッチェレランドの表紙画像

[あらすじ]

 2010年代のアムステルダム。 マンフレッド・マックスはあるパーティーに出るためにやって来た。 彼は、ものになりそうなアイデアをひねり出し、ひと山当てられそうな連中に無償で提供する、恵与経済の実践者。 彼のかけているヘッドアップ・ディスプレイには、大量の情報が次々に流れていく。 翌日、ホテルの寝室のドアの外に小さな箱が。 中身は脳ミソがえぐり取られたネコの生首だった。

[採点] ☆☆☆

[寸評]

 いやはや、こんなに読むのに手強い本は初めてでした。 さぞや翻訳も大変だったろうと思うが、さすがサイバーパンク、意味の分からない言葉が多く、読んでいてもさっぱり頭に入ってこない。 作者のとてつもない想像力には感服するが、こんな小難しい未来社会はご免こうむりたいね。 雑誌読者の投票で決まるローカス賞の受賞作ということで、問題は読み手である私で、この小説を読む資格はなかったようです。


ラストランの表紙画像

[あらすじ]

 規子は田舎町の駅の近くの「摩耶」という名前のありふれたスナックに勤めている。 間もなく11時、客の老人を駅まで見送り店に戻る途中、最近時々来るようになった30過ぎの三木という男に背中をどやされる。 この男は嫌いだ。 店の中には、地元商店街の3人に、カラ元気のトオルとヒロシ、そして女主人の政子。 そこに、やはり最近顔を見せ始めた50代後半の永井という男が入ってきた。

[採点] ☆☆☆★

[寸評]

 最近はハードボイルドから時代小説に転向した感じの作者の短編集で、収録10作のうち8作は1988年から92年の作品。 乾いたタッチの、少々冷たい風が吹いているような作品が多く、いかにも志水辰夫だと感じさせるが、中に怪談めいたものが2作ばかりあり、興味をそそられる。 20から長いもので80ページ近くで、これはという話はないが、いずれも水準以上にまとめられ、しっかり読ませるのはさすが。


ひとりの表紙画像

[あらすじ]

 早川桃子と春日すみれ。 二人は山梨県の中学の同級生。 仲良しの二人は、バスで終点の温泉地を目指していた。 そこではすみれの母親の実家が温泉旅館を営んでいる。 渓谷沿いのカーブで体が宙に浮いたと感じ、次に気付くと、桃子はすみれの体の上に乗った状態で木にひっかかり、はるか下の谷底でバスが燃えている。 すみれは怪我がひどいようだが、体を動かすことができない。

[採点] ☆☆☆

[寸評]

 久しぶりだと思ったら、新津きよみの本は10年以上読んでいなかった。 本作は角川ホラー文庫の書き下ろしだが、ホラー色はさして強くない。 一人暮らしの女性の連続殺人事件の捜査の進展を軸に、桃子の不可思議な感覚?の挿話めいたものが挟まれて物語は進む。 短めでサクサク読め、十分な暇つぶしにはなるけれど、本来主軸となるはずの桃子とすみれの話はほんの少しで、事件との接点も描き方が浅い。


プラ・バロックの表紙画像

[あらすじ]

 クロハは県警機動捜査隊の女性刑事。 射撃で国体優勝の経験もある。 殺人事件の現場で捜査中、班長から臨港署警務課の手伝いを命じられ、しぶしぶ港の埋め立て地へ向かう。 契約者と連絡が取れなくなったレンタル冷凍コンテナの開扉の立ち会いの仕事。 職員が解錠し、署の女性警官と二人で中に入ると、ビニルに包まれた14体の遺体。 整然とした状況で、自殺の線が濃厚だが。

[採点] ☆☆☆★

[寸評]

 1988年から続いている日本ミステリー大賞の第12回新人賞受賞作。 全編スピーディでサスペンスに満ちた展開は、新人らしからぬ巧さを感じた。 ちょっと強引なところや、派手さを意識しすぎたところもみられるし、人物はかなり書き足りないという印象だが、娯楽性も高く、一気に読ませる。 登場人物をすべてカタカナ表記するのも、それなりの意図があるのだろうが、違和感があった。 何十人も死人が出るのもどうかな。


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