[寸評]
ライトコメディが得意な作者らしく気楽に楽しめる作品。
推進室の上司やアテネ村運営会社の市役所から天下った理事たちによる、いかにもな仕事ぶりや姿勢が笑わせる。
上司の顔色をうかがい、前例踏襲、予算消化に固執する彼らの姿は、当然ややデフォルメされてはいるものの、読者の期待どおりの動き。
あまりに定石すぎてそこが不満でもあるな、と思っていたら終盤は急展開。
平凡な題材だが、十分楽しませてくれる。
[寸評]
夜を徹して80Kmを歩くという高校生活の年に一度のイベントを舞台とした青春小説。
行事の違いこそあれ、ページを繰りながら誰もが自らの高校生活を想起してしまうようなノスタルジックな気持ちにさせられる。
派手な展開もなく、ただ歩くのに合わせ淡々と話は進むが、退屈な感じはない。
嫌みのない登場人物たちに加え、会話も自然で無理に背伸びしたような台詞がないのもいい。
結末の甘さも青春小説として許せる。
[寸評]
黒人に対する人種差別、貧困と犯罪の問題をストレートに取り上げた熱い物語。
きれいごとでない現実をどう生き抜くか、主人公に語らせ、読者に問いかける。
主人公も恋人に満足しているにもかかわらず、罪の意識を抱きながらマッサージパーラーに通ってしまう心の闇を持ち合わせている。
4つ星クラスの作品だが、最後には力で対抗するしかない、相手をねじ伏せるしかないというアメリカ流正義が感じられて減点。
[寸評]
少年の学問の師がすっぽんという奇天烈な設定を乗り越えれば、あとは不思議な妖怪変化ミステリーを楽しむことができる。
冒頭の仙薬の話などのほか全部で7話の短編集。
どれも40ページ程度の長さで謎解きの妙味などはないが、仙薬や身体に寄生する美女面、地中から掘り出した犬、33年に一日だけ覗いた者の願う相手が水面に映る井戸等々、妖異な趣向が面白い。
少々読みづらいが、いずれの幕切れもなかなか鮮やか。
[寸評]
この本の帯にある「姫君小説の新古典」というのは?だが、 江戸時代の天一坊事件をアレンジし、九州の小藩のおてんば姫君が大活躍する痛快時代小説。
おてんば、痛快の度合いがあと一歩という感じで、付き物の姫君の恋模様などはかなり不足気味。
それでも、江戸へ向かう道中で徐々に仲間を増やしていく様子や、忍者から正統な剣の闘い、結婚話から宝探しまで、盛り沢山の内容で、暇つぶしには十分な面白さではある。
[あらすじ]
都内の家電メーカーに勤めていた遠野啓一は9年前、東京から車で5時間はかかる人口7万余りの故郷の駒谷市にUターンし、市役所に就職。
今回の異動で「アテネ村リニューアル推進室」に転勤となった。
アテネ村は、市が建設したテーマパークで、7年前の開業以来赤字続き。
推進室は市長直々の特命チームだったが、やはり"役所"の組織だった。
[採点] ☆☆☆★
[あらすじ]
年に一度の北高鍛錬歩行祭。
朝の8時から翌朝8時まで全校生徒で歩くというこの行事は、夜中に数時間の仮眠を挟んで、前半がクラスごとの団体歩行、後半が自由歩行で母校のゴールを目指す。
3年生はこのイベントの後はひたすら受験勉強に邁進することになるわけで、いわば思い出作りの最後の場。
西脇融は親友の戸田忍とゴールするつもりだ。
[採点] ☆☆☆★
[あらすじ]
デレク・ストレンジはワシントンで私立探偵をしている元警官の黒人。
少年フットボールチームのコーチをボランティアでしていて恋人もいる。
白人で親友のクインも元警官。
家出少女を捜し出す依頼を引き受け、クインにそれを請け負わせる。
少女はお定まりの売春だ。
自分は昔の知り合いから頼まれて、娘のボーイフレンドの身元調査に回る。
[採点] ☆☆☆★
[あらすじ]
中国は藍陵県の県令の12歳の一人息子、趙昭之には徐先生が塾師としてついている。
徐先生は二百歳を超えるすっぽんで、藍陵県のことで知らないことはない。
先生に言われて昭之が目を向けた先は生糸商の富豪、鄭万進。
折りしも万進が太清丹という仙薬を買うところだ。
この薬、毎日1粒を200日間服み続けると不死の身体が得られるという。
[採点] ☆☆☆
[あらすじ]
江戸幕府八代将軍吉宗の時代。
蜜姫は豊後温水藩二万五千石の藩主の娘で、幼いころからやんちゃでいたずら好きの暴れ姫との評判だった。
馬で野駈けに出ていた折、父が銃で狙われる。
賊を追い払った姫は、刺客を放ったのは将軍吉宗とにらみ、隠密となって将軍家と闘うと言って藩を出奔。
母が警護につけてくれたのは、タマという名の忍び猫一匹。
[採点] ☆☆☆★
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