28歳の志川は不動産会社をある事情で辞め、回春マッサージ嬢をデリバリーする店の電話番をしている。
クィーンズマッサージ『ファムファタル』は女王様が各種マッサージをしてくださるというコンセプトのお店。
志川は客からの電話を受け、女王様を割り当てていく。
店には電話番が六人、全員が女性のアルバイト。
志川の一推しは美織女王様。
彼女はなんと五十歳。
その年代のひとが風俗店で働いているのに驚いたが、彼女には手堅く指名が入ったりする。
[寸評]
この世界はスーパーセックスワールドだと気づいたアセクシュアル(無性愛)の女性が精神的に彷徨しながら、行方不明となった風俗嬢を探す。
まずはこういう性向の人がいるんだと勉強になったが、主人公は将来のこととか悩みながら、他人と時にぶつかりながら生きていく。
物語は微かなユーモアのある主人公の独白で語られるが、いろいろな出来事が起こる割に抑揚のない調子で、面白みは今ひとつ。
結局何も起こらなかったような不思議な読後感。
直木賞候補となったが受賞は逃した。
大正期、数え十七のサチは、宗教哲学者・柳宗悦の家に住み込み女中奉公している。
奥様の柳兼子は、日本でも指折りの声楽家だという。
夫妻には男の子が二人あって、上の子は宗理、弟が宗玄で二人とも京都の小学校に転校したばかりだ。
家には、奥様が柳家にお輿入れの際に生家がおつけになった女中のばあやもいる。
ある日、志賀直哉から筍が送られてきた。
小説の神様が筍を届けさせるなんて、ここはとんでもない家だ、まるで御伽噺だとサチは思った。
[寸評]
大正末期から昭和初期における思想家・柳宗悦と「民藝」運動の始まりと拡がり、そして柳家の家族のあれこれを女中のサチの語りで綴っていく苦悩と情熱のドラマ。
夫に献身的に尽くしながらも、声楽家としての自らを前進させていく宗悦の妻・兼子のりんとした姿勢がとても良い。
幸せから一歩引いたような女中サチの未来が一気に開かれるような幕切れに晴れ晴れ。
料理の描写が多いのも特徴で、その豊かさに驚かされた。
また巻末の「参考文献」の多さには圧倒された。
スヴェンはスウェーデン南西部ハルムスタッド市警の警察官。
一九八六年二月末の深夜、彼は警察無線でパルメ首相が撃たれて死亡したことを聞く。
その一時間半後の三月一日未明、警察の交換台に電話が入った。
かけてきたのは男で「車の中で女をレイプした。ティアルプ農場の近くだ。またやるよ。じゃあな。」と言って電話を切った。
スヴェンはひとり農場へ向かった。
農場近くの林道脇に車が停まっており、女性が後部座席で倒れたまま動いていなかった。
[寸評]
北欧ミステリーと言えば寂寥な風景の中で人生の深淵に迫るような語りが特徴だと思うが、本作は典型的な現代北欧ミステリーだ。
“ティアルプの怪物”による連続殺人事件をめぐっての捜査側の33年間にわたる物語。
500ページ超えの長尺だが登場人物は比較的限られており、じっくりと物語に浸ることになる。
暗く地味な話だが、人間の罪について思いをめぐらせられる。
重厚な秀作だと思うが、帯の「十年に一度の傑作。」はあくまで出版社の惹句と割り引いて読みたい。
[導入部]
[採点] ☆☆☆★
[導入部]
[採点] ☆☆☆☆
[導入部]
[採点] ☆☆☆☆
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